二人っきりで、お喋り
「初稿ということは、それが今度の交友会とやらで使われるということか」
「ルークさん、さっき参加しませんって言ってませんでしたか?」
「そうだな。……帰るぞ、エマ」
「パパ、そうだね!」
ルークはエマを引き連れて、停車している電車に乗り込んだ。
すぐに発車する気配はないけれど、今日のところはお別れになる。
「パルトラちゃん、わたくしたちも行きましょう」
セレネが私の腕を引っ張ったので、私の身体が駅のホームから離れてしまった。
すると、動き出す。
ルビーアイ炭鉱行きの電車が。
「あっ……行ってしまいますね」
「パルトラちゃんはこっち。スキル発動、ドラゴンソウル!」
セレネがドラゴンの姿に変身すると、すぐに背中の上に乗れ、という謎の威圧を感じとった。
「セレネさんは、私をこのダンジョンの入り口まで案内したいということですか?」
「吾輩は、貴様と二人っきりでお喋りしたいだけだ」
ドラゴンの顔で私の顔を見つめてくるセレネは、私とお話したいだけだった。
もしかしたら、ダンジョン内の移動時間を考慮してなのかな。
とりあえず、このお誘いには乗っておくか。
「……では、セレネさん。ダンジョンの入り口までお散歩お願いします」
「了解した」
私がセレネの背中に乗り込むと、すぐに飛びはじめた。
「少しあれについて喋ろうと思ってだ。シクスオを始めてから暫くたったある日、吾輩がダンジョンマスターということを自覚した時に遡るのだが」
「セレネさんが、ダンジョンマスターだと自覚した頃ですか?」
「そうだ」
低空飛行で洞窟を突き進んでいくセレネは、私の髪が靡こうとお構いなし。
少しばかり、自身の髪に手を添えておくか。
「吾輩自身が持っているスキルについて、興味が湧いてきたんだ。シクスオを始めた当初は、吾輩自身にはスキルを持っていないと勘違いしていてな、シクスオが面白いかといわれたら、五分五分とよく口にしていた。だが、アクエリアのギルド近辺で、あのプレイヤーに出会ったら世界が変わったように思えたんだ」
「あのプレイヤーさん、とは?」
「それが名前がわからないのだよ。特徴は覚えているのだけど」
「その方の見た目、どんな感じだったのですか?」
「水色のベレー帽に、同色のアイドルドレスと大きなリボン。黄土色のぱっつんヘアに、橙の瞳の美女。それと、白銀のショベル」
「白銀のショベル……?」
シクスオには様々な武器が存在するが、私はまだ、そんな武器を持ったプレイヤーは見たことがない。
「あの武器、吾輩はとても不思議に思ったのだよ。シクスオの武器ガチャを見た感じだと、今まで一度もピックアップされたことのないモノだったからだ」
「ピックアップされたことのない……? 眩しっ!」
私の両目がホワイトホール現象に襲われるも、すぐに元通りとなる。
洞窟を抜け出したかと思えば、黒い草木が生い茂っている広間らしいところに出た。
現在地を敢えて言い換えるのならば、黒き清らかな渓谷の中間地点だ。
この中間地点には、洞窟の穴が三箇所ある。ひとつは出入り口、もう一つは最深部へと続く道。それと、私たちが通ってきた新エリアに続いている。
今回はここから洞窟にまた入って、ダンジョンの出入り口へと向かう。
「それで、そのお方とはどんなことを話されたのですか?」
「それは勿論、吾輩のスキルについてだ。あの日、あの場所で、吾輩は人の姿で戦っていた」
「ふむふむ……」
「その戦いの中で、吾輩の固有スキルの使い方を教わったのだ」
「へぇ……」
一見、普通なことにも思えるが、私は頭の片隅でどこか引っ掛かっていた。
セレネの固有スキルを教えることが出来るくらいの知識と腕前を備えているシクスオプレイヤーなんて、そうそういないと思われるからだ。
私もそのうち、会ってみたいかも。
「ふぅ……もうすぐ出口だ」
セレネが翼を大きく動かすと、飛行速度が徐々にゆったりとなる。
私の視界には洞窟の出口となる光が、見えていた。
ここまでの道のりで、モンスターはちらほらいた気がするけど、形とかよくわからなかった。
ひょっとしたら、植物モンスターとかいたかもしれない。けど、いまから引き返して確かめたい気分には不思議とならなかった。
そんなことを頭の中で感じ取っていると、突如視界が開ける。
大きな建物を取り囲む、入り組んだ街路が遠くの方に見えていた。
私は迷宮神殿オシリスのフィールドに、戻ってきたのである。
「ただいま、私の国!」
私はセレネの背中の上で、無意識に言っていた。
お読みいただき、ありがとうございます!!
三カ国ダンジョンマスター交友会の開催が近づいてきました!
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