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144話

 ようやっとニカドリー倒した、と思ったらエコカリはコラボで2キャラ。ノルマ二倍はちょっと多すぎんよー……あとは画像いじるだけだけど。


 どうぞ。

 紙を見に来ましたというと、サブロウザさんは「おっ、待ってたよ!」と……この前よりずいぶんきれいになった店構えのカウンターで、ちゃっと手を挙げた。木の棚と箱という物置みたいな構造は変わらないが、あちこちに値札があって、箱の中身のサンプルも展示されている。


「ご先祖様は、志願者(ソルド)とかなり親密だったみたいだぞ。写真まで出てきた、ほら」

「写真!? どんな人がいるんでしょうか……」


 ささっとカウンターまで進んで、写真立てを見た。かなり色褪せてはいるけど、写っているものははっきり見える。裃に髷を結ったサブロウザさんそっくりの侍と、美男美女が一人ずつ、それとおそらく星霊(アスト)みたいな人物がいた。一見すると集合写真だが、人間と呼べるのは三人だけのようだ。


「こりゃ人間か? あんたら、アストだかいうやつを連れてるよな?」

「これは星霊(アスト)ですね。見たことないけど、たぶん」


 プレイヤーキャラは、どんなに異種族のように見えても「そういうデザイン」でしかない。骨質の角があるとか耳がヒレだとか尻尾があるだとかも、見たことはあるけど、あれも遺伝子を解析すれば「人間」になるだろう。


 だからこそというべきか、人の大枠から完全に外れているものは人間ではない、と判別しやすい。最初に戦ったフィールドボス「ロストエイジ・サウザンドショーグン」のような鎧と、稲妻に折れ曲がった使いづらそうな刀……何より目立つ、肩口から袈裟に切り込んだすさまじい傷痕。ぼんやりと細く消えていく下半身は、それがホラー系のものであることをこれ以上ないほどはっきりと示していた。


「ンまあ、これ以上の記録は見つからなかったんだがな。それよかほら、絵だったっけ。俺の商売は剣術道場だから、こっちは〈鑑定〉スキルで出た値段そのまんまで売ることにしてるんだ」

「いいんですか?」

「あんたにも世話になったし、嫁がこういう商売の元手を作りたいみたいでなあ。そんなに売れるもんじゃあないかもしれんが、あんたみたいな人もいるようだし」

「……どうも?」


 こちらはほとんどが箱に収納されていたもので、紙の質や保存状態もかなりいい。ほとんどが絵と心材――要するに絵ばかりだけど、色もはっきり分かるし、虫食いもほとんどない。


「そうそう、これだ。いい絵だろ? 使えるかどうかわからないが、あんたに送りたくってな」

「たしかに、すごくいいですね」


 三人の英雄が、三つの道からひとつところに集う絵。ここから始まる物語を予感させる、実在の歴史書かなにかにでも書かれていそうな絵だった。


「それにこっちは、……なんか意味ありげだが、工芸品のデザイン画か何かに見えるんだ。どう思う?」

「ドリル、いやピラミッド……みたいですけど、工芸品……?」


 呪物といった方がしっくりくる。天に手を掲げる人のような形に枝分かれした枝を、ものすごい数集めて螺旋階段状のステージに立たせたような形に並べた……見立てだとしてもちょっと禍々しすぎる、絵画よりはスケッチに近いものだった。使えると出ているしさっきの絵と組み合わせがあるみたいだけど、見ていて気持ちのいいものではない。


「嫌かい。じゃあ捨てちまうか……」

「あ、いえ。これも買います」

「じゃあ、両方買い上げってことでいいか?」

「はい。役立ちそうなので」


 ライヴギアに使っているあいだは、絵そのものをまじまじと見ることはない。被覆に絵柄が書かれていたら見えるだろうけど、そういうものはたぶん被覆にならないだろう。見た目がどれだけ変でも、使ってしまえばどうということはないのだ。


「まだまだ倉庫は片付いてないから、いいものが出てきたら取り置きにしとくぜ。またいつでも来てくれよな」

「はい!」


 ヘスタのあそこに続いて、すごくいいお店を見つけることができた。


『カリナ、そろそろお風呂入るよー』

『あ、うん! すぐ落ちるね』


 姉の声が聞こえたので、俺は店を出てすぐログアウトした。

「心材:枝倍一座(しばいいちざ)

 ライヴギアに使用した際、本体に分身能力を与える。


 呪わば呪えと叫ぶは勝手、けれど誰にも厄はなし。それもそのはず。これなるは、ただのひとつも絵心なしの、おもちゃをひとつ描いたる……見せずじまいに仕舞ったままの、始末もなしにしじま暮らし。計なし度なし材なく意なく、かたちなければ憶えなし。ならば夢にも現れまいと、畳んだままにひた眠る。

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