120話
前やってた「詰まったら視点変える」をやることにしました。一般プレイヤーのお話ぜんぜんやってないし……
どうぞ。
イベント予告に合わせてログインしたメンツは、いつもの顔ぶれだった。どうやっても住民が利用しているようには見えないベンチに、五人ほどが座っている。噴水広場を通りがかるプレイヤーは多く、横のつながりがあるものは情報交換もする。こういう目立つ場所にいることには、それなりにメリットもあった。
さっと見回した「たどん」は、「ヴェンとD’arCとオルルとライブル……」と数えて、首をかしげた。
「今日ディートおらんの?」
「リア友とメシ行くって言っとったわ」
「それはしゃーない。リアル大事よ」
「ほんそれ。ちょい火力下がるけど、ママエアロ」
ゲームとメタバースが限りなく近付いた昨今、メタバースである〈NOVA〉と、その下部ステージになるオンラインゲームに昼夜を問わず入り浸っている人間は少なくない。早期リタイアした中高年やパートナーに先立たれた壮年以降の人々、若年層からは引きこもりやニートも多くいるが……彼らに共通した認識がひとつあるとすれば、「リアルは何より大事」だろう。
年齢が上がれば上がるほど、現実への復帰は難しくなる。だからこそ、現実の比重が大きいメンバーはより現実にいるべきだと考えられており、復帰以前に、依存させないことを前提にしたアドバイスが為される。
「星霊が降りてくるんだって?」
「そうそれ、今までは手順クソめんどかったじゃん。シュウイ平原出るだけでいいのは、マジ助かる」
「相性で狙えるの誰かなぁ。データにあったの誰だっけ」
「ウンディーネとユニコーンとサラマンダー、オリキャラっぽいのは〈カイリ〉〈トモガラ〉〈ロ・ザイ〉やね。青主力ばっかやさけ、サラマンダーか〈ロ・ザイ〉がええわ」
別キャラを作る気満々のオルルは、いつものように関西弁丸出しで言った。属性相性でのダメージ増加/減衰値は20%である。耐性のない属性だと100%がそのまま通るが、同属性だとダメージは80%になる……モンスターは術師タイプでも物理ステータスが高いため、属性相性が悪い術師タイプ同士の戦いでは、どうしてもプレイヤーが不利になりがちだ。
「物理欲しいんだよね……〈カイリ〉、ダメかな」
「フルアタで物理やるんは自殺行為やで。連結でやれそうやったら狙う、っちゅうんでアカンか?」
「あぁ、確かに。だいたい周回した方が効率いいし」
「だねぇ。回れないのがいちばん問題だった」
仲間にした星霊が多ければ多いほど、新しいスキルを手に入れたり、既存の特技を使いやすくなったりといったオプションが得られる。これまでライブラリ・アースに行かなければ戦うチャンスすらなかったが、その制限は消えた。
「おっ、メッセ入った! 人足りないくらい出まくってるって!」
「ええなぁ、行こか」
オルルの出した岩石が力場を発生し、五人を捉えて即席の乗り物を構成した。
「こんまま突っ込むさけ、得物出しといてや」
「おぅけぃー」
ぐん、と猛烈な加速が全員を襲った。
メンバーの名前は全員「きたない/よごれてる」モチーフ。オチは決まってるから時間かけずに抜け出してぇ。




