戦士の兄
ある日、カルマにとって嬉しい知らせが来る。
カルマの兄ダグラスが近々久しぶりに帰ってくるのだ。
「よし、兄さんが帰るまでに使える魔術を増やすぞ!」
カルマは嬉しくなって意気揚々と家をでる。
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約一ヶ月後、カルマが家族と食事をとっていると、カルマの兄ダグラスが、勢いよく扉を開けて帰ってきた。
「兄さん!!」
「おお、カルマ大きくなったな。」
ダグラスはいかにも屈強な戦士という見た目で、高い上背にがっちりとした体格、着用している鎧の間から鍛え抜かれた筋肉が見えている。
カルマはそんな16歳離れた恰幅の良い兄の飛びつく。
「兄さん!お帰りなさい。僕、色々話したいことがあるんだ!」
「まぁ、待て、カルマ。あとで時間を取るからな。」
ダグラスは優しくカルマの頭を撫でた。
「そうだぞカルマ、兄さんは帰ってきたばかりなんだ。また後にしなさい。」
ダグラスを大荷物を床に置いてバトロフとティニエの元に向かう。
「お父さん、お母さんただいま戻りました。」
「ああ、よく戻ったな。疲れただろう。ゆっくり休みなさい。」
「お湯を沸かすわね。少し待ってて。」
「ありがとうございます。お母さん。」
カルマはダグラスに話しかけたい気持ちを抑えて席につき、ダグラスと両親の会話を聞いていた。
ダグラスは昔から父母に対して敬語を使う。
カルマは不思議に思ったことはあるが、その光景に慣れていた為、今では気にならなかった。
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カルマは食事を終え、ダグラスを待つ間、居間で魔導書を読んでいると、ダグラスが入ってくる。
「待たせたなカルマ、少し外にでもでるか。」
カルマはそれを聞いて嬉しそうに立ち上がった。
「うん!!」
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カルマとダグラスは町外れの草原にやってきた。
「カルマ、お父さんから聞いたが魔術を使えるようになったんだって?」
「うん、たくさん練習したんだ!」
「兄さんにも見せてくれないか?」
「いいよ、見てて」
カルマはノーリエからの知識と独学によって既にいくつもの初級魔術を習得していた。魔術には火や水、雷などいくつかの属性があるが、特に火の魔術に関しては4種の魔術を扱うことができた。
「行くよ兄さん」
カルマは草原の真ん中まで行くと手をかざす。
火花
※発火し火花を起こす魔術
火の玉
※炎の玉を放つ魔術
氷の鞭
※鞭状の氷を操る魔術
範囲氷結
※一定範囲を凍り付かせる魔術
「どう?まだいくつか使えるものもあるんだよ!」
それを見たダグラスは唖然とした。
その魔術は一般の魔術士が扱うものと遜色がないレベルであった。
決して難しい魔術ではない。初級の基礎魔術だ。
だが、それは"魔術士にとっては"という意味だ。
10歳未満の少年が独学で習得できるものではない。
それをカルマは複数個操ることができるのだ。
ダグラスは弟を天才だと思った。
「すごいな…カルマ」
「そうでしょ!頑張ったんだよ。」
「さすがは俺の弟だ。お前は将来すごい魔術士になるかもしれないな。」
カルマは嬉しそうに笑った。
「そういえば兄さんは魔術は使えないんだよね?」
「ああ、俺には剣の才能はあったようだが魔術はからっきしでな。魔力がわずかにしか無いんだ」
「兄弟なのに不思議だね。」
「あ、ああ……そうだな。」
ダグラスはカルマの言葉に少し戸惑った様子を見せた。
〈頭の中の整理用 メモ〉
ダグラス・ミラ・フィーラン
= カルマの兄で有名な剣士。
カルマの兄だが魔術は扱えない。




