106話
ちょっとうn……あれですね。
どうぞ。
イベントが始まった合図が、遠く遠く響き渡る。
「何のイベント?」
『俺たちにはそういう情報は来ないんだ、マイマスター。そっちで見てくれ』
「そうなんだ……えっと」
メールの欄を見ると、新着ほやほやのメッセージが届いていた。
[イベント更新のお知らせ
情報がじゅうぶんに蓄積されたため、通常マップにも星霊が登場するようになりました。仲間を誘って攻略し、新たなパートナーや強力なアイテムを手に入れましょう!]
「来てるけど、そんなに大したことじゃないかなぁ。アストが通常マップでも出るようになったんだって」
『ほお。一体しか出せないんだったな、オレはお役御免かァ?』
「ハッキングできる星霊がいたらね」
『カカカッ、そこは誰にも譲らねェぜ? “機械をハックする”ってェ伝承なんざ、「グレムリン」くらいしかねェからなァ』
あるんだ、とちょっと首をかしげながら、先に進む。
腐朽死街から先に行くと、多肉植物と何かの金属が顔を出す「銀骨荒野」に着く。どうやらヘスタと同じ文化を持つ街だったようだけど、より激しい侵攻に遭ったのか、建物の原型はほとんど残っていない。シュウイ平原にあるものよりも損壊の度合いがひどくて、地名で骨にたとえられるそれは、文字通り建物の亡骸のようにさえ思えた。
平原にあったのは高層ビルのようだったけど、ここの辺りにある残骸はかなり防壁めいていて、砦かシャッターに見える。指の跡が残っている、どうやら手の力だけでこじ開けられたらしい巨大な板は、厚さも十センチくらいあるし、錆びひとつない鋼材で構成されている。
「ノイス、ここに生きてる機械ある?」
『遠いな、あっちの街じゃねェかと思うぜ。生体反応はオレの専門外だ』
「そっか。じゃあ、見えてるものが機械じゃないから、ってことだったんだね」
『ま、そういうことになるな。何かしら電波を放ってりゃあ、そいつを解析して何者か探れるんだがね』
得意分野がはっきりしているから、求められる状況が分かりやすい。使う方としてすごくありがたいし、切り替えにもためらわなくて済む。
「素材集め……くらいしか、することなさそうだね」
『切り出すのは難しそうだな。そもそも何なんだこれは』
そういう機能はないのか、とくに解析はできないようだった。
とりあえずで丸っこいサボテンもどきや手ごろなサイズの金属片を拾って、インベントリに入れる。つるはしを振るうよりも簡単に手に入るけど、アイテムのランク自体はそんなに高くない。
『マイマスター、そんなつまらないもの集めてどうするんだ』
「案外、つまらないものの方が勝ったりするもんだし。ノイスは何か気にならないの?」
『あの馬鹿でかい鋼板、あれは良さそうだぜ。相当強い素材になると思うんだが……持って帰れるやつにしか使えねェってことかね』
「それはそうだと思うけど」
ノイスは機械ボディなので、金属素材を欲しがっているのだろう。それはそれとして、取れないものを欲しがっても仕方ない。採取のために買う道具では対応していないみたいだから、ライヴギアなら壊せるのだろうか。
「じゃあ、街だね」
『お気に召すといいがね』
あんまりにも時間が空き過ぎたので、『ナギノクイント』を読み返して時系列や地理を確認したりしていました(無能)。水着シーズンに季節合わせられないかなと思ってたけど無理そう……やばい。まだまだTS要素を活かしたお話がしたいので、とりあえず現実パートのネタを消化するまでは書かなければ。
新作はまあ……とりあえず書きまくっていちばん書けそうなネタをやるのと、真面目にプロット作りする段階に入っています。「こういうことしたい!!」はあとで混ぜてアレすればいい気がしてきた。




