165話
きょう入学式でしたっけ。春ですし、皆さんにもいっぱいいいことあるといいですね。
どうぞ。
『出番だな、マイマスター?』
「うん、助けて」
あまりにも大きすぎる敵に、俺は対処を早々に諦めた。ノイスを呼び出して前衛になってもらい、こちらはこちらで攻撃態勢に入る。
ライヴギアを〈三鳥の型〉に組み替えて、〈鈴生り金果〉を無数に飛ばした。『ナギノクイント』ではかなり珍しい、属性付きだけど物理攻撃扱いの魔法だ。そして、対人レギュレーションでは原則禁止になるほどの、死ぬほど嫌われている攻撃でもある。
いくつも命中した金色の果実は、ろくにダメージを出さない。が、これは〈紫沿誘灯〉と同じ、恐ろしく厄介な継続デバフの起点だ。しかし、敵は必死に振り落とそうとしている。すでに、脅威には気付いているようだった。
『sukunhsnkknn knsufk』
[新しい魔法かァ? 火であぶるより無駄に見えるがね]
[見てたら分かるよ。あと、実が生ったら切り落としてね]
命中した――まま、ぴたっとくっついた果実は、ツタのように根を張って成長し始める。異常な速度で成長するそれは、MPを吸って成長する、移動速度低下の呪いをかける魔法植物だ。すぐに消えるとはいえ、がっちり覆われたりもさもさしたりといった感触はあるし、だいたいの特技に使うMPが削れるのは大問題だ。
ゆらゆらと揺らめくノイスの装甲はさすがの強度で、ビームまで逸らしている。打ち合うたびに鉄片や火花がバラバラと散って、いつもはほぼ無敵に思えるノイスも、さすがに少しずつ傷ついているようだった。
「だいじょうぶ?」
『ビー玉くれェには上等な目ン玉が嵌まってるらしいな、マイマスター?』
皮肉を言う余裕はあっても、振り向く時間はないようだ。いくつもの魔法で多重デバフをかけているが、これだけ動きが鈍っても火力が下がらない。剣が躍りビームが散乱し、ミサイルがこちらにまでやってきたり壁が壊れたりしている。
ころんと落ちたビー玉みたいなものが、重力光線に引き寄せられてこっちへやってきた。とっさに拾うと、ウィンドウがパッと開く。
[状態変化:「所有者」を獲得
「所有者」:強盗メカの性能が倍化する。旧貨幣「プライザ」の金額(換算)が多いほど護衛ロボットがより強く・多くなり、味方の防御力が強化される。]
急にロボットが沈黙したかと思うと、全体的に四角かったロボットの代わりなのか、鋭角なシルエットと奇妙にジャンキーな兵装をごちゃごちゃ装備した化け物メカがやってきた。
『……なんでここまで争いが絶えないんだか』
「なんでだろうね、ほんとに」
このダンジョンが話題にもならない理由がちょっと分かった気がした。欲しいものを取りたければ、ある程度取って戦闘はロボ任せにしていればいい。それなりの逃げ足があれば、機械の部品は拾えないけど、旧時代のお金かものすごく貴重な財産が手に入る。
「じゃあノイス、真っ当な手段探してみよっか」
『いつものバカはやんねェのかい』
「ゾードさん待たせてるし」
『驚いたな、あんたにも失礼ってェ概念があるとは』
あんまりにも無茶ぶりしすぎていたからか、ノイスがすごいことを言っている。
「ノイスも拾ってみて。もの限定でね?」
『わざわざあんなもん叩き起こさねェよ、オレでもな』
ギミックは理解したので、価値のありそうなものを拾い集めることになった。
noteで解剖しようとしてたラノベがデストラップでした。あっぶな、冗談抜きで死ぬやつやんけ……ざっとレビュー漁った限り誰もこの点指摘してないみたいなので、知らなかったことにして売りに行きます。よく出版できたなこれ……




