102話
一話の半分くらい書いたのに、謎の再起動が入ってぜんぶ消えて書き直しました。まあ謎グルメが生えてきたのでよしとしておき……いやネトゲ中も入るのは許さんぞお前。
どうぞ。
フィールドに出て、いつもの方角に歩く。
崩れ去った都市の跡地が地面に半分埋もれている「腐朽死街」は、サイボーグや機械が出てくる序盤の狩場だ。ライヴギアのもとになった技術のこと、そしてこの世界の歴史のことを考えると、最初の街「ヘスタ」は機械が発達した文明の名残らしい――深く考えなくても分かることだが、それ以外のものがどうなっているのか、そこが問題だ。
だいたいのゲームだと、街の周辺は四方に分かれている。一方の『ナギノクイント』は、シュウイ平原から腐朽死街のルートと、ヘスタ地下からひたすら下っていく「グレートウェブズ」を攻略していくダンジョンっぽいルートだけ、らしい。街の反対側は環境保護区で、決められた地区以外に入っただけでも抹殺される、かなり危険な場所なのだそうだ。
攻略ルートが決められているなんて、いまどきのゲームにしてはずいぶん不自然だけど、理由はなんとなく想像できる……いくらでも出てくる敵は排除したいが、街の食糧事情を支えている資源を乱獲させるわけにはいかないからだろう。サイボーグに食べられる部分があるかどうか、志願者の方で試してほしいから、という理由も入っているかもしれない。
屋台風のキッチンカーで売っているラインナップはちょくちょくアップデートされているみたいなので、少なくともダンジョン産のサイボーグ恐竜とか、このあたりにいるワームはかなり美味しいみたいだ。
さっき買ってきた「地中揚げ」を手に持っていたままだったので、かじる。
「あ、けっこういける……なんか肉味のポテチっぽい?」
あのワームの詳しい種類は分からないのだが、外骨格の内側や口付近の触手はほぼ筋肉で、可食部だとアイテムの説明にも書いてある。ワーム肉を素揚げして塩を振っただけの屋台メニューは、立ち食いにもちょうどよかった。豚肉と鶏肉の中間みたいな味で、ポテトチップスみたいにバリバリ食べられる。あのワームだと思いさえしなければ、かなり美味しい。
手近にあったバイクの残骸に腰かけて、もう一本あった串も平らげる。わずかな振動を感じて、ワームが泳いできたかなと前方を確認すると、それっぽい地面の盛り上がりが見えた……が、唐突にベコッとへこんで消える。
「あれ? 新顔、じゃなくてヌシとかかな」
へこみを見ていると、砂をかき分けてシュモクザメの頭のような三角形が出てきた。金属質の装甲板は、どう見てもNPLのそれだ。
「機械は「標準動作」が設定されてる、って言ってたっけ……」
『おいおいマイマスター、こういうのと戦うときに出してくんなきゃあオレの出番がねェじゃねェーかよ?』
「ありがと、今頼もうと思ってた」
『なかなか速そうだが、やってやろうじゃねェの』
剣を着込んだ花嫁のようなノイスが出てきて、敵が繰り出した左右のカマのワンツーと切り結んだ。
『あいつらには悪いが、こいつが最初のテストってことにさせてもらおうかァ!』
かなり失礼なセリフとともに、火花が幾度も散った。




