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【更新停止中】アクロス・ザ・ナギノクイント  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 みゆきひらひらふるるよる
76/191

76話

 次話はかなり早く書けるはず……


 どうぞ。

『ようやっと出番かァ! 待ちくたびれたぜマイマスター』

「ごめんね。それじゃ、あのアンテナがどう壊れてるか調べてくれる?」

『んん……? まあ別にいいが、面白い使い方だなァ』


 なんでもハッキングするコンピュータウイルス、という設定の「ノイス」は、志願者(ソルド)のレベルを譲渡することで性能を上げられる。そして、レベルが高ければ高いほど、高度なハッキングができる。


『で、どうだ。25レベルのうち、いくら渡してくれるんだ?』

「一時的なんだよね?」

『終わったら返すぜ。機械はウソをつかない』

「じゃあ20レベルね」


 大笑いするノイスにエネルギーを渡して、パラボラアンテナの様子を調べてもらった。


『どこも壊れてねェなー。今の今まで使ってたんじゃないかってくらいまともだぜェ。動力はぜんぜん足りねェから、すぐ動かすってわけにはいかねェけど』

「やっぱり、発電施設は取り戻さなくてはいけないようですね……」

『壊せなかったってふうには思えねェ、保全に勤しんでる工員がいそうだな』

「きな臭いな、使ってるやつがいるってことか? どう思う」


 ゾードの疑問に、ノイスは『そりゃ便利だからなァ』と笑う。


「何か隠してる?」

『誰からも信頼されてねェやつは誰も騙せねェんだぜ、マイマスター』

「わからないんだね」

『使用者のIDが分かるような施設ではございませんし、アクセス情報もありません』


 ゾードの方のノイスも、かなり高度な情報を追っているようだった。


「えーと……ちょっと気になるんですけど、どうして遺物を探す施設なんてあるんです? いまは要りますけど、これが建った年代って……」

「疑問はまあわからんでもないが、歴史もそこそこ複雑でな。人類の生存圏がここまで小さくなるのにも、わりかし時間がかかってんだ」


 ローペの言葉に、ゾードはかぶりを振った。


「クエストガチ勢から聞いたことをちょっとずつ……にはなるんだが。この星の歴史、どのくらい覚えてる?」

「五つの星が衝突して、調査することになったとか」

「そうだな。けっこうな大惨事のはずなんだが、コロニーのおかげで生存者はそこそこいたらしくてな。志願者(ソルド)がやってる開拓はその時代からあったみてえだ」

「……進み遅すぎませんか?」


 俺も、志願者(ソルド)がやってきたのは『ナギノクイント』のサービス開始後……ほんの一週間くらい前のことだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。


「人数も質も大したことねえから、すぐ蹴散らされたっつうか……そこそこ粘ったが、ある時期を境にいなくなったとかでな。プレイヤー目線だと「引退」ってことなんだろうが、こっちの世界だとどういう扱いなんだか」

「その成果は、どのくらい出たのかな」


 牙を腕組みで支えながら、錫児さんが尋ねた。


「用語として知れ渡っちゃあいるが、個人名としては……ってレベルだ。で、遺物がどういうモンなのかっつう話になるんだがな」

「武器とか防具、でしたよね」

「大昔に使われていた実体装備の破片――だから、そうだな。いま稼働してる機械だの符蛆だのが持ってるやつは、ライヴギア技術と似たようなやつで、パーツの一部みたいなモンらしい」

「あー、道理でドロップアイテムがしょっぼいわけだ」


 ザイルの感想は、ごもっともとしか言いようがなかった。原生生物を倒すと肉や骨が手に入るし、機械や符蛆を倒すとライヴギアの部品が手に入るが、武器や防具が直接落ちることはない。実体のある物資は、すさまじいくらい貴重なのだ。


「実体装備は、もう尋常じゃねえくらい貴重だが……それ以上に、その性能も「魔法の道具」なんて評が残ってるくらい、ものすげぇシロモノだったみてぇだな」

「なーるほどー。別ゲーでいう、アーティファクトとかマジックアイテムとか……そういうものってことですね?」

「そう。だから“何者か”が狙ってるらしい」

『ぼかすなよ、角刈りの』


 調査を終えたノイスが笑う。


「ぼかすも何も、この惑星に何がいるかすらわかってねぇんだぜ。入植者と志願者(ソルド)、なんでそうしてるか分からん機械ども……くらいのモンだろ? お前ら星霊(アスト)はこっち陣営として、ほかに何がいるのかって話だ」

『マイマスター。ここの電源だけで動かせる施設が、内部にありました』


 ゾードの方のノイスが、流れをぶった切って言った。


「おう? 省エネってことは小規模なんだろ、役に立つのか?」

『ブレイブの記録を閲覧できる、読み取り装置です』

「ふぅん……? ザクロくん、ついに機会が来たようだね」

「ええ。これで、ようやく」


 どこにあるのかもわからなかったはずの装置が、この施設に据え付けられている。間違いない朗報のはずなのに、どこか不穏だった。

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