126話
母が入院してる間の家族の世話&スタレ&新作書いてて、あんまし時間が確保できませんでした。十日空くのはさすがにまずい……次の話は決まってるので、がんばります。
どうぞ。
イベントが片付いて、俺たちは広場の隅っこに集まっていた。
「そこそこ楽しめたな。PKはちっとばかしお休みだったが……」
「あ、ちゃんとおとなしくしてたんですね」
自分なりの強さ、そして斬り合える相手を探し続けているゾードだけど、さすがにイベント中はおとなしくしていたらしい。
「そこでやっちまうとつまんねぇタイミングがあるんだよ。ほかに考えることが多いと、やってる方もやられてる方も気が入らないんでな」
手当たり次第に襲撃していた人とは思えないほど、合理的で理性的な言葉だった。何か心境の変化でもあったのかと思ったけど、そうでもなさそうだ。
「そんで? お前らはどうだったんだよ」
「私は、星霊三体目が仲間になりましたよ」
「すこし忙しかったが、股間はこの通り元気だ」
「俺らも、野良に混ぜてもらっていろいろやってきましたよ」
全員がいつも通りの遊び方をしていて、とくに変化は起きていないようだった。
「次のアップデートで、ギルドシステムが来るらしいぜ。いっちょ組んどかねーか?」
「いいですねー? 籍置いとける場所、ちょうど欲しかったですしねー」
ローペが言ったことにも一理ある。だいたいどんなゲームにも「ギルドバフ」というものがあって、とりあえず入っておくのは大事だ。なんなら、そのバフを利用するためだけにソロプレイヤーが設立する、交流なしの「ソロギルド」なんかもある。
「悪くはないが、僕は参加できないな」
「股間に何かあるんですか?」
冗談のつもりで言ってみると「いや」と真面目な調子の声が返ってきた。
「僕はこれでもNPCでね。パーティーを組むまでは許可されているんだが、ギルドには加入できない」
「なんか……えらく機械的に言うなあ」
「君たちはもう知ってるだろ?」
「ありゃ茶番だったのか、錫児」
人間の意識の一部を利用して動かす「モノ」――スタート地点付近にいくらでもいる機械系モンスターは、そういう兵器の成れの果てらしい、というのは聞いていた。ああやって真相が明かされた場面にいた錫児さんが、その当事者だったと言われると……ゲームの設定なのに、奇妙な寒気を感じた。
「まあ、そういうことだ。手が空いていれば手伝いはできるよ」
「……いつもは何をしてるんですか?」
すっと股間の象牙が持ち上がり、「しーっ」のジェスチャーが口を塞ぐように、ちょうど麻袋の顔あたりにぱさりと当たった。そのまま何も言わず、錫児さんは歩いていく。ブーメランパンツで強調される筋肉質なお尻が、ゆっくりと遠ざかっていった。
自分でも下手だと思うくらいの声音で、できるだけ話題を元に戻す。
「えっと、ザイルとローペはいいんだよね?」
「ザクロさんも?」
「ソロじゃ限界あるけど、いつも野良ってわけにはいかないからね」
「んじゃあ、話は決まりだな」
なんとなく頭数が欲しいときに組む、それ以外のときは各自で活動する。いつも通りのノリで遊べるギルドがあれば、とてもありがたい。
「ひと段落ついたな。ザクロ、なんか準備することあるか?」
「武器がもうちょっとで作れそうです」
「けっこう長いこと待ってんだからよ、つまんねぇ戦いにすんなよ」
「そっちも、強くなってるんですよね?」
食前酒のように、あえて挑発する。やれやれと言わんばかりに、ザイルとローペ兄妹も去っていった。
「ペースは落ちたが、お前に負けてるつもりはないぜ。それはそれとして、手札を見せるってわけにはいかないけどな」
「そうなりますよね!」
戦う前に、こうして話すのも楽しい。
「手助けが必要そうなら言えよ? そのくらいはしてやる」
「そのときは、お願いします」
拳をがっと合わせて、俺たちはそれぞれの目的地に歩いて行った。
股間とケツで語る錫児さん。書いてていちばんたのしい。




