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181話

 作品がランクインしました……何に!? 見てるひまないから!!(6:53)


 どうぞ。

 ワイヤーに着地した分身が、イカに手裏剣を投げつける。すぐさま跳躍して飛んでくる炎を避け、壁に向かって跳んだ。べん、と張り巡らした結界を縫うように、分身たちは攻撃を繰り返す。


『考えたな。結界強度もすさまじい……コアレベルの配分を、その楽器に割り振ったか』

「察しいいですね。私たちの創造者? だからですか」

『くく、なに。私も君と変わりはない。いくつか機械のブレイブを読んだあとならば、かれらを動かすものが何であるかを知っているはずだ』

「あなたも、――」


 オレンジ色の炎が寄り集まって赤くなり、さらに蒼くなって、ほとんど白にまで変わったところで浮遊する巨人に変わった。そして、ワイヤーがギリギリと噛み合わさったかと思うと、逆さ吊りのクラゲのような女が構成される。


『もっと出すといい。全力になるまで待とう』

「ありがとうございます」


 すぐに〈音魚編みをどり〉を使って、結界を編んだ赤紫の魚を作る。あくまで光をモチーフとした金属質に対する、禍々しい赤や黒をメインにした紙束や布。さらにバフを重ねていくが、あちらもさまざまな光がいくつも点灯していく。〈秘奥珠貝〉も出したが、中間に敷いた符の種類は変えてある。〈紫沿誘灯〉は重力光線だが、ある程度以上のパワーがあると、効果が出ても耐えられてしまう――


 ならばと選んだのは〈翠風螺貫〉、「十字の形に面を組み合わせる印を結ぶ」という特殊な動作で発動できる緑属性の魔法ドリルだ。消費MPはすさまじく多いが、それもそのはず、単にドリルを飛ばす魔法ではなくシステムを作る、フィールド系の魔法である。味方が同じ動作をすれば、ランダムな敵に向けてドリルが飛ぶ。


『ほう? ここまで消費の多いものばかりを使っていると、依り代が消えてしまうのではないかな』

「全力ですよ? それで終わったら、悲しいじゃないですか」


 十字の形に面を組み合わせる……首から提げた琵琶をいったん離して、交差させた手のひらを鳴らす。同じように、分身は結界テープに腕や脚をぶつけて交差させる。いくつものドリルが殺到し、クラゲ女の手のひらが損傷していく。


 ゴリゴリ減っていくMPは、しかし分身たちが攻撃するたびに回復していく。かなり安く買えた「順風の足輪」、緑属性の通常攻撃を行うと味方のMPを回復するというアイテム……武器の属性こそ縛られるものの、たったの四千メテラで三つも買えたのが信じられないほどの逸品だ。


『そら恐ろしいほど、高めたものだ。もう見せられるものはほとんどないな……』

「このまま勝っちゃいますよ」


 くくく、とイカは笑う。


『喜ばしいことだ。これならば、人は勝利を収められる』


 ゴワッ!! と噴き上がった炎を〈阿古屋の封呪(ほうじゅ)〉と〈月食み法詞(ぼうし)〉で防ぐ。もうひとつ取り出した〈秘奥珠貝〉は、〈十留涼矢〉をいくつも撃ち出して、炎の巨人を弱らせていく。赤紫の魚は結界斬撃を吐き、敵の攻撃を止めながら、自らの攻撃を押し通していった。


「まだ教えてくれないんですか?」

『きみはもう「アクロス・プログラム」の失敗を知っている。マーレスについても。だからこそ、私が語れることはそう多くない』


 手裏剣をパスするニンジャたちは、分身らしくあくまで無表情だ。星霊(アスト)も出していないいま、イカの独白を聞いているのは俺一人だった。


『並行宇宙のゲートを開くとき、本来ならば、惑星規模の巨大質量が通過できる大きさの穴など……開けられるはずがなかった。プロジェクトに参加していた私も、ゲートを通過できる質量がたかだか一万トンと聞いて、がっかりしたものだ』

「一万って、じゅうぶん多いんじゃ?」

『宇宙ステーションは約四百トンだが、定期的な物資の補給を前提にしている。はじめから豪華客船サイズを用意していた我々は、十分の一以下に落とし込むことなどできなかった。不要なものなど、ひとつもなかったからだ』

「じゃあ、なんで……」


 ふいに、壁にホロウィンドウが表示された。文字情報のほとんどが黒塗りで、添付された画像も不鮮明かつひどくブレている。


『■■■……別世界からやってきたあれらが、“補給”を名目にして協力を申し出てきた。ゲートの研究は飛躍的に進み、異様なほど効率的に、すさまじく広いゲートを開くことができた』


 何なのかは分からない。けれど、おそらく武器を振るう人間……隆々とした筋肉を持つ巨漢ではなく、ほっそりとして装飾の多い衣服を身にまとった少女のような。


 もはや攻撃を避けようともせず、自らの死で言葉が止まることを容認しているとさえ思えるイカは、そして続けた。


『いつか君たちが“青くない地球”にたどり着いたとき……あれらは、“本当の地球”に到達する。くれぐれも、彼が泣かないように――いや、もう泣かせているんだったな』


 べん、と地下空間に響いた音が、三日月の紅弦を走らせる。真一文字に断たれた深秘は、その正体を告げぬままにガラガラと崩れ落ちる。


『あれらは、君たちのものでない言葉を使う。気を付けることだ』

 要するに:ごめんガチでやらかした


 ライブラリ・アースは偽物ではない、物語の舞台もとうぜん本物。でも「本当の地球」は存在しない。イカがウソをついているわけでもない。

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