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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
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兄として、戦士として


 「そうだ、次は剣を見てやろう」


「剣はまだほとんどやってないんだけど」


「それでもいいさ。練習用の木剣を持ってきてくれ」



 その後、二人は草原で向かい合った。

 乾いた木剣の音が、静かな風景に響く。


 軽い打ち合いのはずなのに、カルマはすぐ息が上がった。

 それでも楽しい。兄と並んで立てる時間が嬉しかった。


「そういえば兄さん、最近変な夢を見るんだ」


「夢?」


 打ち合いを続けながら、カルマはあの夢の話をした。

 知らない家、優しく笑う女の人、何かを言い返して家を飛び出す自分。


 話を聞き終えたダグラスは、少し考えるように目を細めた。


「それは回憶夢レクイムだな」


「なにそれ?」


「迷信みたいなものだ。だがな……何か大切なことを忘れている時、人は同じ情景の夢を繰り返すと言われている」


「大切なこと……?」


 カルマは首を傾げた。


「心当たり、ないんだけどなぁ」


「そうか」


 ダグラスの声は穏やかだったが、その目はどこか遠くを見ていた。


「大切なことほど、人は無意識に目を背ける。思い出せる時が来たら……その時は逃げるな」


「うん、わかった!」


 カルマが笑った瞬間。


「隙あり」


「わっ!」


 木剣が弾かれ、カルマは尻餅をついた。


「やっぱり兄さんは強いなぁ」


「いや、カルマは剣の筋も悪くない。身体の使い方もいい。訓練すれば、必ず強くなる」


「本当!?」


「ああ。本当だ」


 その言葉はまっすぐだった。

 だが同時に――逃げ道のない“期待”でもあった。



 二人は草原に座り込み、風に揺れる草を眺める。


「兄さんは戦士としてどんな仕事をしているの?」


「主に上級以上の任務だ。魔獣の討伐、魔人の掃討……危険な仕事ばかりだな」


「へー!やっぱりすごいなぁ」


 無邪気な尊敬に、ダグラスは少しだけ目を伏せた。


「だが、俺の本当の目的は別にある」


「目的?」


「ああ」


 ダグラスの拳が、ゆっくりと握られる。


「緋眼の魔人を倒すことだ」


 その名に、カルマの胸が小さく痛んだ。


「緋眼の魔人はこれからも人を殺す。街を壊す。罪のない命を奪い続ける」


 声は静かだった。

 だが、その奥には燃えるような怒りがあった。


「神嶺様の封印が解け、奴が完全な力を取り戻せば……この世界は終わる。今しかないんだ」


 カルマは俯いた。

 自分の左目の奥が、じくりと疼く。



 ダグラスは膝をつき、カルマと視線を合わせた。


「カルマ。よく聞いてくれ」


 その声は、兄の声だった。

 だが同時に、戦士の声でもあった。


「その目のことで、苦しんできただろう」


 カルマは何も言えない。


「だがな……俺は確信した」


 力強い手が、カルマの肩に置かれる。


「お前の魔術の才能。剣の筋。そしてその赤い目」


 逃げ場のない言葉が、静かに積み重なる。


「剣士ダグラスの弟に生まれたお前は、きっとこの世界を救う運命を背負った子だ」


 カルマの胸が熱くなる。

 怖さも、不安も、その瞬間だけは消えた。


「強くなれ」


 その言葉は、優しい願いの形をしていた。


「そして俺と共に、緋眼の魔人を討ち果たしてくれ」



 その時、カルマの脳裏にローブの魔術師の姿がよぎる。


 ――強くなれ、運命の子よ。


 同じ言葉。


 だが今は、それが誇らしく感じた。


 緋眼の魔人の憎しみも、強さも、まだよく分からない。

 それでも、多くの人が苦しんでいることは知っている。


 そして何より――


 尊敬する兄が、それを止めようとしている。


 なら、自分も。


「うん、兄さん」


 カルマはまっすぐ頷いた。


「僕、強くなるよ」


 その言葉が、どれほど重い意味を持つのかも知らずに。


 ダグラスは微笑んだ。


 その笑顔は優しくて、誇らしくて――

 そしてほんのわずかに、痛みを隠していた。

〈頭の中の整理用 メモ〉

カルマの兄 ダグラスの目的は

緋眼の魔人と緋眼の魔人が率いる魔人軍を打ち倒すこと。

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― 新着の感想 ―
一先ずここまで拝読いたしました! カルマの目がこの先どのように物語に影響を与えていくのか、どのように成長していくのか…楽しみです。 一話一話が短めなのでサクサク読めました! ☆も入れさせていただきまし…
いよいよ盛り上がってきましたね。ここから先の展開が楽しみなる回でした!
Xより参りました。 少年カルマの運命を大きく左右する象徴として描かれている「緋眼」という特異な特徴に得も言えぬ興味を抱かされました。左目に赤い瞳を持つという、それだけのことで、彼は生まれながらにして…
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