127話
早く入学式を書きたい……
どうぞ。
リソース全ツッパで戦ってしまったので、事後処理としてあれこれを買い込んでいる。ヘスタに戻って、いつものお店をひと通り回っていた。
「何と戦っているか。すこし、憂いた方がいいか?」
「便利だから、つい頼っちゃって。心配ありません」
全体的にでっかいサンドバッグみたいなザビロさんは、ひとつうなずいて言葉を飲み込んだようだった。結界テープを買い込み過ぎて、いつも同じ心配をされている。説明はしているつもりだけど、これを買い込むのは、俺が思っているよりもはるかに異常事態らしい。
「この“空糸の術”って、ふつうは何に使うんですか?」
「これで結界、張る。怨霊相手にする人、これ持ち物」
「怨霊ですか……」
「霊は、触れない。通れない。だから、壁に張る」
絶妙に分からないけど、世界観上そういうことがある、という説明なのだろう。
「怨霊と、戦っているかと。思っていたが」
「そういうわけでは、……ないです、たぶん」
「なぜ詰まるか」
「過去のあれこれ、みたいなのはよく相手にするので」
意識を投影した入れ替え用ボディー、みたいな敵ならいくらでも倒している。あれは亡霊でも怨霊でもないし、いちばんそれっぽい「増える絵」は錫児さんに対処してもらった。
「符術の本場、ここではないと、聞いた」
「え、街から出られなかったんじゃ」
「あの芸術家。私の知る三人目。二人目は、他の街を知っていた」
「ちょっといろいろ、聞いてみないといけませんね」
前にもいろいろ言ってはいたし、クエストも出されたけど……そのわりには、もらっている情報が少なすぎる。サナリさんはあれこれとアイテムをくれているけど、もっともっと根幹に関わる「何か」の話はほとんどしていない。
「では!」
「無理は、良くない」
ものすごく真っ当な指摘を受けつつ、俺は店を出た。
歩きつつ考える――この惑星にはコロニーというか街がいくつもある。それぞれ分断されているようで、じつは同じ人がいたり、妙な場所でつながっていたりもする。そのつながりが、本当のところどんなふうになっているのか……あっちが知っているのか、それとも隠しているのか、いい加減に知る必要がある気がしていた。
カオスの極みのような「アトリエ・ちゃんぽら」にやってくると、誰もいないのか、ひどく静かだった。それなりに出入りしているピュリィもいないので、何か他のあれこれで忙しいのかもしれない。サナリさんがいる部屋をのぞいてみると、当然のようにカギも何もかかっていない。
「サナリさん、いますか?」
「うん? 君か、名前は憶えていないがっ。芸術についてを教授した覚えがあるぞっ」
「ザクロです。ちょっと、聞きたいことがあるんですけど」
「いろいろと伝えたはずなのだがっ……足りなかったようだな?」
ツナギの幼女は、面白そうにこちらを見ている。
「ほかの街について、どの程度ご存知なのか聞きたくて」
「ふむ……ヘスタ以外に、サリディスへの道がつながったのだったな」
どこかおどけるような調子が消えて、かなり考え込んでいる気配があった。
「志願者システムはどこでも使われている。つまり、出力ポイントはすべての街にあるはずなのだっ。しかしアクセスできない」
「でも、サナリさんはいましたよね?」
周知の事実のように、サリディスにいたサナリさんは「あっちにもいただろう」と言っていた。滅びているとか死んでいるとか、そういった疑いはまったく持っていない様子だった。街を知っているというより、疑似的な志願者システムを使う以上、そんなことにはならないという確信だったのだろうか。
「うーむ……そこなのだっ。地下を通っていったのか、地上が封鎖される前のことだったのか。それに、大きな疑問がある」
「なんですか、大きな疑問って」
「あれらごときをまったく倒せず、この街にこもっている。とても不自然だ」
「……倒せそうな人、何人かいますね」
全体のシルエットがサンドバッグっぽいザビロさんもそうだし、サブロウザさんもかなり強そうだった。サナリさんが言うからには、ボスモンスターはそんなに強くないのだろう。
「察するに、地下を通っていったのだろうね。ところが、地下に街があるでもなしっ、ルートが判明しているでもない! 何があったか、調べずとも分かるっ」
「強い人を取られちゃって、しかも負けたってことでしょうか」
「おそらくはなっ。つまり! 地下の拠点を見つけることができれば、そこから街を発見することもできるだろうっ」
「……なんか、話がそらされてるような」
すでに言ったぞ、と幼女は冷たい目をする。
「同期が途切れているのだっ。情報の集積ポイントがどこかも分からない、スタンドアローンで頑張るしかなかった」
「いろいろ聞きましたけど、全部ここで集めた情報なんですね……」
思ったより頑張っていた、というかめちゃくちゃ有能だったようだ。
「疑いの目を向けられるのは仕方がない。しかし、こちらにも苦労があるのだっ」
「なんか、……はい」
思ったよりも、状況ギリギリで粘っているらしかった。
新作が詰まる→アイデア出し→別の新作を思いつくのループに陥っています。集中すべきはこれなんだよね……そろそろ新キャラ情報来るか(意識散逸) やりたい話はあるし、たぶんこれじゃないとやる意味がない話だから持っていきてーのだ……新作の要素、競合少なそうだな。ともかく、三章は今からでも書いていこうと思います。




