94話
あかん、なんにも進まん。
どうぞ。
マーケットに併設されているプレイグラウンドは、「ライブラリ・アース」のように耐久度やアイテム損耗の心配がない場所らしい。今まで使ったことはなかったし、使用感は現場で把握するものだと思っていたが……ふつうのプレイヤーはガンガン使いまくっているようだ。
「あ、僕らは「ハウンズ」ってギルド……を設立予定の四人組です。僕がサール、彼がホーディ、あっちがナナで、おとなしい子がシナモン」
『なかなかいい人材を揃えてるみてェだな。このオレのこの姿に、怯えもしねェとは』
かなりの自信があるようで、たたずまいだけでも相手を威圧できる、くらいに考えているようだ。性能は高そうなのだが、そんなに強いのだろうか――そう思っていたところで、急に全身のシルエットが崩れ出した。
ビィユン、ビィユンと装甲がしなりながら変形し、スカートやドレスめいていた装甲が、後ろ向きに広がっていく。トビウオのような、鋭い推進力を感じさせる姿ができあがっていった。
「こんなのなんだね?」
『マイマスター、あんただって姿ァころころ変えてるだろ?』
さも当然のように、ノイスは笑う。
『それより見ろよ、あいつら全員実体武器持ってるぜ!? ここでよかったな』
「貴重だよね。テストにはちょうどいいくらい、強敵だと思う」
「星霊なら少しは……とは思うんですけどね」
「なんでそこ自信ないのよ、誇りなさいよ」
惑星探査用ツールとしてライヴギアは配られるけど、志願者に渡されるのはそれだけで、初期配布アイテムには武器も防具もない。ほとんどのゲームがそうだけど、武器を真剣に作ろうとすると、ものすごい金額が必要だ。実力は未知数だけど、かけている時間は知り合いの強い人全員に勝るとも劣らないくらいだろう。
「遺物はもうちょっと……そうだな、“完全遺物”になればふつうの武器より強そうなんですが。生産する「実体武器」のほうが、普段使いにはよさそうです」
「不完全だと、能力が発揮できないうえに耐久値ざこざこ、ってだけなのよね。ザクロさんはライヴギア使いだけど、作る予定あるの?」
「防具は生産ですよ。PKから素材巻き上げて」
「あら、意外に捕食者なのね? 返す手間考えたら当然だけど」
話が脱線しそうになったところで、長身糸目寡黙と属性盛りまくりのサールさんが、地面をハルバートでこつんと叩いた。
『分かってるねェ、あんちゃん。こういうとき、言葉は要らねェもんだ』
「ごめん、話し込んじゃって」
サールさんが盾持ちの剣士、ナナさんは軽装の斥候、ホーディさんはハルバート使いでシナモンさんは魔法使いのようだった。それぞれ剣に盾、ダガーと爪、ハルバート、杖を持っている。どう動くかはだいたい予想できるが、ノイスがどんなふうに戦力評価をして、どう戦うのかはまったくわからない。
プレイグラウンド全体に水色のフィルターがかかり、準備がすべて終了する。
「始めましょうか」
『ああ。いつでも来てくれ』
結果と呼べそうなものは、数瞬でできあがっていた――
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