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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ15.“電脳化”普及の起爆剤 ~“双方向”の未来と可能性~
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15-1.“双方向”――ARとVR普及の可能性

 感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 巷間を騒がせている拡張現実(AR)と仮想現実(VR)、『VR元年』を謳う2016年。真のブレイクスルーは果たしてどこにあるのか。“電脳化”普及の明日はどっちだ!?

 超人気タイトル『Pokemon GO』(※1)の大ヒットでAR(拡張現実:Augmented Reality)の認知が爆発的に進み、そして『PlayStation VR』『Oculus Rift』『HTC Vive』といったデヴァイスと対応タイトルの発売で『VR(仮想現実:Virtual Reality)元年』を謳う2016年。

 両者の普及はもはや確定事項として。

 果たしてその先、“電脳化”普及のブレイクスルーはどこにあるのか。今回はそこに思いを巡らせる思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 TV、ラジオ、新聞、雑誌――いずれの市場も今この現在、規模を縮小しつつあります。

 小説に何の関係があるかと言って、新聞・雑誌といった活字媒体の勢いを見れば、自ずと関係性が見えてくるというものです。

 さて、マスメディアの立ち位置、その重要度を示す広告費――広告主ほど媒体をシビアに見ている者はいないでしょう――これに目を向けてみますと(※2)。

 2015年の1年間で費やされた広告費は、TVで前年比98.8%、ラジオで同98.6%、新聞で同93.8%、雑誌で同97.7%とあります。いわゆる『マスメディア4大広告費』は全ての項目において前年割れ、早い話がジリ貧です。

 しかしながら、総広告費は前年比100.3%と微増、と言うかほぼ横ばいですね。では、公告の主体としてマスメディアに代わるとされている媒体は何か?


 それはネットです。


 インターネット広告費は、前年比にして実に110.2%。実に2ケタ成長です。

 では、これらマスメディアとネットの最大の違いは果たして何か。

 私が睨みますところ、ネットが“双方向”のメディアであること――そんな推測が頭をもたげてきます。


 ここで言う“双方向”とは――ユーザとその相手(機械でも、その向こうにいるヒトでも構いません)が相互に“予想外”の影響を及ぼし合う、とでも表現するのが妥当でしょうか。

 ここで“予想外”という単語を入れたのは、多分にこういう意味を含んでいます――例えばゲーム世界において、ヒトがゲーム設計者の意図通りの反応を返しただけだったとしたら、それはもはや“双方向”とは言えないからです。送り手も、受け手も、お互い“予想外”の反応が返ってきて“アドリブで対処を考え、実行する”のが“双方向”と言っていいでしょう。“アドリブ”と“実行”が大事という考えですね。


 古くからある井戸端会議であるとか長電話であるとかは地味ながら重要な娯楽であると思われますが。これは言うまでもなく“双方向”の娯楽ですね。


 ヒトがヒトと対面で接触する以外の“双方向”、これのどこがブレイクスルーかと言って、『たまごっち』(※3)の爆発的ブームがその発端といえるのではないでしょうか。

 1996年に発売された『たまごっち』の何が新しかったかといって、“ユーザの都合に関係なく、ゲームが日常生活へ割り込んでくる”という現象でした。

 『たまごっち』はゲームからのアクションに対してユーザがリアクションを起こす、あるいは逆にユーザの行動(育成)によってゲームの結果が変わる、といった要素を全面に押し出していました――しかもリアルタイムで。

 ゲームとユーザ、リアルタイムでの“双方向”な関係性はここに萌芽を迎えたと言っても過言ではないでしょう。


 では他のゲームはと言えば――1997年発売の『Ultima Online』(※4)に端を発したオンライン・ゲーム、特にMMO(Massively Multiplayer Online)ゲームの勢いたるや、もはや怒涛のごとしと言っても過言ではありますまい。

 ゲーム世界内に溢れる登場人物は基本的にユーザ、つまりヒトそのものです。これまた“双方向”のコンテンツと言えますね。


 2004年に産声を上げたFacebook(※5)、2006年にサーヴィスを開始したTwitter(※6)、これらに代表されるSNS(Social Network Service)――その普及っぷりは、やはり語るまでもありますまい。これらは自分の起こしたアクションに対するリアクションを楽しみに続けているようなものです。文字通りヒト同士の交流――すなわち“双方向”の娯楽そのものです。ただしここら辺になってくると、電話の“一対一”と違って“多対多”の要素を多分に帯びてきます。


 映像はさてどうでしょう。2005年設立のYoutube(※7)に、2006年サーヴィス開始のニコニコ動画(※8)、ユーザ参加型動画サイトの快進撃は、改めてここで語るまでのこともないでしょう。

 Youtubeやニコニコ動画もユーザ参加型、再生回数やコメントでリアクションが楽しめる仕組みです。特にニコニコ動画に至っては映像にコメントが重なるというお祭り仕様。これを“双方向”と言わずして、何と表現すればいいでしょう。


 小説は売れていないという話ですが、例外が一つ存在します。Web小説です。川村元気先生の『世界から猫が消えたなら』はLINE発、住野よる先生の『君の膵臓をたべたい』は『小説家になろう』発の小説です(※9)。

 あるいはもっと身近な作品を例に取るなら、川原礫先生の『ソードアート・オンライン』を挙げることができましょう。元はWeb上(作者ホームページ)に掲載された作品が出版されたという武勇伝を持つ作品ですね。

 Web小説は作者と読み手の間にSNS的な相互交流を前提とした媒体です。投稿するや、上手くすると30分とおかずに反応(感想)が返ってきます。それで作品を手直しし、それを投稿したら――この繰り返しが怒涛の勢いで行われるのです。

 まさに“双方向”。その切磋琢磨の効率たるや、即売会しか交流の機会を持たなかった旧来の同人誌小説の比ではありません。現在では融合してしまった感が強いものの、果たして生き残ったのはどちらの形態と言えるでしょうか?


 Niantikが2016年7月に発表した大ヒットARゲーム『Pokemon GO』はというと――これもやはり“双方向”です。ユーザの現実世界の行動(主に移動と現在位置)は、ゲームの行方を左右する一大要素です。


 そういやこのゲームの原型とも言うべき『Ingress』(※11)は、ユーザの位置情報を元にした陣取り合戦とでも言うべきものですね。ただしSNSを始め、ネットを介したユーザの連携が重要になってくる辺り、一筋縄では行かない中毒性があるようですが。少なくとも、管理人がこのタイトルに没頭するあまり、潰れたブログの存在があるのは事実です。


 ここまでを振り返るに、逼塞していたメディアの突破口になっているキィワードは“双方向”ではないか――この推測は、あながち間違った方向を向いているわけでもなさそうです。


 では、“電脳化”普及の足がかりとなるであろう“双方向”とはどんな姿になるのか? ――次項ではそこに考察を巡らせてみましょう。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/Pokemon_GO

※2 http://www.dentsu.co.jp/news/release/2016/0223-008678.html

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%BE%E3%81%94%E3%81%A3%E3%81%A1

※4 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%9E%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3

※5 https://ja.wikipedia.org/wiki/Facebook

※6 https://ja.wikipedia.org/wiki/Twitter

※7 https://ja.wikipedia.org/wiki/YouTube

※8 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%82%B3%E5%8B%95%E7%94%BB

※9 http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1607/15/news019.html

※10 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3

※11 https://ja.wikipedia.org/wiki/Ingress





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://book1.adouzi.eu.org/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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