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140話

 どうぞ。

 荒野にいるモンスターは、全体的に、ヘスタ周囲のものより大型で固いものが多い。鉱竜やゴーレムもそうだけど、狩り大好きな人たちに狩り尽くされたのか、けっこう面倒な「フラッダー・プラント」しか見つからなかった。リポップを待つのも面倒なので、おそらくよりめんどくさいヤツを刀で狩れるかどうか、試してみることになった。


 どういうデータがあったのか、「ワールドシミュレーター」の自動生成だとわりとよく出てくる植物群……付近のレイラインが集中しているところに生えていて、魔力や霊力を吸い尽くすとんでもない害悪植物だ。モンスターとしては、ゴーレムとそんなに変わらない――が、「あふれる(フラッダー)」という名前が起こす現象は、想像以上に厄介だ。


『なァマイマスター、なんでオレを呼び出さねェんだ?』

「あれ、斬撃だと倒しにくいんだよ」

『なるほどねェ……ボディを作り直さなきゃあ、まともにやれないってェことか』


 シミュレーター産のゲームは、そういうところを共有していることが多い――さすがに名前まで同じではないが、RPG黎明期から「巨大な岩の巨人」がゴーレムと呼ばれ、だいたいの傾向が同じだったように、現代でもそういうセオリーは生まれ続けている。


「で、わしの出番ということか?」

「一撃離脱が理想だから、ブーストを頼みたいんだ」

「よかろう。交換はせんでよいのか?」

「タイプがぜんぜん違うから、やめとく」


 遠距離から魔法を撃ちつつ、パーティー全体をサポートする……〈サクヤヒメ〉の役割はとてもシンプルで、俺とはまったく違う。特技やスキルを交換しても、おそらくどちらも得をしないだろう。当然〈柳尾の型〉の方が有効だし、ダメそうならすぐ切り替える予定ではあるのだが……「攻略法が限られている」なんて切り開き甲斐のあるものに挑まないなんて、面白くない。


「さてと。様子見しないと」


 まずは無警戒で近付く。手綱のようにお互い握った連接剣のせいか、分身型のライヴギアもとことこ付いてくる。「フラッダー・プラント」にはいくつかタイプがあって、それぞれの対処法がまったく違う……初見で対応できると思ったらタイプ違いだった、なんてことはそれなりにあるし、俺も経験したことがある。


 不安になる抽象画のような樹形のサボテンもどきに近付くと、樹上にあった……ドラゴンフルーツによく似たいかにもな果実が落っこちてきて、ぱかっと割れる。中から出てきた大まかな人型に、ばらばらと崩れていくサボテンもどきから抜け出たエネルギーがすべて収束していった。


 花びらのたくさんあるサボテンの花が、ふわりと開く。光り輝く裸身のようなものがだんだんと高貴な白に変わり、花が咲くエフェクトが弾けるたびに豪奢なドレスアーマーが構成されていった。そこかしこにいくつか並んだトゲの意匠があり、腰には赤紫色のドラゴンフルーツを提げている。


 花嫁の装いをとった姫騎士、とでも言うべきか。かなりのハイディティールで、呼び出した二刀流も花びらとトゲとで左右が異なっている。顔のない美麗なマネキンは、剣を腰に収めた。抜刀術か、と警戒したが……梅よりもほのかなピンクと、ぎりぎりで紫に転じない赤紫を帯びた剣士は、ただゆるりと手指を遊ばせるのみだった。


「桃太郎……? 「リィンカー」タイプか」

「あれはアバターのたぐいじゃろう。アバ太郎とかいうのではないか?」

「あれ、アバの木とかアバの実じゃないけど」

「ではサボ太郎か」


 そういうセンスはないのか、ぐだぐだになっている。


 先人たちが「生まれ変わり(リィンカーネーション)」と「つながり(リンク)」をもとに名付けた「リィンカー」タイプは、わりと文字通りの性能をしている。刀でもやりやすいのはありがたいが、そうとう苦戦する相手だ。


「―▼―、―◆―」

「避け――られない!?」


 リィンカータイプは、「容赦なくぶっ倒せる美少女」として変な意味で人気だ。好きな人はベストオブベストに選ぶが、嫌いな人は徹底的に大嫌い――今この瞬間に胸元に咲いた花は、それを後押しする大事な要素だ。まさか、避けられないとは思っていなかった。


「なんじゃ、これは」

「ステータス変化共有。めちゃくちゃヤバイ状態異常だよ」


 本体の色数に応じて、プレイヤー側に花が咲く。攻撃のモーションを見れば回避可能……ではなかったから、とんでもないことになった。


「じゃあヒメ、バフなしでいいから、ひたすら攻撃してて」

「うむ、相分かった」


 味方サイドのステータスを変化させると、花の色に応じて、敵側のステータスも同じ倍率で変化する。パーティーメンバーが多いほど、バッファーが優秀でバフの熟練度が高いほど、敵は同じ倍率で同じ効果をすべて受ける。ぼっちは楽しめるが、仲間たちとわいわい楽しんでいる層にとっては最悪だ。


「―/―」


 すっと抜いた二刀が、こちらを向いた。

 昔っから現実に存在する生物のアレンジをしまくっていますが、リアル植物の進化にはぜったいに勝てないと確信しています。アカシックレコードに接続してもたぶんダメだと思う。だからハイパーゼットン(イマーゴ)みたいなポケモンでゆゆゆでバーテックス鎧武なドンサボ子をですね……こんだけ盛ったらさすがにもういないよね? 進化したらこういうの生えてきそうで怖い。

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