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【更新停止中】アクロス・ザ・ナギノクイント  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 みゆきひらひらふるるよる
125/191

125話

 どうぞ。

 青みが強いミントグリーンの球体が、斧をやんわりと止める。


『すこし、不愉快ですわね』

「ごめんね」


 ムチの特技である〈ウロボロ・スフィア〉は、妙な粘着性のある力場を作り出す。その力場をその場に配置していれば防御に、味方にくっつければ回復になる――けれど、トモガラの言っている言葉はそういう意味ではない。


『どうして引っ込んでしまいますの?』

「勝たなきゃいけないから、かなぁ……」


 あのサムライと戦うだけなら、サブロウザさんの言葉に従って「何度でも戻ってくる」こともできただろう。でも、星霊(アスト)と戦える機会は限られている。勝ちにこだわるときは、俺だってすこしは汚い手段を使うのだ。


 ムチはかなり強い武器だ。特技はぽんぽん生えてくるし、どれも強い。その面だけで言えば、刀とは比べ物にならないくらい強いし、とてつもなく優遇されていると言える。けれど、ただ振るだけでもちょっとした訓練が必要だし、打ち合いはほとんどできない。命がけの仕合みたいな戦い方はできないから、トモガラの求めているそれとは全然違う戦い方になる。


『あんたなら真正面からやり合うと思ってたんだがな、マイマスター?』

「そういう賭けは賢くないからね」

『バカやんのが楽しいんじゃねェのかい。つくづく、面白ェことばっかりだ』

『ほっぽってお話を進めないでくださいな?』


 紅白のひらめく激突に、茶々を入れるように〈ヒドラスイング〉を挟み込む。全弾ヒットしたそれは、さっきとは比べ物にならないほどのダメージを叩きだした。


[剣で戦ってても効いてる気がしねェぜ、マイマスター]

[パーティープレイ前提の敵だから、わざと難しくしてるんだよ]


 思考音声は、すこし納得いかない様子だった。


 ゲーム内でトモガラに与えられた役割があるとすれば、「攻撃系のタンクを鍛えること」だろう。そしてもうひとつ、打撃属性の通りがいい……何かしら、武器選択の幅を広げさせたいねらいがあるように思える。ソロでも打ち合えば有利になるわけではなく、単に「剣では双方のダメージが減衰する」ような状態なのだろう。


[剣で受けて、打撃か魔法で削る。何人かでそれをやんなきゃ倒せない相手なんだ]

[えらく現実的だな。で、それをやるってェわけだ]


 そう、とだけ返して貝に魔法を連発させる。じわじわと削れていく相手は、ノイスの機刃と切り結ぶだけで、一歩も前進できていなかった。


[ノイス、どう?]

[ダメだな。そういうズルができる相手じゃなさそうだぜェ]


 刀の特技を渡して、〈四葬・無明鴉〉が効くかどうかを確かめてもらっていた。即死が効くなら倒しやすいけど、同じような技が使える「手斧」カテゴリを使っているせいか、それなり以上の耐性か無効化を持っているようだ。


「ごめんね。次があったら、楽しい戦いにするから」

『あぁ、もう! 約束をたがえたら承知しませんからね!』


 削れに削れたHPゲージがついに真っ赤になり、あちらの刀も波動を放つようになった。けれど、もう勝負はついている。ノイスはきっちり受け流す方法を会得して、俺はムチを幾度もぶつけ、〈秘奥珠懐〉は魔法を撃ち続ける。


『もうっ、いい加減に……!』

『まるで、オレには勝てるような口ぶりじゃあねェの』


 放った〈バードキャプター〉が手斧をぐっと捉え、引っ張る。パワーではまったく敵わないが、特技はそういった補正をわずかだけ無視できる――即座にエネルギー体の仮想アトラクターを引きちぎった手斧は、しかしノイスの刃を防ぐのに間に合わない。


 大薙ぎの一撃に、トモガラは大きく吹き飛んだ。グワンッッ、とものすごい音がして、揺れる装甲がびりびりと震える。


『くっ……』

「〈百捕打〉!!」


 打撃が当たるとわずかなディレイが起こり、態勢を立て直せないともう一発が当たる。消費した符の数がなくなるまで、もしくは相手が態勢を立て直すまで打撃は続く。一発ごとのダメージは最低クラスだが上限は三十回、連撃ボーナスも付く。ムチと符術を両方修めていないと習得できない、使いどころもほとんどない特技だった。


 だからこそ、今このときに切り札になり得た。


『悪くはありませんけれど。もっといい斬り合いをしたかったですわ』

「がんばったんだけどね……かなり」


 特殊勝利条件は満たせなかった、ということなのか、腕の傷がすっと消えてしまった。しかし、トモガラの体はさらさらと光の粒子に変換しつつ、空中に箱を描き出そうとしている。


『舞台を用意してくださいな。あなたでは満足できませんの』

「え? えっと、うん……?」


 意外にチョロいのか、どっちみちそうなる運びだったのか、トモガラはあっさりと仲間になった。


「斬った、のか?」

「斬ってはいませんけど、倒しました」


 レオタードからいつもの着流しに戻って、サブロウザさんに応えた。



[スキル〈渡季彩焔〉を習得しました]



 続きに続いたあれこれは、ひと段落ついたようだった。

『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』観てきました。エクストリーム面白かった。小冊子もよかったですね。特大のファンサ(必見!)あり、オリキャラも本編の解像度上げてくれるいいやつでした。あれはハイドープじゃなくて運命に出会った組かな? アレしてるのに目の下のクマもないので、適合率クッソ高そう。精神汚染はとっくに克服した感じでしたね。でもその女はやめとこう? 間男の名前を呼びながら旦那のモノを使う(事実)女やぞ。


 あとね、エンディングテーマがいいんだよ……「鳴海壮吉」名義がほんとにその通りで、歌詞がマジでおやっさんすぎて泣く。絶対口に出して言わないだろうけど、あの人の言葉だなってなる。あったかいんだ。


 ファンはおすすめするまでもなく観てると思うので、SNSで宣伝して、どうぞ。本当に面白かった……『フューチャー・デイブレイク』も良かったけど、ハードボイルドから感じる、じんわり染みるような温かみはたぶんこっちじゃないと摂取できねぇやつだと思う。妹誘ってもう一回観に行こうかな。

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