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次から次へと……

「お前さぁ、面白いスキル持ってんな」

 

 白い外套を羽織った褐色肌の男が、木の上から俺を見下ろしていた。

 

「俺様はカネガスって言うんだ。お前のことは闘技場で知ってる」

 

 カネガスと名乗った男は木から飛び降りると、顔を歪めて口をひらく。

 

「なぁレド。お前、俺様と組んで金を稼ごうぜ」

「断る」

 

 露骨に怪しい男に構っているヒマはない。

 

 さっさとリコのところに戻ろう。

 

「おっと、そんなに冷たい態度でいいのかな?」

「レド様っ!」

 

 聞き馴染みのある声に振り返る。

 

 そこには、光の鎖で拘束された俺の元専属メイド──ミリスがいた。

 

 さらに彼女の横に、なぜかメイクアップの切れたラフィンまで、気まずそうな顔をして立っている。

 

 ついさっき前までリコたちと一緒にいたはずだが、どうしてここに。

 

「……ラフィン、これはどういうことなんだ」


 彼女はなにも答えない。


「俺様はいろいろあって聖王国を出禁にされたからさぁ、あの中だとあまり表立って動けねえんだよ。つーわけで、コイツは俺様のしもべ兼調査員みたいなもんだ」

 

 カネガスがラフィンの肩に腕を回し、舌なめずりをする。

 

 ラフィンは恐怖で震えているように見えた。

 

「あー、別にお前のメイドに危害を加えるつもりはねぇよ。俺様はただ金儲けのために協力してくれればそれで」

 

「【パニッシュメント・コントラクション!】」

 

「ぐおおぉぉっ!」

 

 俺は話を聞き終える前にエルゼのとっておきをぶっ放した。

 

 カネガスだけを拘束することに成功し、ラフィンは目を丸くしている。

 

「チッ! こいつはあの変態団長の……! 【プリズムゲート!】」

 

 カネガスの声に応じて宙空に穴があく。

 

 その穴から光がのぞいたかと思うと……巨大なスライムが落ちてきた。

 

「ラフィンから聞いてるぜ。お前、スライムだけは倒せないんだってな。コイツは俺様が魔王城近辺の瘴気の大森林で捕らえた“エンペラースライム”だ。

 竜の鱗を溶かす酸であの森のワイバーンを何体も食ってた最強のスライム。俺様の【チャーム】で調教するのも随分時間がかかった──」

 

 

「──【ソードスマッシュッ!!】」

 

 

 俺が漆黒の剣を振り抜くと、エンペラースライムとやらは一瞬で両断されていた。

 

 そのまま分裂して戦ってくるのかと思いきや、あっさり光の粒になって消えてしまう。

 

 

『エクストラスキル【毒・瘴気完全無効】を習得しました』

『スキル【アシッドポイズン】を習得しました』


 ーーーーーーーーーー

 皇帝涅(こうていねつ)のゲル × 3

 ーーーーーーーーーー


 エンペラースライムを倒したことで、俺はスキルとアイテムを得る。


 ……ここに来てから聖女の専属騎士に相応しくないスキルばかり得ている気がした。

 なんかこれじゃない感がすごい。


 

「お、おいラフィン! お前の言ってた話と違うぞ!」

 

 カネガスは目を丸くして叫んだ。

 

「で、でも……確かにレド様はスライムを倒せないって」

 

「俺が倒せないのはエンペラースライムじゃない。“スライム”だ。……たぶん」

 

 ソードスマッシュでミリスを拘束していた光の鎖を斬る。

 

 拘束の解けた彼女は、縋るように俺の胸に飛び込んできた。

 

「ごめんなさいレド様! アルヴァン様と一緒にレド様を探している途中で、あの男に捕まってしまいました」

 

 ミリスは俺の腕の中で震えている。

 

 戦闘能力を持たない彼女にとって、あの男は恐怖でしかないだろう。

 

 

 ラフィンを何らかの手段で脅して利用し、ミリスを俺への交渉材料として扱った。

 

 

 こんな悪事を見て見ぬふりをしたら、リコはどう思うのだろうか。

 

 

 俺はミリスから優しく離れて、光の鎖に拘束されたままのカネガスに近づく。

 

「なぁ、この【アシッドポイズン】ってスキル。お前に使ったらどうなるんだろうな」

 

「や、やめろっ!」

 

 手からヤバそうな湯気を放つ黄土色をした水玉を浮かべた。

 

 もちろんこれをぶつけるつもりはない。

 

「ラフィンを解放して二度とこういうことをしないと誓え。それとお前は聖王国の騎士に突き出す。断ったら……わかるよなぁ」

 

 わざと悪そうな顔をつくってみた。

 

 全身黒装束なだけあってサマになったのか、カネガスは勢いよく頭を縦に振っている。

 

 あとはこいつを聖騎士に引き渡してリコの元に戻れば終了。

 

 そう思っていたのだが。

 

 

「──ようやく見つけたよ。白外套」

 

 

 今度は黒い空間から耳の長い……ダークエルフの男が現れた。

 

 どうやらカネガスに用があるらしい。

 

「よくもボクのつくった魔物たちを散々壊してくれたね」

 

「お前は、数々の国を魔物創造(モンスタークリエイト)を使いたった一人で滅ぼしてきた魔王四天王の一人……“創造主のピス”ッ!」

 

 恥ずかしい二つ名付きで呼ばれたピスは、狼狽えるカネガスを見て満足そうに笑う。

 

「解説ありがとう白外套。知ってるよ。お前がボクの魔物を壊して、その素材を売って金を稼いでたこと。これは魔王四天王の一人であるボクに対する冒涜だ!」

 

 ピスは背中を向けて黒い空間、たぶん転移門のようなものを生み出した。

 

「一週間後、ボクは新たな魔物軍をつくってそこの聖王国を攻め落とす。覚悟して」

 

「【ホーリーチェイン!】【フォトンバインド!】」

 

「ぐああああなんだこれはっ! くっ、このフィット感! 外れないッ!」


 俺が光拘束魔法を使うと、ピスは抵抗できず地面に転がった。

 

 ……やってしまった。

 

 魔王の四天王だかなんだか知らないが、物騒なこと言ってたから捕まえちゃったけど、これからどうしよう。

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