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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ36.ページから飛び出せ! ~書籍の未来が変わる可能性~
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36-2.ページという“枠”から飛び出せ! ――進化する書籍の可能性

 前項では、書籍のページという“枠”、これを超越する可能性について述べさせていただきました。

 本項では、“枠”を超越した書籍の行く末について考察を巡らせます。


 ページの“枠”、あるいは画面をどこまでも拡大できたなら? ――というのが前項で提示させていただきました可能性。

 そんなのただの夢物語じゃないの? ――そうお思いの向きがあるかもしれませんが。

 AR(Augment Reality、拡張現実)を応用すれば、そんな夢も実現可能です。現実世界が丸ごとコンテンツ――ひいてはカンヴァスに化けるのです。


 まず、発展する期待があります――平面上でタッチを検知できるなら、空中でもタッチ検知できるんじゃないの? と。

 2次元のGUIをさらに超えた、3Dインターフェイスのヴァーチャル版というわけですね。

 いやいや、タッチ感もないんじゃ入力感が出ないから操作しにくいし――そんな感想をお持ちの方には。

 タッチ感はVR(Virtual Reality、仮想現実)で再現すればどうでしょう。H2L『UnlimitedHand』(※1)なら腕に巻くだけ、軍手のように無粋なVRグローヴというガジェットを使わずとも触感を再現可能です。のみならず、指の動きを検知して入力とすることもできます。まさに一石二鳥というもの。


 これにARが加わったらどうなるか。


 いやいやでっかいHMD(Head Mount Display、ヘッド・マウント・ディスプレイ)かぶりっぱなしは勘弁して――そうお思いのあなたにも。

 コンタクト・レンズ型の網膜投影装置というアイディアは『テーマ11.今日まとうのはどのアヴァター? ~“電脳化”がもたらす容姿の可能性~』でご紹介しましたが。

 これ、夢物語かと思いきや。すでに実用化は射程距離内です。EPGLの『スマート・コンタクトレンズ』(※2)。

 そう、身軽なARはすでに手の届くところまで来ているのです。

 そうなれば、タッチ・ディスプレイを3次元空間へ拡張できるようになります。当人しか見えないようにもできますし、周囲のヒトと共有するのも自由です。

 それどころか、データは2次元に縛られません。3次元データだってお手の物。もちろん動画だって自由自在です。

 「ただのデータじゃねえ、ちょっと……」と眉をひそめた向きには。

 触感さえ再現可能です。

 先ほどご紹介した『UnlimitedHand』が触覚さえも再現してくれます。


 データの精度に応じて拡大縮小も自由自在。何ならサンプルとなる立体の“中へ入ってみる”ことさえ可能です。先にご紹介した『むげんメモ』の考え方ですね。高精度の3次元データをどこまでも拡大表示したらどうでしょう。映画『ミクロの決死圏』(※3)さながら、人体モデルの中を冒険することだって可能です。


 そう、サンプルとなる資料を自由に立体視できるようになるのです。


 でも、3Dスキャン・データを取り込むのって大変じゃない? ――そういう疑問をお持ちかもしれませんが。

 3Dスキャナはすでに市販されています(※4)。一例としてDMMの『3Dスキャナー SENSE』(※5)を挙げましょう。片手で持てるお手軽さもさることながら、お値段も参考価格59800円と良心的、さらには1泊2日1980円でレンタルさえしてくれます。


 いやいやSNSに上げる写真とかの立体視はさすがに無理でしょ? ――そうお思いのそこのあなた。

 AR対応のスマートフォンやタブレットで対象物を、ひいては周囲の現実空間を簡易スキャンできる技術がすでに登場しています。

 具体的にはGoogleのAR技術『Tango』を応用して視界内の立体を簡易3Dスキャンする技術『Oasis』(※6)です。

 対応センサ(カメラ)を身に付けて動き回るだけで、3Dスキャンがかなりの精度で実現するところまで、すでに実用技術は来ているのです。


 これが意味することは何か。


 世界中のSNSやホームペジに上がる写真、これらを使って現実の世界そのものを、しかも限りなくリアルタイムに、3Dデータとして取り込むことが可能になるのです。

 『Google Earth VR』(※7)がリアルタイムで動き出す、と言えばその可能性が伝わるでしょうか。


 それどころか私が『テーマ11.』でご提案したコンタクト・レンズ型網膜投影装置。これは現実世界を一旦取り込んでからAR・VR処理を施します。その過程で『Oasis』のような簡易3Dスキャンは常に行われ続けるのです。


 このデータを世界中の人々からかき集めたなら。


 ここに千里眼が実現します。

 かつて『テーマ2.“ニュータイプ”か!? ――いえ、ただの凡人です。 ~拡張現実にみるヒトの可能性~』では、普及してしまった監視カメラが、あらゆる情景の立体視を可能にすると申し上げたわけですが。

 監視カメラとは言わずとも、もはやスマートフォンやタブレット、果てはコンタクト・レンズ型網膜投影装置で撮りまくられる世界の情景、これがIoTで繋がり、世界の立体地図をリアルタイムで作り出していくのです。


 いやいやそれってVRの話だし――そう多寡をくくってはいませんか?


 3D世界地図から任意の物体を資料として切り出すこと、これはもはや造作もありません。

 それは確かに隙のない3Dデータとまでは行かないにしても。

 撮られる写真データが増えれば増えるほど、3Dスキャン・データの精度は上がります。


 それが資料として続々と集まるというこの事実。


 それどころか、ARを応用すれば視界一杯に資料を展開することも可能になるのです。

 紙面に縛られることなく。

 机の広さにも縛られず。

 空間的制約さえも乗り越えて。

 全視界360°、拡大縮小だって自由自在。


 千里眼で遥か遠くの現物に注釈をメモする――そんな芸当もお手のもの。ヴァーチャル・データなら落書きと謗られることもありません。

 遥かに視点を引いて、地表に巨大なメモを残す――これまたお手のもの。ちょうど地図にメモを書きつける感覚ですね。簡易地図のいい加減さに迷わされることもありません。リアルタイムでヒトやクルマが往来する現物地図を上空から眺めるのだって朝飯前。

 「あ、あのバスが今曲がったとこ! あそこを右折すればいいんだ!」という感覚で地理を理解することも可能です。


 だけど所詮は簡易版データでしょ? ――そうお思いのそこのあなた。

 そういう時こそ、プロが有料で提供してくれる高精細データやテキストの出番です。

 サンプルとしては簡易版データでいいのです。より深く、詳しく知りたくなったなら、それこそプロ、つまり有償版データの出番というわけです。


 かくして書籍はページという“枠”を飛び出し、ARという“体験”をより豊かにする実地教材として進化するという、これは考証なのです。


 さて現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】

※1 http://unlimitedhand.com/

※2 http://iphone-mania.jp/news-141044/

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%81%AE%E6%B1%BA%E6%AD%BB%E5%9C%8F

※4 http://3d-printer-studio.com/3dscaner-compare/

※5 http://www.dmm.com/rental/iroiro/-/detail/=/cid=nr_01861a/

※6 http://www.moguravr.com/oasis-mit/

※7 http://www.moguravr.com/google-earth-vr-for-oculus-rift/





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://book1.adouzi.eu.org/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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