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182話

 新作が進まないのでこっちを書いたら一話分仕上がりました()。『クイド』のプロローグもそろそろ出せる段階になりそう。


 どうぞ。

 ゾードは、久しぶりのコーラの炭酸に顔をしかめつつ、対策を洗い直していた。


 マーケット近くのフリースペースでの飲食は、飲み物だけに留めるようにしている……彼は、VR空間やメタバースで食事を摂ったあとの、食べたとも食べていないとも取れる絶妙な感覚が苦手だった。やっぱ炭酸やめとっか、と無理やり飲み干して少しむせたあと、ぐしゃりと握り潰して耐久力をゼロにした紙コップを消滅させる。


(んー、そうだな。刀はそこまで怖くねぇ、リーチも大したことないからな。ムチは妙に優遇されてっから可能性はあるが……ちと遅い、こっちにもビームがある。〈クイックチェンジ〉を使われたらヤバいか……? 完成前の「レクスバイン」は、そんなに器用じゃあないからな)


 ゾードの新たな力「REX-VINE」は、使うまでにすこし時間がかかる。対人戦は初動が何より大事だと考えている彼は、その力をそこまで有用だと考えていなかった。じっさい、開幕バインドと大ダメージの組み合わせがあるゲームは、対人環境がそれ一辺倒になりがちだ。より速く攻撃をぶつければ、威力はどうあれ勝利につながることが多い。


 しかし、楽しそうにいくつもの力と姿を使いこなすザクロを見て、少しずつ考えが変わりつつある。戦いの強さには、モチベーションも絡んでいる……必死になりすぎたり、いやいやながら無理にやったりすると、勝率は大きく下がる。大きなデメリットを負っても極大火力を求めるものがいるように、「好き」を押し通すために細部まで考え抜く根性も芽生える。


(一番はあれだ、琵琶だな。奏楽属性のライヴギアはたいがいイカレてやがる。石のオカリナは範囲に即死、骨の角笛も破壊音波出してたか……結界と斬撃波だったな。あの貝はどう転んでもサブウェポンだが――新しいやつか。なんだ)


 武器型、召喚型、装甲型、融合型。四つに大別されるうちのどれに当たるのかは、いまひとつ掴めない。新たな力さえねじ伏せてみせよう、と真正面から言い切るほどの自信は、いったいどのような発想から出たものなのか。


「相手をぶっ殺すには、先に殺すか、死なねぇかだよなぁ」


 完全な防御手段、あるいは複数回の蘇生手段。ゲームバランスとしてはいい加減もいいところだが、回数制限付きの蘇生あるいは無敵化はあり得る。


(紙の組み合わせは、一枚絵のストーリーにコンセプトアート、キャンバスと絵の具……だったな。「何度死んでも蘇るバケモノ」の物語なんて、あったっけか)


 不死あるいは蘇生の物語は存在するが、幾度も死を超えるものの伝説は、パッと思い浮かばなかった。そもそもの話、何度もリスポーンして戦うようなボスモンスターなど、『ナギノクイント』には存在しない。必要ないものが実装されるとも思えないうえに、ザクロ自身のスタイルにもそぐわない。何より、紙のライヴギアに使われるのは和あるいは東洋風のものばかりである。


(すると、相手が絶対死ぬ力か? しつこい幽霊の話はいくらでもあるから……実質無制限の追尾。これならあるか。三分間の追尾を十発撃てるだとかなら、そりゃ死ぬよなあ。しかし、それだと新しいやつも灰色か白か、そこまで面白くねぇな)


 面白さという概念がいつの間にか流れ込んでいることに、ゾードは笑った。


「モゼット……今になって思い出しちまったよ」



――好きな人と同じ考えになれたら、幸せじゃない?

――お前が俺と、か?



 言葉だけはかわいいのになあ、と口の端がつり上がる。それは周りにとって、昔を懐かしむ微笑みではなく、狂気の発露としか見えなかったに違いない。


「ゾードさん!」

「おう。その様子だと、勝ったか」


 フィルム=衣装は損傷しないため、どれだけ傷ついても見た目には分からない。わずかな動きの鈍り具合と、それに勝る達成感。待ちすぎてエンジンが冷えたゾードと戦うには、ちょうどいい具合に思えた。


「なあ。笑わねぇで聞いてほしいんだが、いいか?」

「なんでしょう」


 いつもの着流しの少女が、小首をかしげる。


「お前をどうやってぶった切るか考えてると、楽しくてしょうがねぇんだ。顔が笑っちまって、元に戻らん。これがいわゆる恋ってやつなのか?」

「うーん。いつもと同じだと思いますよ」


 そうかぁ、と止まらない笑いを止めもせずに、ゾードは立ち上がった。


「楽しませてくれよ。お祭りは準備が楽しい、なんて言ってるやつぁけっこう多いが、俺は本番もガッツリ楽しむタイプなんだ」

「ふふっ。退屈させませんよ」


 腰の二本差しをとんと叩いて、ザクロは微笑む。


「ちゃんとこの手で、斬りますからね!」

 昨日は時間がなかったので更新後にチェックしたんですが、どうやらSF/VRゲーム部門で百位以内に入っていたみたいです。えっうん、そうなんだ……? 本命は次回作だったんで、嬉しいといえば嬉しいんだけどその……えー、困惑が勝っていてコメントに困る。喜んでいい、のか……?? ただし日間かつ70後半~90ギリギリ、現在は外れてるようで。ごめん、普段ランキング見ないからランキングの読み方わからん(無能)


 まあ、あまり気にせずに普段通り活動していきます。研究解剖も投稿予定だし。

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