表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新停止中】アクロス・ザ・ナギノクイント  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 みゆきひらひらふるるよる
66/191

66話

 どうぞ。

 買い切り型であるせいか、『だぼパ』には複雑なパラメータが設定されていない。敵の行動ルーティンもどちらかといえば単純であり、対処法は確立されている。そのうえでほかのゲームの常識が通じないところが低評価されているのだが……明確に「これなら問題ない」と言われるほど、攻略に向いたキャラも存在する。


 ネビュローグ、オドパルミール、ジャートハイスと並べていっても、帰還兵からはたったひとつの言葉しか引き出すことはできまい――「ラヴィグナでよくね?」というコメント、それこそがこのゲームのすべてである。


 とにかく面積の多い武器、遠近両用、防御も固く疑似回復も可能。


 ラヴィグナは、このゲームにおけるすべての不満点に対応している。あるいは開発会社がまともであれば、救済用だと思われても不思議ではない。生成AIによって偶然生まれた彼女は、鬼畜ゲーを遊ぶものたちへ救いをもたらす聖女となった。




 時間はすこし遡り、カリナが戦い始める前のこと。


(強い……ッ! やべーな、インチキすぎるぜ!)


 うわごとのように繰り返されてきた言葉の真実を、少年「ライブル」は知ることになった。どのように強いのか、なぜ勝てないのか、どうすれば対応できるようになるのか。知っていようがいまいが、ラヴィグナが最強であることは間違いない。


 新緑のキラメキナイト「ジャートハイス」は、ラヴィグナに並ぶ破格の性能を持つ。ほとんどの分子に入り込んで侵食し、雪だるま式に膨れ上がる鉱物「ベタスカイト」の力を宿す彼は、歩けば歩くほど大きな兵器を召喚できるようになる。


(砲台が、もう……!!)


 二丁拳銃とビーム砲台を武器に、彼は入り組んだ荒野を自分のフィールドに変えていったつもりだった。しかし、ジャートハイスの侵食能力にも制限はある……彼は、やりすぎたのだ。


(同じものを二回変形させられない、のは知ってた! でも、ほぼノーコストで砲台ぶっ壊せるってウソだろ!?)


 砲台を増やせば増やすほど、制圧できる面積は広くなる。砲台同士での反射や、合体によるパワーアップも見越して、ライブルはどんどん砲台を作っていった。本体の身軽さもあって、かなりの速さで戦況は傾いていたはずだった。


「ふふ。『だぼパ』がいくらクソゲーでも、遊ぶ人が大勢いたよね。どうしてかわかる?」

「え、有名だからじゃあ……?」

「私は配信者だから、それもあるけど」


 またひとつ、轟音を立てて砲台が崩れ落ちた。


「ちゃんと遊べるから、だよ」


 漆黒が舞う。


 重々しさよりもかわいらしさが勝つようになったラヴィグナは、そして巨剣を手にした。


「くっ!」

「銃じゃ私は倒せないよ。ね?」


 ほとんどフルオートにも思えるほどの速度で吐き出される弾丸は、しかし剣の腹ですべて止められていた。これこそが「面積の広い武器を持ったキャラが強い」というセオリーの証左である。クソ調整によって、武器へのダメージは本体とまったく関係がない……データの流用で、そのとんでもない仕様は格闘ゲームにも流れ着いていた。


 どれほど打ち合おうが武器は破壊不能、かつ体へのダメージはいっさいない。RPGというていで許されていた仕様は、格ゲーではとうてい許されるものではなかった。


「じゃあ私、友達待ってるから」

「どわーっ!?」


 砲台ごと叩き切られたライブルは、一瞬で退場した。

 楽しんでいただけましたら、いいね・ポイント評価、感想などもらえますとモチベーションが上がります。ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ