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【更新停止中】アクロス・ザ・ナギノクイント  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 みゆきひらひらふるるよる
107/191

107話

 情報収集や考えの整理に時間がかかっていました。詳しくはあとがきを読んでください。


 どうぞ。

 最初に解放された街「サリディス」は、建築様式を無視して、たくさんの業者がとにかく何でもかんでもを建てまくったような……かなりむちゃくちゃな風景だった。壁や屋根だけを見ても、色や模様がばらばらだ。


「うわー……なんかすごいけど、何なんだろう」

「あら。ザクロちゃん、だったかしら?」


 声の方を向いてみると、いつだったか見た人がいた。


「お久しぶりです……えっと」

「テンヨウよ。天のかがやきって書いて、「天耀」。この前は名乗ってなかったわね」

「よろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ」


 フィールドボスとして登場した「ロストエイジ・サウザンドショーグン」を倒した後に、たくさんいた人のひとりくらいに思っていた。たしか「配信はやってないの?」と言われたような記憶がある。演歌歌手みたいな豪奢な着物の女性で、とても配信の窓をいくつも見ているオタクには思えない。


「ここね、前線基地の補給拠点だったみたいなのよ。だからほら、あれ見てみなさい」

「あっ、武器が売ってる!?」

「すごいでしょう。かなり粗い造りみたいだけど、それだけでもすごいことよ」

「これまで、ちょっとわざとらしかったですもんね」


 そうなのよ、と天耀さんは苦笑する。


 ライヴギアの部品には、明らかにふつうの使い方ができないものがある。骨なんて日用品に含まれていないし、絵だって道具ではないと思う。ゲームを始める街という都合で売られていたようにも思えるし、ヘスタという場所の特異性なのかもしれない。


「でも、そうね……『ナギノクイント』の武器がどんなものなのか、試してみるにはいいかもしれないわ。単純な武器ほど強いわよ」

「武器かぁ……遺物扱い、じゃないんですよね」

「根本的に違うわ。ちょっと武器の歴史になるんだけど、いいかしら?」

「え、はい」


 語りたいタイプらしく、天耀さんはにこにこと話し始めた。


 この『ナギノクイント』世界の武器は、「完全遺物=バリアス」が本来の姿らしい。しかし、現在では生産されていない……というより、技術がほとんど失伝しているようだった。


「個々人に応じて形が変わる、スキルと特技が付与される、とんでもない武器だったみたいね。魔法のようなって言われるだけはある、ライヴギアよりはるかにすごいものだったんじゃないかしら」

「私が持ってるのは、こんなのなんですけど。どういうものなんでしょうか」


 単なる錆びた棒のような、どうやったら武器になるのか想像もできないようなしろものだ。復元前の「不完全遺物」だけど、完全だったらどうなのか、どんな能力が生えてくるのか、考えもつかない。


「復元前じゃあダメね、少なくとも形だけは整えておかないと。復元にも段階があってね、形がもとに戻っただけじゃスキルは復活しないの。ブレイブを消費して、生体エネルギーとのリンクを確立させなきゃいけないのよ」

「そこまでするんですね……」


 四人パーティーの一人が完全遺物を持っていたが、そこまでリソースをつぎ込んでいたとは思わなかった。


「どうせだから、形だけでも戻せるところに行きましょう。案内するわ」

「ぜひ!」


 いつの間にか引っ込んで黙りこくっているノイスを放って、俺は天耀さんについていった。

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