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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ34.最強人型メカを駆動せよ! ~内蔵動力源の可能性~
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34-2.狙いを絞ってみよう! ――発想の転換がもたらす可能性

 前項では、クルマ並みの重量で実現できる動力源について考察を巡らせました。

 本項では、継続行動能力を絞ることにより、最強人型メカにより相応しい動力源を追求してみます。


 バッテリィ駆動では。

 その可能性の一端として、リチウム・イオン・バッテリィ(2次電池)の例を見てみましょう。

 テスラ・モーターズの『テスラ・ロードスター』(※1)は、18650型(ほぼ単3乾電池と同じ大きさ)のリチウム・イオン電池を6831個搭載しているといいます。これで実現する最大トルクは400N・m、最大出力は215KW(292馬力)といいますから、発電装置搭載車よりもパワーを5割~9割ほども稼げていることになります。それでいて車重は1238kg(うち電池の占める重量は実に450kg)ですから、クルマとして2~3割は軽量です。クルマとしての航続距離は378kmということですから、発電機搭載型のクルマと比較すると明らかに劣りますが、電池技術の進歩いかんでは実用範囲と言えるところまで到達できる可能性を秘めているとも言えましょう。


 これが何を意味するかと言えば。

 どこまでも単独で行動する必要は必ずしもないのです。必要に応じて輸送機や輸送車を使い、いざ現場へ到着したなら起動して活躍――そういう運用を想定するなら、最強人型メカそのものの行動時間はそれほど長くなくても構わないのです。そうすれば、『テスラ・ロードスター』のように数百kg単位での軽量化が可能になります。


 バッテリィが重いから、発電機を省いて軽量化してもたかが知れているのでは? ――そういう疑問もごもっとも。


 ただしそれはバッテリィに重金属を用いている、その現状に引きずられているから――そう申し上げれば、可能性も拡がろうというもの。


 キャパシタ電池(※2)。電極表面を帯電させることで電気を蓄え(充電し)ます。日本では“コンデンサ”として馴染みの深い電子部品、あれの大容量版ですね。

 キャパシタの利点は、充放電の速度がとにかく高いことです。欠点は、自然放電が速いことですね。しかしながら、自然放電を遅らせる研究も進められています。

 ただし現在のところ、そのままでは小型化には向いていない(※3)とされています。具体的には、スマートフォン並の容量(約3.7V・2000mAh相当)を実現するには直径51mm、長さ135mmのキャパシタを18本(並列2本×9組)繋ぐことになると試算されていますから、大体455mm×270mm×51mmの空間を占有することになります。このままではお世辞にも空間効率がいいとは表現しかねますね。

 ですが、空間効率の問題は致命傷にはなりません。キャパシタは内蔵する電極の表面積を増やしてやれば、それだけ吸着できるイオンの数――つまり容量を稼ぐことができるからです。

 例えば活性炭。内部に無数の空洞を持つ活性炭は、それに応じた表面積を誇ります。これが意味するところは、キャパシタの容量効率が飛躍的に高まるということですね。この方法論を突き詰めると――、

 原子レヴェルの凹凸を電極に持たせることができれば、キャパシタ電池の容量効率は理論上最高の域まで高められることになります。

 それを実現したのがフロリダ大学ナノ・サイエンス・テクノロジィ・センタのエリック・ヤング准教授率いる研究チーム。

 電極にカーボン・ナノチューブの基本構造であるグラフェン(※4)を用いることで小型化に成功しています。スマートフォン程度の容量ならものの数秒で充電可能といいますから、充電速度はリチウム・イオン電池の1000倍以上にも達しましょうか。しかも充電寿命は3万回以上。リチウム・イオン電池の充電寿命は1000回程度と言われていますから、実に30倍以上という耐久性を誇ります。


 この考え方を応用するなら。

 キャパシタ電池は充電速度もさることながら、放電速度も同程度の潜在能力が期待できます。これが何を意味するかと行って、現存するバッテリィの1000倍以上もの電力を、しかも瞬時のうちに放出可能だということです。これはつまり、『テスラ・ロードスター』を基準とするなら、瞬間最大トルク400000N・m、瞬間最大出力215000KW(292000馬力)を叩き出す潜在能力を秘めているということになります。10万馬力を誇る鉄腕アトムの、実に2.92倍もの馬力を叩き出すことになりますね――もちろん数秒しか保ちませんが。

 ただしこれが意味するのは、恐ろしく広い出力範囲です。

 普段は無駄な力を消費せず、ここぞという瞬間には大出力を叩き付ける――そんな運用が可能になることを意味します。効率優先であればクルマとしての航続距離に換算して(『テスラ・ロードスター』基準で)378km、でありながら瞬間最大出力は29.2万馬力という数値を叩き出します。スタミナ重視の省電力モードで目的地へ辿り着き、そこで今度は鉄腕アトム並みかそれ以上の力を振るうことができるのです。

 充電に要する時間はわずか数秒。必要ならレーザ送電(※5)を駆使すれば、あっという間に補給完了という隙のなさ。あるいは複数のキャパシタ電池パックと取っ替え引っ替えして運用するのもいいでしょう。これなら、救助活動などでは大いに力を発揮することが期待できそうです。


 よって最強人型メカに相応しい動力源は、原子単位の起伏で電荷を蓄えるキャパシタ電池が最も有望であろうという、これは考証なのです。


 さて現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】


※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC

※2 http://gigazine.net/news/20161125-charge-mobile-seconds/

※3 https://woman.mynavi.jp/article/130904-076/

※4 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%B3

※5 http://www.kenkai.jaxa.jp/research/ssps/ssps-lssps.html





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://book1.adouzi.eu.org/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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