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131話

 早めに進める……書けば書けるんだから書かなくては。学校でやるべきことがすごーく多い。


 どうぞ。

 美人は三日で飽きる、ということわざがある。


 それはたぶん、顔だけの人を言っているんだろう――トキノはそう思っていた。彼女が生まれてきたこの現代には「美人」はいくらでもいる。けれど、顔の良し悪しよりも雰囲気や人柄の方が優先される、ように感じていた。


(めっちゃ遠い高校来ちゃったなぁー……偏差値ふつうなの、近場だとここしかなかったんだよね)


 トキノの地元にある悠蓮(ゆれん)高校は偏差値が低く、評判も芳しくない。芳しくない、といっても連日人が死ぬ、女は帰ってこない、死骸がかかげて晒されているなどといったことはないが……青春はもっとキレイであるべきだ、とトキノは考えていた。


 灯盛(ともり)高校は「それなり」である。それ以上の評を持たず、とくに勉強が厳しいだのどこの部活が強いだのといった評判はない。空白が多ければ多いほど、なんでもできる――信条でもなんでもないが、彼女はなんとなくそう思っている。青春とは何か、その答えはこれだけ技術が発達して現在でも出ていない。


 しかし、欺瞞・幻想・糊塗とさまざまに述べられるそれは、きっと「楽しい思い出」のことで……楽しむならリアルタイムしかないと、彼女は直感していた。


(五組かぁ。知ってる名前ないし……がんばって、友達作ろう!)


 悠蓮中学校の同級生で、地元の高校を志望するものはほとんどいなかった。こちらの灯盛高校を志望した同級生はそれなりにいたはずだが、どうやらクラスが違うらしい。ようやく見つけた名前を目で追ってみると、学科と校舎が違った。学内で友達を続けるには少々難しい距離である。


 ふと、自分が名簿を貼り出した紙に近付き過ぎていることに気付く。後ろに幾人かの気配があることを察して、トキノはすすっと横に移動して、下駄箱に向かった。一年五組の教室は、あまたある学校の例にもれず最上階だ。丸っこくてかわいいローファーから、つま先だけ臙脂色の上履きに履き替える。


 キッ、キッという感触のような音のようなものが足元から伝わってくる。それは、三年前に中学校に入ったときと同じような、新生活特有の新しい音だった。「キ」と「ギ」の中間のようにも感じる。靴はすり減っていくけれど、なくなった靴底はどこにも痕跡がない。いったいどこに行くのだろう、と思いながら彼女は階段を登った。




 来るのが早かったのか、教室にはあまり人がいなかった。やや居心地が悪そうに読書する男子と、退屈そうに座る女子、窓の外を見ている女子に、カバンはあるがどこかに行っているらしい席もある。きれいに端っこ同士に分かれたクラスメイトたちに申し訳なく思いつつ、直矢叶希乃(すぐや・ときの)は真ん中やや前の席に着いた。


(空気固すぎでしょー……。やばいよ、男の子の方が仲良くできそうかも)


 友達が同じクラスではなかったのか、あるいはすでに新しい友達を作っていたのか。他人と話すのが苦手なタイプがふたりもいるのか……女子の方は、コミュニケーションを受け入れそうな態度ではない。


 続いて男子が入ってくるが――これもまた、隅っこの方にいる男子に話しかけようともしない。しぐさの端々を見る限り、これまで女子として生きてきた男子……性徴顕化してすぐなのだろう。ものすごくやりづらそうで、誰にどうしようか真剣に悩んでいるようだった。助け舟を出すかどうかと考えた瞬間に、女子が入ってきた。


(え、やばい……めっちゃキレイだ)


 どういう視線を浴びてきたのか、“流す”ことにひどく慣れた態度。自分の容姿がどんなものなのかを知っている、けれど見せ方はあまり洗練されていない……ふしぎに両立しない、アンバランスな美しさがあった。


 砂色の髪、くりくりと丸いのにどこか気だるげなものを感じさせる目。形のよい鼻に、蠱惑的にさえ感じる桃色の唇、ふっくらとした頬。顔の造作もひどく美しいが、ゆるやかでかつしなやかな身体の造形は、最低限の機能とほんのわずかの遊び心を盛り込んだ、何かの刃物のように思えた。カバンを席に置いたその鋭さが、こちらへ向く。


「どしたの? 知り合いだっけ」

「えっ? いや、たぶん違うけど。私、スグヤ・トキノ」

「スグヤさん、ね。私はアマミ・カリナ」

「んじゃー、“かりなん”って呼んでいい?」


 んふっ、と読書していた男子が吹き出す。それと同時に、本を閉じて立ち上がる。


「天海……さん、えっと、カルヤくんのこと知ってる?」

「性徴顕化してさ、名前変えたんだ。オヅノくんだよね」

「そうそう! オヅノ・セイイチ。えっと、よろしく……?」

「“かりなん”って、何か変だった?」


 話題を向けられると、小角は「ダイヤモンド」と言った。


「世界最大のダイヤモンドの名前だから、ちょっとびっくりして。実質言葉狩りっていうかその、気にしなくていいから……」

「ヅノくん気にしすぎじゃない? 誕生日四月かもしんないよ?」

「や、違うけど」

「づ、ヅノくん……」


 ある出会いが人生を変えることがあるという。へにゃへにゃに笑う少年と、しなやかで鋭い雰囲気の少女。トキノが出会った二人は、彼女の人生をぱっと明るく照らした。


 残念ながら、最後までではなかったが――

 研究が尽きました(朗報)。積み本まだあるから補充するね……あとnote分はふたつ書き終わっているので、タイミング見て出します。今読んでるやつは現状ふつうに面白い。


 ついに『ユア・フォルマ』アニメ化決定、そんでもって八薙玉造先生脚本のアニメ『もめんたりー・リリィ』が一月スタート……朗報続きやんけ!! 絶対見る。あとなんかロボアニメやるっぽい、これも放送局が合えば見たいですね。意外と田舎で見られないやつ多いんだよねぇ……

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