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176話

 どうぞ。

 むちゃくちゃ頑張ることもなく、まったく意識しなかったわけでもない中間テストの点数は、五十点から七十点といったところだった。いちばん高いのが八十四点で、そこそこ以上にちゃんとしている、とは思う。


「かりなん、ゲームばっかしてるわけじゃないんだ……」

「や、ゲームばっかりしてるけど。勉強もしてるよ」

「ヅノくん、なんでそんな顔してるの」

「……二人とも、勉強できる方なんだなぁって思ってさ」


 一か月ちょっとですっかりあだ名が定着したヅノくんは、ゲーム的に言えば、部活特化な人らしかった。ゲームばかりやっているせいか、人の性能には配分があるなんて考えを持ってしまっている。父さんも言っているから、けっこう正しいみたいだけど、人はぜんぜんセオリーに当てはまらないものだ。


「父さんもお姉ちゃんも勉強できるし、教え上手だからかなぁ。頭いい人のおこぼれにあずかってるだけ、みたいな」

「いいなあ、塾とか行っとくべきだったのかな」


 俺が必死になるのはゲーム関連だけだ、なんて……口に出したらダメだよね、とは思いつつ、内心ではそんなことを考えていた。


『キラナイ』をストッピングパワー弱めのキャラで攻略するときは血眼だったし、最近でも「ライヴギアをひとつずつしか使えないボスラッシュ」なんてものを聞かされて、練習に練習を重ねている。


「でもほら、本いっぱい読んでるし、だいじょうぶでしょ?」

「うっ……それ言われると弱いよ」

「ヅノくんが読んでる本って、勉強の本じゃなくない?」

「うぐぉう」


 中学校のころからずっと、彼の印象は「読書家」のひとことだ。そのせいか、先輩に読んでもらっても対等に話せるレベルにいるし、俺がてきとうに詠んだ短歌の講評も、すらすらやってくれる。勉強ができなくてもいいんじゃないかな、なんて思っているのだが、彼の望みは違うところにあるようだった。


 求めているものと手にしているものが違うと、やっぱり苦しいのかもしれない。俺にはなかった悩みだけど、高校になってからできた二人の友達は、そういう何かがあるようだった。


「トキノは?」

「問題なし、だよ」


 高校生にもなると、何を目指していて、どんな成果を修めるとその未来にどのくらい近付いたか分かる、なんて……アスリートみたいに着実に、未来を見据えている人もいる。トキノもそういうタイプかなと思ったけど、どこか芯を感じない。


 ずっと、トキノだけがそうだったような――なんだか空疎というか、何かを探しているけど見つかっていないような、ちょっとずつ見つけつつあるような感じがする。


「カリナはなんか、あんまり集中できてなかったみたいだけど……。なんかあった?」

「ん、ゲームのこと。だいじょうぶだよ」


 ようやく使えるようになったものと、いまだ使えそうにないもの。


 帰ったらすぐまた練習しようと、俺の脳はいつにも増してゲーム一色になっていた。

 noteの方で初めて投げ銭をいただいてしまいました。マジか……こんな大金もらっていいのか? 活動方針はいっさい変えないつもりなんで、頑張っていきましょう。『ファンタジーライフⅰ』はかなり好評みたいなんで、ガッツリ遊ばなくっては……と思ったらあっち更新忘れとったわ(急ぎ足)

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