89話
書き出しては捨てることを繰り返してしまっています。マズい兆候ですね。設定を悪魔合体してお出しするのもいいかもしれませんが。
どうぞ。
薄桃色の振袖が、ふんわりとしなやかに跳ねた。
深紅の軌跡がゆるやかなアーチを描いて襲いかかり、俺を大きく吹き飛ばす。どうにか木に足をついて跳躍し、続けざまの横薙ぎからは逃れられた。くるりと空中で回って着地し、どうにかダメージを抑える。
「ノイス、データベースを参照したりできる?」
『無理だなァ、スタンドアローンだわ演算能力が落ちてるわ……おまけに、この〈ライブラリ・アース〉、ステラノードとは接続拒否だぜ』
ゆっくりと首ごと顔を動かし、敵はこちらの様子をうかがっていた。
「それって、ここは地上側で作ってるってこと……?」
『ま、そう考えるのが妥当だわな。「ノード」は端末って意味で、あれ自体が衛星なんだろ? じゃあ答えは見えてんじゃねェかよ』
言われてみればその通りだ。わざとらしいほど、地下にはあれこれの設備が整っている。機械が出てくるのは地下で、街の地下には電子的に再現した過去ログへの入り口まである……サーバーがあるとしても、あの衛星だと考える方が不自然だろう。
「おとなしいのですね。多くを奪った凶器とみえますのに」
べたべたと甘ったるい声が、ほんのりと微笑みながら言う。
手の〈割鉈の型〉と手斧を見比べて――も、どっちが有利かは考えるまでもない。それなのに、相手はこれをよく理解しているようだった。あの骨の山が彼女の戦闘経験そのものなのか、それともデータを参照できる能力なのかは不明だ。
「何も考えなくともよいのですよ?」
「っ……!!」
ここならと思ったタイミングでも、耐久値を危険域まで減らされた。打ち合うのは危険なのだが、それ以外に戦える手段がない。手斧の動きは相応に大振りだが、速度はあまりにも凄まじい。読みやすくても対応が難しくて、フェイントや小技を挟まれた瞬間に破綻しそうだった。
『チッ、なんでこんなヤツがいんだよ! それになんだ、〈第五真相〉って!』
「トークンがどうこうじゃないよ、もう……!」
何もかもが分からないまま、剣戟は交わされていた。




