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177話

 どうぞ。

 ボスモンスターから低確率でドロップする「ブレイブ」……魂というか記憶というか、そういうものの入手機会を増やそうとしたのか、ボスチャレンジが実装された。ところが、難易度がぶっ壊れていて、パーティー前提のうえに奇数回数挑戦、そのうえに最強の縛りがついていた。


「今回ほんっとにヤバいね。ちゃんと探索してないと前提から外れちゃうよ」

「ライヴギアを五セット持ってるだけでも珍しいよなぁ。ザクロさんどうだった?」

「七体チャレンジは私も無理だよ、七つもないもん」

「実体武器でもいいらしいがな……まあ、それ一本で一体倒せんのかって話になっちまうが」


 開始地点であるヘスタの、マーケットに併設された休憩スペースで、ザイル&ローペ兄妹とゾード、それに俺で集まって話していた。このスペースはたくさんの人が通っていくから、情報を流したり交換したりするにはちょうどいいらしい。が、ゾードが普段からけっこうやらかしているせいか、こっちに近寄ろうという人は少なかった。


「ゾードさん、何人くらいやったんですか」

「お預け食らわせてる本人が言うかァ? ボスラッシュ粉砕するヤツ、さっさと見せてくれりゃあなあ」

「また高度ないちゃつきを……どう思う、お兄ちゃん」

「俺たちに理解できる領域じゃないんだよなぁ……PKもあれで、意外とフレンド登録して鍛錬相手にしてたりするんじゃなかったっけ」


 あんまり詳しくはわからないが、対人戦はギスギスしているところと、スポーツ感覚で楽しんでいるところの二極化を起こしているらしい、と聞いていた。VRMMOでの辻斬りは嫌われる方だけど、どこのゲームでも対人戦に名を連ねる猛者はいる、らしい。


「紙の特性……本体が増える感じのライヴギア、もうちょっとで完璧になりそうで。まだ動きを洗練できそうなんです」

「ま、楽しませてくれんならなんでもいいけどよ。まあそうだな、機械はロマン武器が多くてなあ……」


 パイルバンカーも作れたそうだけど、激突と発射のタイミングを完全に合わせるのは、想像以上に難しいようだった。VRゲーム黎明期から言われている「二重加速問題」、パンチしながら杭を発射して、両方の加速が最大威力に達する瞬間に当てられるかどうか――野良の狂人でもなければ成功させられなかったという、パイルバンカーの実用性を問う課題だった。


「お前はあれ、「二重加速問題」はどうなんだ?」

「お父さんも百パーセントは無理だったって言ってましたよ。結局、アームブレードとかジャマダハルの方が強かったみたいだし」

「そうか、あの人でも無理なのか……」

「二人で練習とかは――」


 ゾードが急に顔を上げて「おう!」とご機嫌なあいさつをした。


「ん? 褐色に灰色の髪で和装、この子がザクロさんか?」

「そうだぜ、俺にお預け食らわせてるやつだ」

「ほう。確かにこりゃすごい、隣の子らも動きがいいな」

「おっとぉ、慧眼」


 ローペがドヤ顔でふんすと鼻を鳴らす横で、やってきた人物を観察する。


 キャラクリエイトにはなかったから、自前で調節したのであろう……太陽を模したような謎のひげがまず目についた。頭の方は月をかたどったようなちょんまげで、すでに要素が濃すぎてくらくらしてくる。色がちゃんとはちみつ色なのが、さらにシュールだ。


「どうも、トシツキだ。きみも刀を使うんだって?」

「はい。ライヴギアと実体武器の両方を」


 初期装備の和装、「イースタル・ローニン」の男性版を着こなしている。いわゆる「剣客」という言葉が……ひげとちょんまげ以外は完璧に当てはまりそうな、すさまじい威圧感を放っている。


「ゾードのやつ、おれをおやつくらいにしか扱ってくれなくってね。メインディッシュのお味、おれにも見せてくれないか? 前菜くらいにはなりたいだろう」

「いいですね。ライヴギアも星霊(アスト)も見えませんけど……」

「おれのこだわりだよ、戦いに入ってから使う得物を決めるんだ」

「なるほど……? ちょうどスペースがあるここに来たのは」


 親指だけで招くしぐさは、初めて見たものではないけど、挑戦あるいは挑発としてじゅうぶんだった。


「ゾードさん、見ます?」

「ああ。こいつも二十人くらいはまとめて斬ってるから、用心しとけよ」


 にこりと笑う剣客に続いて、俺もお試しスペースに向かった。

 ちょっと『ファンタジーライフⅰ』やってました(未クリア)。一長一短かな。仲間が有能だからボス戦がかなりやりやすいのと、ドロップ品がめっさ強くてロマンあるのは間違いなくいいところ。でもキーコンフィグとか知らないキャラを当然のように出すのとかはその……うん。まあいいや、楽しもう。

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