ルードミリシオンへ
「よし、では下山する。下りは更に早いので捕まっておけ。」
ランダロス達ベルベストタイガーが、白銀の斜面に一歩踏み出した瞬間、世界が一気に動き出す。雪を蹴るたび、粉雪が舞い上がり、冷たい空気が肺の奥まで流れ込んだ。
ランダロスが言うように、下りの道のりは更に早く、険しいものだった。
岩肌をとびこえ、直角の岩壁を走り、深い雪をものともせず走り抜ける。
「ランドロスはなぜ人間の言葉を話せるの?」
「……500年も昔のことだが、アリアという召喚術士がいた。
彼女は我を含む各地の魔獣と契約していた大召喚術士だが、彼女は自らの利益の為に我らを召喚することはなかった。」
「じゃあ何のために召喚契約をしていたの?」
「……ふっ、我らと"友達"になりたかったそうだ。
そんな彼女は各魔獣と対話を行えるようになるために、それぞれの魔獣の言語を覚えようとしていた。」
「そんなことできるの?」
「無理だな。だが、彼女は諦めなかった。何度も何度も我らの声を聞こうとしていた。
我はそんな彼女の思いに応えようと思い始めた。
それから数十年、人間語を練習し話せるようになった。各種族の魔獣の言葉に比べれば、人間の言葉など、単調で簡単だ。」
「まぁ、人間語を話せるようになった頃、アリアは死んでしまったが……」
「そんな……」
「わはは、そんな暗い話でもない。
そもそも人間の寿命など我からすれば、ほんの僅かなものだ。それにもう500年も前の話だしな。」
「でもこうしてランダロスと話ができるのも、そのアリアって人のおかげなんだね。」
「まぁ、そういうことだ。そう意味では、人間の言葉を覚えたことは悪くはなかったのかもな。
こうして、人間の小僧に昔話を聞かせることができた。」
「ふふっ、そうだね。」
そんな話をしているうちに、麓の街が目の前に広がってきた。ベルベスト山を越え、コロラド連邦領が近づいてきたのだ。
「ボス、もうすぐですよ!」
「うん!」
さらに少しの時間走ると、ランダロス達は足を止める。
「ついたのか?」
「コロラド連邦領はもう少し先だが。我らはこれ以上先には進めぬ。ここからは歩いていくといい。」
「ありがとう本当に助かったよ。ランダロス。」
カルマはランダロスにお礼を言う。
ハウロスとカミルもベルベストタイガーの体を撫でており、ベルベストタイガーもハウロスとカミルに甘えるように顔を擦り付けている。
「ははは、ありがとうな。お前達。」
「こちらこそ礼を言う。気をつけて進むが良い。
カルマ、ハウロス、カミル。短い時間だったが、良い時間だった。」
「ランダロス!近くに寄ったらまた立ち寄るよ」
「ああ、その時は聞かせてくれ、お前達の旅の話を」
ランダロスは3人を見て、にっこりと笑った。
「またな〜!」
「また会おう。小さい戦士達よ。」
3人は山へと戻るランダロス達を見送った。
「アリア...言葉を交わすというのはいいものだな。君とももう少し話がしたかったよ」
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「じゃあ、行きましょうか。」
「うん!」
3人は山越えは困難とされるベルベスト山脈をベルベストタイガーのおかげで1ヶ月をかからず越えて、目の前に広がるコロラド連邦領、ルードミリシオンに向けて歩き出した。
カルマは生まれ育ったカストリアを旅立ち、ラダの森でゲド族の少女カミルに出会い、ミルズ王国ではバランという少年のために、悪き王を打ち倒し、彼の母親を救った。
そして、ようやく目的地であるルードミリシオンに辿り着こうとしている。
だが、カルマの戦士としての物語はまだこれからだ。スタートラインに立ったに過ぎないのだ。
カルマはこのルードミリシオンにて戦士として生活して行くこととなる。




