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【更新停止中】アクロス・ザ・ナギノクイント  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 みゆきひらひらふるるよる
118/191

118話

 いろいろ書いて精査して潰して、あとゲームやって……まあちょっとその、遅れました。


 どうぞ。

 数値以上に中身で強さが決まるVRMMOで、攻略するルートを決めさせるにはどうすればいいか。それ以前のゲームで用いられてきた、地形を変えたり封鎖したりといった手段も使われているが……それ以上に強い敵を配置する「外れルート」方式がいいらしい、というのが都市伝説的に伝わっている。


「それで、……その刀でやるのか」

「今は、これともうひとつしかなくて……」


 補給のために紙を扱っているお店に来たのだが、そのまま戦闘に突入してしまった。結界テープを大量に消費する〈調弦の型〉は当然使えないし、アズラ・モメントは在庫がなさすぎるから〈裁刀の型〉もギリギリにならないと使わないつもりだ。


「どうだ」

「やれなくても、帰ってきますよ」

「あんたも志願者(ソルド)だってことかい」

「ええ、まあ」


 それなりにゲームをやっている身からすると、ゾンビアタックは時間の無駄だ。きちんと勝てるスペックを身につけてから来るのが普通だし、消費するものがある場合ははっきり悪手だと言ってもいい。今回はフラグが立っているようだから、おそらく勝てるのだが……思い返すと、これまではバカをやりすぎていた気がする。




 見やると、符蛆はあぐらをかいて座っていた。


 道場めいた六角形の部屋に、壁紙の模様のように、規則的にお札が貼られている。符術で見た結界の文字と同じなので、地形を破壊不能にするためのものだろう。


「得物はなんでしょう」

「あんたと同じだ」

「なら、楽ですね」

「そうかい? 手練れらしいとは思っていたが」


 近付く前に、戦術を組み立てる――と言いたいところだが、〈割鉈〉と〈柳尾〉以外は使えないので、機を見て切り替えるくらいしかできそうにない。これまでかれらに負けてきた理由は、単純なステータス差以上に、相手の技術が異様に優れていたところにある。それに、長物の扱いが達人クラスの敵は、ほかのゲームにはあまりいなかった……俺自身が対応に慣れていなかったこともある。


 足音が聞こえたのか、ぴくりと反応したのが分かった。


「きたか」


 ごく小さな、しかし確かに耳に届く声。


「しゃべった……!」

「どうした。そういうもんだろ」

「こっちに分かる言葉で話してるんですよ!」

「ほかは違うのかい」


 機械は倍音混じりのゴロゴロ声だし、符蛆はがさがさしたノイズまみれの謎言語でしか話さない。かなり特殊なクエストなのだろう、と推測できた。


「おのれのわざをみがくにも、ときがたらぬでな。たましいをうれば、ときをこえてすべてをきわめられるときいた。……すこし、ながかったが」


 古書のように色褪せた、浪人風の紙人形は、さっと手を伸ばして純白の刀を作りだした。そして、刀を混沌の色に染める。


「きさまがかみをつかうのであれば、このわざもあたいせんきんとはんぜよう。わしにかてば、ひとのみでこのわざをつかうちからをあたえようぞ。ひらくべきみちをためるもよし、かみひとえでつかみとるもよかろう。ぐをとがめるものもないぞ、さあ」


 属性付与か、属性変更か。どちらにせよ、とんでもないスキルだ。


「手合わせ、お願いします」

「よかろう」


 後ろで見守っていたサブロウザさんも、俺に並ぶ。真っ赤に変わった刀を鞘に収めるように構えて、敵は笑った。


「いざ」

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