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163話

 どうぞ。

 どうかな、と――すこし緊張したような、どこか自信なさげな声が届いた。


「面白い、ですけど……なんだかすごく、寂しいです」

「“寂しい”、か。小角くんとはずいぶん違うなあ」


『境界判死官』――滅びゆく世界を渡り、その滅びの正しさに審判を下す「判死官」を主人公にした物語だった。しかし、シスターの恰好をした女性主人公「ツー・ワン」は、物語の冒頭で、とある世界を見捨てる。


「い、いやほら……男子ならこういうの大好きだろ! って設定いっぱい盛り込んでるしさ。サスペンス要素もあるし、「ハコ」もカッコいいし」

「趣味が似ててよかったよ」


 めったに見ない笑顔がこぼれる。


「あ、えっと」

「ああ、ごめん」


 話の流れが変わろうとしたところで、トキノは話題を引き戻す。


 滅びにはさまざまな原因がある。上位世界にたどり着いた人類は、物質世界に干渉することをなるべく避けていたが、さまざまな目的からちょっかいを出すものが現れ始める。滅びゆく惑星をアーカイブに記録し、その歴史に干渉の痕跡がないか確かめる役職の女性の旅を描く物語。それが、逆垣の描くものだった。


 死には原因がある。けれど、因果関係がはっきりしていて、それを覆すことができないのなら……死んでも仕方がない。その感情をひとことで表すのなら、いったい何になるのかは、あまり言葉を知らないトキノには分からなかった。しかし、重苦しくて逃れようのない何かが根底にあるような、そんな感情を抱いた。




「二人はさ、あの作品どう思った?」


 帰り道で、トキノは聞いた。


「すごく面白かったよ。読書家だけあるなって思った」

「好きなこといっぱい詰め込んであるなーって思った」


 滅びに抗う人々、上位者ながら人であろうとする判死官、それぞれの目的から干渉を行う団体たち。小さな構図だけを見ても楽しいが、映画をそのまま文字に起こしたような臨場感のある描写、フェティシズムすら感じられる精緻な視線も美しい。そこへ海藤が描くコラージュを利用した繊細なイラストが合わさって、ただコピー用紙を閉じただけの同人誌とは思えないクオリティだった。


「なんか……なんだかね、悲しそうな気がしたっていうか。最初にさ、なんか……」

「電脳化による物質的座標の崩壊?」

「え、うん。それ……よくあることだからって、見捨てちゃった。あれ、なんでだったのかなって思うんだけど、ヅノくん、なんかない?」

「え!? いや、でもうん、そうだなぁ……旅モノのビターエンドシナリオって、最初に入れるものじゃない、のはそうかもしれない。言われてみれば、変かなあ」


 カリナはとくに思うところがないのか、いまひとつ話題に入り込んでいないような顔をしている。


「もうちょっと聞きたい、そのビターエンドなやつ。聞かせて」

「あちこち旅していろんな問題を解決するスタイルのお話って、昔からよくあるんだ。ほら、先輩のやつだって、基本的にヒーローが活躍する話で……でもさ、やっぱりたまには後味悪い話もあるんだよ。えーっと」


 さらわれたと思っていた少年が化け物で、主人公に倒された化け物のことを罵りながらも、少年のことを探す張り紙を張って回る母親――そんな話が、小角の見ていたドラマにはあったらしい。


「希望とか、カッコよさとか? を、ヒーローが見せるんだ。だからほら、ヒーローが負けるとかは大きな試練として出す、よね」

「試練かぁ……」

「あ、試練か……」

「どしたの、かりなん」


 ちょっと思い出した、とごまかすように笑う。


「先輩に言ったら教えてくれるかな?」

「それはその、……やめといた方がいいと思うな」

「なんで?」

「作文とかで「なんでこうしたの」って聞かれても、困らない?」


 分かるような分からないような、妙な言葉だった。しかし、確かにそうだとも思えたトキノは、それ以上の追及をやめることにした。


(でも、……知りたい)

『仮面ライダーガヴ』28話観ました。Vシネマかってくらい傷だらけやね……しかし退場するキャラの株もちゃんと上がるっていうこの、巧みというか匠。


 酢賀さんの描写のうち「子守唄」「お父さん呼び拒否」「きれいすぎる靴下」「培養室に音楽」「赤ん坊より大きな写真がない」などなどからして、「初の子供にうきうきでいろいろ揃えたり考えたりしてたけど、突然亡くなった」ってことでしょうか。乳児突然死症候群かな? 日本じゃほぼほぼない(欧米諸国のようなうつぶせ寝だと起こりやすい。日本は基本仰向けで寝かせる)から理不尽感も強いでしょう、心痛察するに余りある。お父さん呼び拒否はたぶん、段階を経た成長を見守ってないから違和感の方が強かったのかなと。彼の中にいる「子供」はまだ赤ちゃんのままなんだろうなあ……


 まあでもここで悲しい過去……にならないのが、たぶんこの人、グラニュートじゃなくても「強い生物の素体」ならなんでもよかったんだろうな感がね。魔化魍だろうとワームだろうとファンガイアだろうとインベスだろうと「これ強い!!」ってなったら研究に取り掛かりそうなんだよね。


 次回予告もなかなか……山羊っぽいストマック家に対して、あの子たちは羊? 山羊を悪魔とすると食われる側ってことやろか、なんか別の意味あったっけ。羊頭狗肉とか? 大統領の娘かぁ……国に仕掛けたらお前さんらただじゃ済まんやろ。今後も楽しんでいきましょう。

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