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【更新停止中】アクロス・ザ・ナギノクイント  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 みゆきひらひらふるるよる
93/191

93話

 辞職が決まりました。やったぜ……!!


 どうぞ。

 マーケットの端末をいじりながら、考えていた。


 俺がトモガラを倒せなかった原因は、力不足と舐めプだろう。両方が成立するかどうかはともかく、力不足なのに全力を出していないところは、本気でマズかった。


『正直、乗っ取りが成立すりゃアそいつでいいんだがね。ああいう外に持ち出せないモンでもなけりゃ……』

「現地調達もいいんだけど、やっとくべきこともあったよね……」


 ザクロというキャラクターは、スピード型の剣士である――ときには防御タイプのバッファーにもなるが、〈割鉈の型〉と〈柳尾の型〉〈裁刀の型〉の基本は同じだ。となると、メンバーに加えるべきは防御タイプだろう。敵がスピードで上回っているのなら、なおさらだ。


 ノイスを盾役にして、俺がアタッカーをやる。それがソロでの最適解だろう。結論を出してすぐやってきた足音は、先ほども聞いたファラさんのものだった。


「あら、ザクロちゃん。今度は何を探してるのかしら……こんなに早く戻ってきて」

「ノイスを盾役にしようと思ってるんです。機械の部品で、いいのありませんか?」

「ふぅん……」

『ちったぁ鍛えられたが、結局は機械がいちばんいいみてェなんだ』


 さんざん高騰していると言われていたエンジンも、その噂が広まりすぎたせいか買う人が少なくなり、値段が下がっていた。


「昨日は三倍くらいで出てたんだけど、これなら大丈夫ね」

「おー、一万メテラ……」


 かなり大きくて馬力もある「5Gヴルカン」というエンジンが、相場よりはかなり安く手に入った。ライヴギアなら何に組み込んでも使えるはずだが、もともとの用途は人型ロボットを動かすためのものらしい。


「作業機械用の方が出力はあるの。でも、熱量が大きすぎるのよね」

「冷却に手間取るんですね」

「制御装置は、エンジンの出力に比例していいものを積まないといけないのよね。そこで費用がかさむから、両方安く済ませる人が多いの」

「そこで節約してるってことですか」


 冷却材に「ディープサフィール」、それに「ケジンドⅡS」という制御装置を買う。ものすごい性能らしく、ノイスは『極上じゃねェかこりゃあ!』とご機嫌だった。


「主動作は……まあ、ノイスくんに任せましょうか。そこに星霊(アスト)を積むこと自体が、あなたの売りなんだものね」

『分かってるじゃねェか、お姉さま? それで、外装はどうすんだ』


 稼働部を構成する物質は、それなりに幅を持たせてもいいらしい。パワードスーツを作るにしても、鋭さと固さを部位で分けたり、反応装甲や耐熱・耐電圧装甲を付けたりすることがあるらしい。


「そうね……盾役っていっても、何をするのかによるわ。ただ耐えるだけじゃないんでしょう? あなた自身でデータをのぞいてみたらどうかしら」

『風情のねェこと言うなァ、タッチパネルをハックしろだなんて……。ま、やるがね』


 一秒もかからずにハックと閲覧が終わったらしく、ノイスは画面を切り替えた。


『これだな、「スプリングファイバー・シート」。ずいぶんと面白い性能だぜ』

「たしかに、これはすごいね」


 その他もろもろの人型機械のパーツをがちゃがちゃと組み合わせ、大量に買ったシートで全身を覆う。制御装置に入り込んだノイスは、さっそくシートを変形させてその姿を完成させた。


『はははッ、こいつはいいな! あえて下半身を捨てた甲斐があったぜ……浮遊ユニットは少しばかり高かったが、わがまま言っちまってよかったのか?』

「パフォーマンスがめちゃくちゃ上がりそうだったから、いいよ」

『太っ腹だねェ、マイマスター。ところで、どうだい? 性能面は申し分ないと思うんだが、見た目が気味悪いってことはねェかな』

「いや、まあ……いい感じだと思うけど」


 全体的に丸っこくて、下向きに尖った曲線が多く、細い体に多めの装飾を加えているからか、どこか女性的だった。より詳細に言うなら、プラチナの花嫁とでもいった様子だろうか。


「なんだか、ウェディングドレスみたいね」

『そうなのか? 人間の感性は分かんねェな、この合理的な配置を儀礼用に見るか』


 何か考えがあっての配置らしいが、こちらにはよくわからなかった。


「ともかく、完成だね」

「あっ、いたいた!」


 そろそろログアウトしようかと思った矢先に、四人の男女が駆け寄ってきた。


「ザクロさんですよね! 野試合をしてほしくて」

「どこで知ったんですか、私のこと……」

「有名人じゃないですかー! 僕ら、パーティー組んでまして」

「そうそう。対人戦を経験しておきたいけど、あの人はね……」


 ゾードに倒された人が復帰してこないのは、トラウマの残るようなやり方でPKされたからだ、という説を聞いたこともある。ものすごく健全な雰囲気のある四人だから、ゾードに連絡を入れるのも違う気がした。


『ちょうどいいじゃねェかマイマスター、マーケットにも試し切り用のプレイグラウンドがあるだろ?』

「おっ、星霊(アスト)のほうが相手してくれる流れですか?」


 あわあわと何を言えばいいか分からなくなっている少女と、押し黙っている青年は、ほとんど言葉を発していない。活発そうな青年と彼女らしい女性は、話は決まったとばかりにプレイグラウンドの方へと歩いて行った。


『行こうぜマイマスター。少しはいいとこ見せてやるよ』

「やる気だね、ノイス」


 少しあきれながら、俺は観戦することになった。

 いろいろ新しいことを始める準備をしているので、執筆速度が上がらない……私の根本の活動指針である「誰かの居場所を作ること」についても、少しばかり進められたらと思っています。それより先にこれを書かないとですが。

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