最強の盾
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ハウロスは膝から崩れ落ちる。
「はは、あっけなかったね〜」
「勝ったと思った瞬間に隙が生まれる……」
「……?」
廊下に散らばった魔鋼の欠片が、かすかに震えた。
次の瞬間。
無数の刃が地面から跳ね上がり、グロウスの体を内側から貫く。
「……がっ!?」
血が飛び散る。
「へっ……これで、おあいこだ……」
ハウロスは荒く息をつく。
「触れていなくても変形ができたのか……?」
「どうした?余裕な口調が消えてるぜ。
魔鋼は魔力が届く範囲なら直接触れなくても操れる。俺は生まれつき魔力制御が得意でな……三メートル圏内なら自在だ。」
「……なるほど。面白い。」
怒りはある。だが、目は冷えている。
グロウスは体に刺さった魔鋼を一本ずつ抜き捨てる。
「だが、甘い。」
踏み込み。
殺気が一段階、重くなる。
ハウロスは肩を押さえながら立ち上がり、周囲に魔力を巡らせる。
複数の魔鋼が宙に浮かび、槍のように伸びる。
「うぉおお!」
突撃。
だが――
グロウスの矛が唸る。
一閃。
二閃。
三閃。
空間ごと薙ぐような軌道で、すべてが断たれる。
魔鋼は粉塵となって崩れ落ちた。
(やっぱり正面突破じゃ無理か……!)
気づけば目前。
矛が振り上がる。
(ここまでか……)
「おらぁぁ!」
突如、横から爆風のような衝撃。
巨大な盾を構えた男が、グロウスに体当たりをかます。
「なんだ!?」
「あんたは……確か」
「がはは!俺はエクスプロドのローグベルト!
団長命令で助けに来てやったぞ!」
「おい前見ろ前!」
ハウロスの叫びと同時に、グロウスが矛を振り下ろす。
ローグベルトは咄嗟に盾を構える。
「ま、待て!そいつの矛は――」
ガギィィィン!!!
凄まじい金属音。
だが。
盾は、斬れない。
「……なぜだ?」
グロウスの眉が初めて動く。
「ん?何を驚いてる。」
「そいつの矛は何でも切断する応徳剣術だ!その盾は何なんだよ!」
「ふっふっふ。」
ローグベルトが胸を張る。
「これはなぁ――
約五十年前、“最強のタンク”と呼ばれた戦士デグルの盾だ。」
(デグル……フリーの天級戦士。あらゆる任務に呼ばれた防御特化の英雄……)
「最強の盾、か。」
グロウスが小さく呟く。
「がはは!フレアローズが緋衣の十魔を倒せたのも、あの人がいたからだ!」
(うるせぇなこのおっさん……)
だが。
ハウロスは立ち上がる。
血で濡れた肩を押さえ、剣を再構築する。
(盾で受け、俺が刺す)
視線が合う。
ローグベルトがにやりと笑う。
「行くぞ、若造。」
「ああ。」
最強の矛と最強の盾。
そして魔鋼の変幻。
廊下に再び火花が散る。




