105話
どうぞ。
お試し程度の攻撃をすべて止められた敵は、今度は刀ではなく双剣あたりのそれらしい特技を放ってきた。燃え盛るオレンジ色のカマが躍り、白銀の輝線と切り結ぶ。
「また双剣の特技も習得しとくかー。ノイスに渡したら強そうだし」
『気前がいいねェ、ぜひ頼むぜ』
くるりと丸めたムチで〈サーペント・スパイラル〉を放って、機械ワームをきりもみ回転させる――が、もとから地中にいるモンスターだからか、とくに動作が変わることはなかった。
また飛んでくる魔法を〈調弦の型〉で放つ〈弓張月〉で受けて、相殺ではなく侵攻させる。直接の戦闘能力と砲撃手段まで兼ね備えているとなると、惑星探査ツールというよりも兵器に思えるが……ゲームの都合上、ほとんどのプレイヤーは戦ってばかりなので、俺が言うのも筋違いだろうか。
「ノイス、敵の型番とかって分かるかな?」
『こいつァライヴギアだろ? あっちゃこっちゃのパーツをごちゃ混ぜして再利用してるもんじゃあ……いや』
「どうかした?」
『ぶっ壊してからの話だが、それ以外のデータは読めるかもしれねェぜ』
それ以外というのが何か分からなかったけど、大詰めに差し掛かっているのは分かる。べんと鳴らして〈啾々たる結び〉で攻撃を止めさせてから、〈ウロボロ・スフィア〉をさらに展開して鈍らせる。
キリキリと奇妙な音を立てはじめた機械ワームは、前に見た骨の恐竜のように展開するのではなく、装甲の隙間という隙間すべてから光を放ち始めた。
『やべェなあ、こりゃ』
「大丈夫、こうする」
型を保てるギリギリまで結界テープを使い、機械ワームを真っ赤な球体に閉じ込める。すでに攻撃をやめた敵は、〈サイドワインダー〉で巻き取られて無抵抗で放り投げられ、ころころと砂地で転がったあと大爆発した。
動きも音もないけど、慎重に近付く。
「反応ある?」
『魔術媒体を全部使って、誘爆で威力を上げたみてェだな。エネルギー系統が死んでるから、理屈の上じゃ動かねェよ』
「ライヴギアの仕組み上でも?」
『脳波制御だっつってんだろ、マイマスター。生体エネルギーを分けて構築、脳波で制御。基本だから覚えといてくれよな、馬鹿は嫌いなんだ』
そもそも聞いたことがなかったので、「覚えとくね」とうなずく。
『やっぱし型番はバラバラだよなァ……符術の方は燃えちまってて分からんが、機械の方はどれも正規の部品だ。名前は「PL:サンドリーパー」だと』
「え、PL……Nは?」
『ない、な。じゃあこいつは、「パーソナライズド・ライヴギア」……!?』
「やっぱり、操作してる人が――」
そのとき、鐘が鳴った。




