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お見合い開始

あとがきに注目いただければ幸いです!

「隣国を救って帰ってきた当日にお見合いとか、レド……お前も災難だな」

「……ああ、正直ウェイに代わってもらいたいくらいだ」

「無茶言うなよ。王都のオレの評判聞いたろ、会った瞬間解散になってもいい相手なら別だけどよ」


 陛下が手配した一流の服飾師によってめかしつけられていた俺を見て、ウェイがため息をついた。


 陛下いわく「テーマは国を代表するに相応しい身なり」とのことだそうだ。いつの間に国を代表していたのかは俺もよく知らない。


「……むぅ、レドくん、私の護衛をするときよりおしゃれしてる」

「護衛におしゃれは要らないだろ」

「そういうことじゃなくてさ……」


 リコは不満そうに頬を膨らませている。


 俺だってお見合いしたいわけじゃないけど、陛下のことを考えたら、お見合いそのものを断るのはできなかった。


 でも、これだけはハッキリと言える。


「リコ」

「……なに?」

「安心してくれ、ちゃんと断ってくるから。俺が仕えるのはリコだけだからな」

「……っ、レドくん……!」


「おーいお二人さん。オレもいるんだけど忘れてない?」


 瞳を潤ませるリコに見送られて、俺はお見合い会場である王城の客間へ足を運ぶ。


 お見合い相手は……まだ来ていないようだ。

 念のため身だしなみをチェックしておくかと、手鏡で自分の姿を確認し──


 ──お見合い相手を待つこと、一時間が経過した。


「……さすがに遅い」


 これはなにかあったんじゃないか?

 そう思って部屋の外に出ようとした瞬間。


「いやぁー、レドさんってばホント話に聞いてたとおりの方なんですね~」


 部屋の天井から、長い黒髪がだらりと垂れ下がっていた。


「うわあああああぁぁぁっ!」

「レドくん大丈夫!?」

「なにがあったんだレド!」


「あ、あれを見てくれ……!」


 駆けつけるのが早すぎるリコとウェイにツッコむ気力もなく、俺は震えた指で天井をさす。

 天井から伸びた黒髪はそのまま落下、音もなく着地し、屈託のない笑みを浮かべた。


「驚かせてすみません、わたしはステラード公国よりやってまいりました、クロエ・ファーミリオンと申します~。そちらのお二方はリコリス・メイヤー殿下と……」

「リコリス殿下に仕える騎士団に勤めております、ウェイ・サークルです。以後お見知りおきを」


 クロエさんが美人だと知ってからか、ウェイは露骨に姿勢を正して白い歯を見せた。


「ではお二方にも参加していただきましょうか~。わたしとレドさんのお見合いに」

「「「…………え?」」」


 ふふっと微笑むクロエさんに、俺たちは疑問符を浮かべたのだった。

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