107話
情報収集や考えの整理に時間がかかっていました。詳しくはあとがきを読んでください。
どうぞ。
最初に解放された街「サリディス」は、建築様式を無視して、たくさんの業者がとにかく何でもかんでもを建てまくったような……かなりむちゃくちゃな風景だった。壁や屋根だけを見ても、色や模様がばらばらだ。
「うわー……なんかすごいけど、何なんだろう」
「あら。ザクロちゃん、だったかしら?」
声の方を向いてみると、いつだったか見た人がいた。
「お久しぶりです……えっと」
「テンヨウよ。天のかがやきって書いて、「天耀」。この前は名乗ってなかったわね」
「よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
フィールドボスとして登場した「ロストエイジ・サウザンドショーグン」を倒した後に、たくさんいた人のひとりくらいに思っていた。たしか「配信はやってないの?」と言われたような記憶がある。演歌歌手みたいな豪奢な着物の女性で、とても配信の窓をいくつも見ているオタクには思えない。
「ここね、前線基地の補給拠点だったみたいなのよ。だからほら、あれ見てみなさい」
「あっ、武器が売ってる!?」
「すごいでしょう。かなり粗い造りみたいだけど、それだけでもすごいことよ」
「これまで、ちょっとわざとらしかったですもんね」
そうなのよ、と天耀さんは苦笑する。
ライヴギアの部品には、明らかにふつうの使い方ができないものがある。骨なんて日用品に含まれていないし、絵だって道具ではないと思う。ゲームを始める街という都合で売られていたようにも思えるし、ヘスタという場所の特異性なのかもしれない。
「でも、そうね……『ナギノクイント』の武器がどんなものなのか、試してみるにはいいかもしれないわ。単純な武器ほど強いわよ」
「武器かぁ……遺物扱い、じゃないんですよね」
「根本的に違うわ。ちょっと武器の歴史になるんだけど、いいかしら?」
「え、はい」
語りたいタイプらしく、天耀さんはにこにこと話し始めた。
この『ナギノクイント』世界の武器は、「完全遺物=バリアス」が本来の姿らしい。しかし、現在では生産されていない……というより、技術がほとんど失伝しているようだった。
「個々人に応じて形が変わる、スキルと特技が付与される、とんでもない武器だったみたいね。魔法のようなって言われるだけはある、ライヴギアよりはるかにすごいものだったんじゃないかしら」
「私が持ってるのは、こんなのなんですけど。どういうものなんでしょうか」
単なる錆びた棒のような、どうやったら武器になるのか想像もできないようなしろものだ。復元前の「不完全遺物」だけど、完全だったらどうなのか、どんな能力が生えてくるのか、考えもつかない。
「復元前じゃあダメね、少なくとも形だけは整えておかないと。復元にも段階があってね、形がもとに戻っただけじゃスキルは復活しないの。ブレイブを消費して、生体エネルギーとのリンクを確立させなきゃいけないのよ」
「そこまでするんですね……」
四人パーティーの一人が完全遺物を持っていたが、そこまでリソースをつぎ込んでいたとは思わなかった。
「どうせだから、形だけでも戻せるところに行きましょう。案内するわ」
「ぜひ!」
いつの間にか引っ込んで黙りこくっているノイスを放って、俺は天耀さんについていった。




