174話
どうぞ。
まだまだしゃきっとしたカッターシャツに、薄めのベストを羽織る。けっこう派手めなマリンブルーのブラを付けながら、姉はこっちを見た。
「シャツの上に何か着てる季節って、みんなけっこう遊ぶんだよねー。カリナは?」
「ん、やめとく。暑くて脱いだりとか、ちょっと怖いし」
日差しがきついとめちゃくちゃ暑くなるし、逆にお腹を壊しそうなくらい寒くなったりもする。曇りなのにじめっと暑かったり、晴れなのに風が強かったりもするから、春はほんとうに難しい。性徴顕化する前からというより、むかーしからの伝統的な、春風邪の季節だからかもしれない。
「そういえば、ふにゃふにゃしながら「おねえちゃん」って言ってたけど。なんか夢でも見たの?」
「ん、どうだったっけ……? なんか見てた気がするけど」
しばらく姉と一緒に寝ていなかった気がする、なんて……口に出したところで、どういう意味があるかすら分からない、妄言にしても限度があるよねと思うくらいの妄言だ。
「お姉ちゃんに何かしてほしいこと、もみもみ以外にある? えっちなことだって教えてあげるけど?」
「じゅうぶん教えられてる気がするけど……」
「んー。まだ必要ないっか、ごめんね」
小首をかしげる微笑みに、見たことのない妖しい光が混じっていた。
二人で部屋を出て階段を降りると、ソファーで父さんが寝ていた。
「あ、帰ってきてたんだ……おつかれさま、お父さん」
「今日はほんとにお疲れみたいだねー」
膝をついて、間近で見てみる。
いつも身だしなみをきれいにしていて、寝る前でも無精ひげは剃ってからにしているみたいだけど……今日はぐんにゃり横に崩れて、無精ひげもそのままだ。ちょっとだけとんがった断面が、青緑っぽいあごから出ている。カミソリが鋭い刃物の代表になっているだけあって、「剃る」は「切る」に近いのかもしれない。
観察していても父さんは起きなかったので、起こさないように朝食に向かった。半熟卵のハムエッグに大きめのホットケーキ、こちらも大きく切ったバターが乗っている。姉の方は果肉多めのあんずジャムで、どっちも大好物である。
椅子に座って手を合わせてから、さっそく黄身に箸を入れた。
「美味しいよね、ハムエッグ」
「この、ハムがぎゅって固くなってるのが美味しいんだよねー」
ちょっと焦げてうまみが凝縮された部分は、父さんも最後まで取っておくくらい、家族みんな大好きだ。黄身に穴を開けてとろっとそのあたりに垂らすと、これもまた美味しい。たまにお皿にこぼれてもったいないから、ふちの部分がちゃんと反っているか確かめるのがコツだ。
二人してホットケーキを食べて、もっきゅもっきゅとリスみたいなほっぺたをしているのを見て、母さんは「変わらないわね」と口に手を当てて笑う。
「ほんともう、いつも通りなんだから……」
「むっぎゅ、……そんなに?」
「人って変わっていくものだっていうけど、変わらないところもあるものなのよね。あの人もそう。もし別の世界があっても、たぶん同じことしてるわね」
「私はゲームしてて、お姉ちゃんはマッサージしてて……かぁ」
なんでゲームなの、と姉は苦笑するが、俺の中には確信があった。
どんな世界だったとしても、遊びに本気を出している――そしてきっと、それを生業にする生き方を選ぶ。思考の流れとして不自然すぎる枝分かれが、おかしな方向に舵を切られたような気がして、頭を振る。
「やっぱバターだよね」
「ジャムでしょ。果肉たっぷりのやつ」
「美味しいけど、塩気足りなくない?」
「脂肪分多すぎでしょー。乙女の敵だぞ、お腹ぷにるぞぅ」
なんだとー、と丸めた拳をぽかぽかしてにゃんこファイトしつつ、朝ごはんは終わった。
カクヨムのお知らせで「次の電撃文庫の選考委員に佐島勤が!」ってひとりだけ書いてて、ちょっと笑っちゃいました。あの人そんな能力ある? やってたか。私のカクヨム内での地位ってゴミだから、新作出してもウケる余地ないんだよね。当然、応募したところで基準未達で終わりやろと。挑戦状なら直接送ってきてくんない? 一般ウケしそうなやつもネタだけ用意してっから、言われれば書くよ(妄想カス)
んじゃあその、リベンジしなきゃいけないみたいですね……。なんで爆死したものを再利用せにゃならんのだ。また次の投稿でアドレス貼るんで、全世界で二~三人しか読んでいない『コロリア・カロル』、ぜひ読みに来てくだせぇ。ウケが悪ければ別作品も出す、現在『真面目ちゃん(仮)』と『(タイトル未定、ラブコメ)』を製作中。そっちを読ませろって思ったら言ってください、制作急ぐんで。




