109話
noteの方でいろいろ書いたり、新作を書いたりしていました。
どうぞ。
ブレイブがいくつかと、時間もそれなりに必要となると、今のところは保留になる。
「案内していただいて、ありがとうございました」
「ううん、いいのよ。なかなか面白い時間だったし」
ちぐはぐでつぎはぎ、SFにあるまじきおかしな街に見えるけど、本来の機能はきちんと成立している。天耀さんは、この奇妙さを気に入っているようだった。
「旦那の部屋がね、こういう感じなのよ。自作の家具なんか作って、多趣味だからいろんなものも置いてね。カオスだってよく言われてるけど、ああいうとこが好きなの」
「ほんとに大好きなんですね。そういう顔してますよ」
「あら、年甲斐もなくのろけちゃったわね。あ、そういえば」
「ん、なんですか?」
ざいろぷと仲良しだったのね、とやや不思議そうながら微笑んでいる。
「そういえば、そうなんですよね……。いろいろあったんですけど、パーティー組んだりとかも。強いですよ、二人とも」
「そうよね。あの子たちが謙遜するなんて、って思ってたけど、完全に……もしかして、倒したことあるのかしら?」
「あ、あはは……」
「あらら、チェーンソーくんに巻き込まれてとか?」
くちびるに指を当てて、てきとうにごまかしておく。
キャラクリエイトをやり直して容姿は変えたものの、ザイルが闇バイトに協力してしまっていた、という事実は消えない。けれど、俺はその情報を拡散するつもりはなかった。引退やキャラデリなどの実害が発生する前に被害は食い止められたし、首謀者が逮捕されてすべては終わった。
加害者だからと未来すべてを失うほど追い詰めるつもりもないし、報復じみて過剰な奉仕や賠償をさせるのもおかしな話だ。プラスマイナスゼロになれば、話はそれで終わりでいいはずだ、と……少なくとも俺は思っている。殺し合い以外興味がないゾードは「知らねぇよ」と言うだろうし、過去に被害に遭ったファラさんも「あいつが人生終わったんだしいいじゃない?」と言い放って、それで会話が終わった。
「そういえば、ザクロちゃんの目標って何かあるの?」
「けっこう、倒し損ねた敵がいるんですよ。リベンジするつもりです、……まだちょっと自信ないですけど」
「そう。プレイヤーじゃ敵わないくらい、ってことなのね」
「あれは一人で倒したいんです。できるだけ」
あの機械のイカは、とんでもない強さだったと思う。パーティープレイだったとしても、あれほど多彩な攻撃手段には対応できる気がしない……というより、メンバーがそれぞれに完璧な対応をする、くらいやらないといけない。
「先に倒されちゃったらどうするの?」
「もちろん倒しますよ。二回目でも」
オリジナルが存在していることは、ワールドシミュレーターで言えば確かにすごいことだけど……ドロップアイテムの差はないはずなので、話すはずだった内容が聞けない、くらいしか問題はないだろう。それが一番大きな問題だし、ぜったい一番に倒したい理由だが、ギリギリ諦められる。
「闘志って感じの顔ね。いちおう応援しとくわね」
「がんばりますよ。できることも増えましたし」
次の新装備が手に入ったら、やってみる――唐突な思いつきだけど、ほかの人が強くなるスピードだって速い。この機会を逃してしまうのは、セーブデータが勝手に進められているようなものだ。
「ちょっと狩りしてきます」
「岩石系倒すといいわ、たまーに遺物出るから」
「はい!!」
「ふふふ、いってらっしゃいな」




