99話
タスクが多すぎる……
どうぞ。
イベントはあと五日あるけど、三日後には学校が始まる。春休みはそう長くないから、遠い気がしていたけど終わりが迫ってきている。いまひとつ実感がなかった。
「どうしようかなー……」
「どうしたの」
「や、クラスでどうなるのかなって。中学のときと同じかな?」
「まあ、そうなんじゃない?」
友達がいるようないないような、別に一人ぼっちではないけど、いつメンでつるんでどこかに出かけるわけでもない……学年が変わっただけで友達のメンツが変わるような感じだった。
男女どちらに対してもドライだったからか、恋愛経験もない。よくよく考えてみれば、どちらに対してもこれという思いを持ったことがない気がする。潜性女性についてあれこれ調べたときには、性徴顕化よりも前に恋愛があってごたごたが起きた……なんてネタがいくつも転がっていた気がするけど、俺に関しては違うようだった。
「ゲーム友達作ったらいいんじゃない? いくらでもいそうだし」
「うん、それは考えてるけど。ほかの人がね……」
「他の人?」
「ゲームの中で仲良くしてる人、すごい濃いメンツだから」
人気配信者のザイルとローペはふつう寄りだけど、ガタイがいいアーミールックの青年とか、麻袋をかぶったほぼ全裸の股間マンモスとか、相手にもいろいろ着せてくる痴女とか……男女どちらでも「こんな人と友達なの?」と言われそうな、やばい人ばかりだ。ファラさんはかろうじて大丈夫そうだけど、会おうとしたときに変装していると、まず見つけられないだろう。
「学校でゲームやってるーって堂々と言える人って、だいたい濃い人だと思うけど。まーでも、私の妹だからね。こんなにかわいいし、いけるいける!」
「んぅ……そうかなぁ」
ベッドの隣に座って、ほっぺをもにもにされている。こういうスキンシップも、前よりずっと心地よく受け入れられていた。ちょっと身を乗り出して、額をくっつけ合う。
「ふふっ、かわいいぞー。自信持っていい、だいじょうぶ」
「ありがと、お姉ちゃん」
不安はやわらかく溶けていった。




