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175話

 どうぞ。

 ローファーの足音が耳に心地よく、反響するものもない道に抜けていく。芽吹き始めの彩りも抜けてきたフレッシュな木々に、だんだん見慣れてきた街並み。たまに買い食いしている人がいる客入りのいいパン屋さんに、うっそうとした森のある神社。いつも通る道なら目をつむっていても歩けるというけれど、まだまだ発見が多い。


 学校が見え始める交差点、横からいつもの大きなシルエットが現れる。


「おはよ、カリナ」

「おはよう、トキノ」


 身長差は三十センチ近くあるけど、声が聞こえるようにと少し距離を取っているおかげで、そこまで問題はなかった。前から「身長差ありすぎて声聞こえないんだけど」と言われていたようで、対策済みのようだ。「もっと近くてよくない?」と言ったときに、そういうことを言われた。


「そういえばカリナって、電車で来てるんだよね? ほかに地元の友達来てないの?」

「ヅノくんくらいかなー……それにほら、変わりすぎたし」

「それもそっか」

「もともと友達少なかったし?」


 そっちか、とあきれ顔をされてしまった。


「トキノは?」

「すぐ切れるつながりなんて、あってもしょうがないかなーって」

「ドライだね……」

「ティッシュ一枚、一週間かけて使ったりとかしないから」


 女子の方が友達関係を大事にしそうなのに、トキノは冷酷とさえ思えるような言い方をしていた。今はもう自分が女子なのに、というかもともと女子のはずなのに、「女って怖いなぁ」という感想が漏れそうになっている。


「前の友達ってどんな感じだったの?」

「男子だったときの? ……いっしょに遊びに行ったこととか、家に行ったこととか、考えてみればないけど。たまにゲームのこと話すくらい」

「カリナって思ったより、引きこもりとかそっち系だよね……」

「お父さんからしてそうだし。私、お父さんのほうに似てるし?」


 小学生のときは、クラスメイトが仲間だったくらいで、特定の誰かとべったりすることはなかった。中学生のころもそんなに変わらなくて、男女どちらのグループともそれなりに話せていた。


「特定の友達っていなかったんだよね。ぼっちかもしれない……」

「友達と仲間の違いとか、私にもそんなにわかんないけどね」


 部活仲間とか、とトキノは言い切る。


「なんか、何もしなくてもいっしょにいられて、それが別の考えになんないようなさー。そういうのが友達かなって、なんか思った」

「けっこう重いんだね、トキノ」

「大きいし?」

「物理の方もかぁ……」


 だぼパこと『キラナイ』をやったときちょっと調べた特撮もののスペックシートには、身長が二メートルで体重が百キロ、とかいうとんでもない数値が書かれていた覚えがある。トキノはだいぶ大きいから、俺よりはかなり体重があるだろう。ちゃんと骨格が大きいから、パワーもありそうだ。


「なに、何キロとか考えてる?」

「や、別に。そんなに人の体重気にするの?」

「……しないかな」

「やっぱりか」


 そこまで食べる方でもないし、運動量がないからお腹も空かない。父さんと同じく、どちらかというと痩せていくタイプの人間だ。けっこう不健康になりやすいのも分かっているから、食事はぜったいに家族と摂ることを心掛けている。


「まー、さ……こういうのでいいなって思えてるし?」

「そうだよね。こういうのがいい」


 別にお互いの顔をまじまじと見ながら話しているわけでもないのに、表情が分かった。しぜんに込み上げてくる微笑みを共有しているのが、とても嬉しい。こういうのが「友情」なのかもしれない。


「あ、二人とも。おはよう」

「おはよ、ヅノくん」

「はよー。今日は先輩たちいないの?」

「ずいぶんべったりだったからさ、お邪魔かなぁなんて。悪夢見たからぎゅってするね、なんてベッタベタのやつ、初めて見たよ……」


 全員の顔がシロップ漬けみたいにへんな形で固まったところで、仲良く校門をくぐった。

 なんかnoteに「新人賞で落ちまくった、納得できん」だかいう記事が挙がっていました。ちょっと読んでみたんですが、まあうn……論外。解剖させてくれっておねだりしてみたら消極的にどちらとも取れない回答が返ってきたので、バラします。さすがに陰謀論ぶつけられる出版社がかわいそうなので。


『コロリア・カロル』の経過観察について、Tales版はギリギリ、カクヨム版は相変わらず一話しか読まれていません。完結ブーストに期待やね。だいぶいいペースで書けているので、一章だけ書いて完結にする予定。

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