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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編
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グロウスの過去

「やった……か?」


「ふぅ……。」


 二人は同時に力が抜け、その場に座り込む。


 血が床に滴る音だけが響いていた。


「さすがはミルズ三傑……二人がかりでようやくだ。」


「ああ、本当だ……あ、!!」


 ハウロスの視線が凍りつく。


 クレーターの中心。


 崩れ落ちていたはずのグロウスが、ゆらりと上体を起こしていた。


 体は血に染まり、片足はまともに動いていない。


 それでも。


 矛を支えに、立とうとしている。


「ゴードン様と語った……強い国にする為に……」


「……?」


 声はかすれ、今にも途切れそうだった。


 だがその目だけは、死んでいない。


 その瞳に宿るのは憎悪ではなく――誓い。


 彼の体はとうに限界を超えている。


 それでも立ち上がろうとする。


 それは、今は亡き恩人と見た夢のため。


 ただ、それだけのために。


 視界が、遠い昔へと滲む。


 


*******

回想(グロウス視点)


 このミルズ王国はかつて、大国カイルディアとコロラド連邦に挟まれた緩衝地帯だった。


 戦は日常。


 炎は風景。


 敵兵の足音と泣き声が、街の音だった。


 グロウスも、その中の一人。


 名もなき戦争孤児。


 食べ物を求め、瓦礫の隙間を漁る日々。


 ある日、豪奢な馬車が街を進んでいた。


 衛兵に囲まれた、明らかに重鎮の移動。


 グロウスは躊躇なく飛び出した。


「なんだ貴様!」


 槍が向けられる。


「兵士でも、なんでもいい。僕に仕事をください……」


「何を言っている、このガキ――」


「待て。」


 低く、よく通る声。


 馬車の扉が開く。


 現れたのは、この国の王――ゴードンだった。


「仕事が欲しいのか?」


 グロウスは、ただ頷く。


 王はしばし彼を見つめ、静かに言った。


「ならば、一緒に来なさい。」


「なっ!?ゴードン様?」


「いい。出しなさい。」


 それが、すべての始まりだった。


 


 グロウスは兵士として育てられた。


 血を流し、骨を折り、何度も死にかけながら強くなった。


 やがてミルズ随一の矛の使い手と呼ばれるまでに。


 


 ある夜。


 ゴードンは城のバルコニーで語った。


「この国は、戦争が多すぎる。」


 夜風に乗る、重い声。


「侵略され、防ぎ、また奪われる。その度に兵は疲弊し、君のような孤児が生まれる。」


 拳を握る王の背中。


「私はね、グロウス。他国がこの国を攻めることを諦めるほど、強くなりたいのだよ。」


 振り返る。


 その目は、王ではなく、一人の人間の目だった。


「そうすれば、国民が傷つくこともない。君のような子も、もう生まれない。」


 その言葉は、少年の胸を撃ち抜いた。


「ゴードン様。僕は、陛下と共にこの国を強くするために命をかけます。」


「はっはっは。心強いな、グロウス。」


 


 その後、彼は噂を聞く。


 元天級の戦士が、故郷ミルズに戻っていると。


 会いに行った。


 それが、ガーディスとラミだった。


 ゴードンと引き合わせ、三人は誓いを交わす。


 ――ミルズ三傑。


 


 守れる国へ。


 攻められぬ国へ。


 


 そして、ミルズは強くなった。


 攻められても、守れる国へと。


 とりわけ元天級の戦士ガーディスは圧倒的だった。


 グロウスは自ら筆頭剣士の座を譲る。


 それでいい。


 国が強くなるのなら。


 


 やがて他国は、ミルズを攻めることを躊躇うようになった。


 


 夢は、確かに形になっていた。


*****

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