186話
どうぞ。
サイズ合わせという名目で、服をいったん全部脱いで、インナーを身につける。部屋の中にいても、おっぱいを放り出しているとけっこう恥ずかしい。鏡で見た自分がものすごく変な格好をしていて、違和感が大きすぎた。
「なんか、すっごい変な柄だね」
「白い競泳水着って、濡れるとどうしても透けるんだよねー。だから、透けるところがどう透けるか計算したデザインなの」
角度がすごい細いショーツのような形で、白い水着の下に着るのに濃いめの灰色とネイビー……かなり違和感があったけど、俺が知っていたものとは逆の発想で作られたものらしい。
「まー、平安時代も透けを計算に入れて「かさね」とかってやってたらしいしさー。千年くらい経って、発想が追い付いたんだね」
「流行は回帰するって、こういうことなのかな……」
ちょっときつめの水着を上に引っ張り上げて、肩にひもを引っかける。胸の位置が難しくて、むにふにと押し込むことになった。
「んー……? やっぱりきつくない?」
「だいじょーぶ、水着って水に濡れたらわりと伸びるから。サイズはちゃんと合ってるね、問題なさそう」
「お姉ちゃんもこんな感じだったの?」
「うん。女子って高校からあと、ほぼ成長しないから。これでいけるよ」
性潜性児に当てはまるかどうかは知らないが、女子はそこまで急成長しない、らしい。というより、成長期や背が伸びる速度自体は男子より早いものの、止まるのも早いようだった。成長期に激しく運動したりしっかり寝たりでより成長するけれど、そうでないならそれほど変わりはしない……それなりに分かりやすい説明が、すらすらと流れ出てくる。
「んーと、あ、あった。今も入るよ、着よっか?」
「着る気まんまんだね……」
服の肩紐をすでに横に落としているから、脱ぐ気しかない。そのまま脱いで、パンツだけは穿いたまま、姿見の前でぎゅぎゅっと水着を押し上げている。
「んむむ……、む。ちょっとおまたがキツいなー」
「これってどうしてるの?」
「ん? とくに方法ないよー、サイズおっきくするくらいかな」
「そういうものなんだ……」
ゲームをやっていて、レオタードとかふんどしで感じていたお尻あたりの食い込みは、現実のお肉余りがより強く感じられた。身長は五センチも変わらない姉と比べて、スリーサイズもそこまで変わらないみたいだから、水着のサイズはこれで合っているはずだ。着こなし具合がちょっと負けてるな、と思いつつ、姿見の前で白い競泳水着がふたり並ぶ。何やってるんだろう感があるけど、これもこれで面白かった。
『ごはんよー』
「あ、やば。時間かかりすぎた」
「どうせだし、写真とか撮らない?」
「や、私はいいよ。明らかお姉ちゃんの趣味……」
ものすごくやりたそうな顔をしている。ピュリィとはまた違う感じだけど、姉もまたカワイイが大好きで、他の人にも着せたがる――高校生になるまで妹にはやれなかったぶん、かなりの暴走気味なのだろう。
「ん、やっぱり撮る。お母さん呼ぶ?」
「まずは自撮り風で。いやさー、学校行事の思い出とかって写真残るけどさ、よく考えたら水着の写真残ってなくて。もったいない! って思っちゃったんだよねー」
来たら来たときだよ、とへんな背徳感を楽しんでいるような笑顔で、姉は俺と並んで、端末の内向きカメラでパシャパシャと写真を撮っていく。
「二人ともー? あ、……ちょっとはしゃぎすぎよ、エナ」
「ごめんね、お母さん。ちょっと写真撮って!!」
「もう、しょうがないんだから。お父さんにも見てもらう?」
「んぇっ」
並んでピースした写真は、父さんには「エナ……」と渋い顔をされるだけで終わってしまった。
「ってことがあってね?」
「かりなんのお姉ちゃんも大概ぶっ飛んでるよね……」
腰にタオルを巻いてからスカートとパンツを脱いで、インナーを穿いたあと水着を足に通す。腰くらいまで上げてからタオルを取って、水着が腰あたりでぺろっとしている状態のままブラを取った。着替えをてきとうにぐいっと巻いて水着を胸まで上げ、腕を肩紐に通してからちょっとこぼれ気味の胸を調節する。
「よし!」
「なるほど、お姉ちゃんが予習させてくれたってことだったんだ」
「うん、そう。案外さ、順番間違えたらインナーの前に水着通したり、おっぱい放り出したまんま着替えたりしそうじゃない?」
「かりなんならやりそうだもんね。お姉ちゃんグッジョブだ……」
上に体操服を着て、移動の準備ができた。
「さ、行こ」
「おっけー」
屋外のプールに行くために、俺たちは玄関まで降りた。
生家の近くに小学校あったな……と思い出して、もう水泳シーズン終わっちゃうんじゃね? と思ったらわりと早く書けた。着替えの手順はこれで合ってるか知らない、構造的にこれが最適だと思うんですが。




