121話
なんか夢の中でレビューをもらいました。誰や……ってかなんであんな詳細に読んでるん? 内容はごもっとも(性癖かバトルかに絞ったらええんちゃう?)だったんですが、できればどっちもやりてぇ。せっかく読んでくれたのに申し訳ない……
ともあれ、どうぞ。
義眼を起動せずとも、そのお祭り騒ぎは見て取れた。ボスモンスターと人間が同程度の数で存在すると考えると、地獄絵図そのものなのだが……そこにいるのは全員が志願者であり、彼ら全員が協力すれば掃討は困難ではない。
通常出現する星霊は、位階で言えばシルバークラウンかゴールドクラウンに相当する。全体的にはそこまで高くもないのだが、プレイヤーの強さはまだまだ発展途上である。伝承通りのそれに立ち向かう、いわばデジタルが行き届いた時代の人間が神代に放り込まれるに等しい戦力差は、そう簡単に埋まるものではない。
「いつも通り、デバフ山盛りでいこか」
「頼んます」
探索補助ツールであるライヴギアは、それぞれに向き不向きがある。紙は戦闘、機械は探索、液体は工作や諜報に長ける……骨はかなりのオールラウンダーであり、石もそれに準ずるものの、とくに秀でると明言できる分野はとても小さい。
箱や樽を連ねたピエロのような星霊〈バッコス・グレイル〉は、確認されている中ではもっとも「やりやすい」敵だ。攻撃を受けるたびに部位が損傷し、破壊されるとバフ効果のある液体を噴き出す。乱痴気騒ぎの象徴とも言えるような神は、プレイヤーたちにも悦楽を振りまくのだ。
オルルはライヴギアを組み換え、メンバーを放り出すと同時に、奇妙なオブジェを作り出した。真ん中から割ってずらした八面体のような結晶体から、散乱するムチ状の光線が放たれる。
「よし、速度低下入った!」
「じゃあ破壊いきますねー」
ライブルとヴェンの使う機械のライヴギアは、あれこれと複雑な機構を組み込まれ、「ディノンハウル」という大仰な名前までついているが……結局のところは、単なるショットガンである。武器カテゴリにも「銃器」はあるが、弾丸を用意する手間を考えれば、エネルギー弾の方が効率がよい。
「実弾使っていいか?」
「ロマン砲は決まるときに撃つの。わかるね?」
「そっか……」
「そんなに賭ける場面じゃないだろ」
いつでも撃ちたがるライブルをいさめて、ヴェンは義眼を起動させる。視界の色がわずかに暗くなり、照星がすっと現れる……狙うべき箇所が深紅に光り、攻撃してはならない場所がどす黒い紫で染まる。
「弱点変化なし。タガと木の隙間ね」
「楽させてくれるなぁ、さすが酒の神様」
ショットガンは、ライフルや矢ほどきっちりと一点を狙えるわけではない。しかし、魔法を撃つよりもピンポイントで、かつ小さな弱点への複数ヒットを狙える。精密狙撃を当てる技量がなくとも、一点集中での部位破壊をしやすい。いわゆる野良パーティーや、同じカテゴリの武器を持った複数人で運用するには、ちょうどよい代物だった。
五発、六発と当てていくとすぐさま腕は破壊され、バシャバシャと酒が撒かれた。アルコールの匂いと果物の香を合わせたような、いかにも「美酒」といったふうな芳香が場に満ちる。
「ワインってこんな匂いなん? めちゃ美味そうなんだけど」
「お酢と味噌の匂い合わせた感じや。ええもんちゃうで」
「オルルさんワイン嫌いすぎでしょ。いい匂いじゃないけどさ」
「日本酒のがいい匂いだよねぇ」
巨大なパワードスーツを着込んだD’arCは、続けて「第二形態来るよぉ」とあごをしゃくる。宣言通り、崩れゆく箱や樽からあふれ出した酒はストックが尽き、中央に配置されていた酒杯からツタが吐き出されていく。
「こっちはまた……固ったいな」
「あかんか」
ヴェンの義眼に映る敵は、全身が同じ色をしている――どこを攻撃しても同じようなダメージが出る代わりに、どこにも弱点がないということである。そして、この〈バッコス・グレイル〉の弱点は赤属性であった。
「あーやばい、横と混じった!」
「しゃあない。手ぇ貸してもらおうや」
闖入者がやってきた――ひそかに狙いつつも諦めていた〈カイリ〉が。




