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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編
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窓辺の母

 カルマはハウロスに現状を手短に説明する。


「分かりました。なら、ボスはバランを連れて四階へ向かってください。」


「王国軍が迫ってるんだぞ?」


「ええ。足止めくらいなら、なんとかしてみせますよ。」


「でも……」


 カルマが迷いを見せると、ダースが口を開いた。


「心配すんな。ミルズ三傑のガーディスが相手してるんだ。兵士どもがそう簡単に上まで来られるわけねぇ。

 来たとしても、俺はまだ動ける。ローグベルトも、そっちの兄ちゃんも……ボロボロだが立てるだろ?」


「そっちのボスも、ずいぶん人使いが荒いな。」


「がはは、違いねぇ!」


 カルマは小さく息を吐き、バランの元へ歩み寄る。


 そして、その手を握った。


「分かった。俺は四階へ向かう。危なくなったら上がってきて。」


「はい!」

「おう。」


「行こう、バラン。」


「うん!」


 カルマはバランを連れ、四階へと駆け上がる。


___


 四階。


 すでに人の気配はない。


 ここは実権を持つ高位王族の居住区。緊急避難路も設けられている。


 王も――おそらく、もう。


「お母さん、もういないんじゃ……」


「そんなことない!母さんは、きっと残ってる!」


 カルマは不安を抱きながらも、バランの言葉を信じて進む。


 扉を一つずつ開けていく。


 だが、どの部屋も空。


「……突き当たりが最後か。」


 二人は最後の扉の前に立つ。


 ゆっくりと、開く。


「……!」


 窓辺に立つ、一人の女性。


 外を見つめたまま、振り返らない。


「……母さん?」


 バランの声が震える。


「帰りなさい……」


 女は静かに返答する。


「やっぱり……母さんなんだね。」


 バランは声だけで分かった。それは彼の母レミノアの声。


 バランが一歩、踏み出す。


「来ないで!」


 レミノアはバランを鋭く拒絶する。


 バランの足が止まる。


「どうして……?」


「勘違いしているようだけど……

 私は、自分の意思でここにいるの。」


「……」


「この場所を離れるつもりはない。

 ここが、私のいるべき場所だから。」


「そんな……」


「帰って。ここはあなたたちが来る場所じゃない。」


 声は冷たい。昔の優しさは、欠片も感じられない。


 バランは俯いた。本気だ。

そう思ってしまうほどに、拒絶は強かった。



 沈黙。


 その中で、カルマが静かに口を開く。


「ドルドスに支配されているんですか?」


「私は陛下に支配などされていない。」


「……そうですか。」


 カルマの声は淡々としている。


「安心してください。あなたが恐れている未来は来ません。」


「……?」


「ドルドスは、このあと失脚する。」


 レミノアの肩が、わずかに揺れた。


「だから私は……支配など……」


「では、なぜ――」


 カルマは一歩、前へ出る。


「涙を流しているんですか。」


「え……?」


 バランの視線が足元へ落ちる。


 床に落ちる、透明な雫。


 レミノアの頬から、静かに伝い続けていた。


「母さん……」


 レミノアは、ようやく振り向く。


 その顔には――


 必死に押し殺していた感情が、溢れていた。


「……来ては、いけなかったのに……」


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