不思議な夢
家に帰った瞬間、カルマの傷だらけの姿を見て、父と母が駆け寄った。
「カルマ!どうした、何があったんだ!」
「……ごめん父さん、左目……見せちゃったんだ」
「なに!?目を……それで、どうなった!」
カルマは途切れ途切れに話した。
街の人々に囲まれ、石を投げられたこと。
そして、アリディアという魔術士に助けられたこと。
その魔術士の力によって、街の人の記憶からカルマの目についての記憶を消してもらった。という話は信じてもらえないかと思ったが、父も母も不思議と疑問を口にしなかった。
話し終えた瞬間、母ティニエがカルマを強く抱き寄せる。
「ごめんね……カルマ、怖かったね……」
父バトロフも、静かに肩へ手を置いた。
「なんで、母さんが謝るんだ……」
「ごめんね……ごめんね……」
カルマは怒られると思っていた。
父の言いつけを破ったのは自分だ。
人を助けるためだったとしても、その結果がこれだ。
なのに。
二人は叱るどころか、まるで自分たちが悪いかのように謝り続けた。
胸の奥が、妙にざわつく。
もどかしい。
なのに——
どうしてだろう。
この感覚が、どこか懐かしく思えた。
⸻
数日後。
カルマは恐る恐る街へ出た。
だが驚いたことに、街の人々は何事もなかったかのように接してくる。
本当に——覚えていない。
「おう、坊主!元気無いじゃねえか」
魚屋の店主が、いつも通りの顔で笑う。
「……」
カルマは呆れたように見つめた。
「おい、なんだよその顔」
「覚えてないなら、いいよ」
「はぁ?何の話だ、おい、坊主——」
カルマは何も言わず、その場を離れた。
⸻
それからしばらく、平和な日々が続いた。
魔術の訓練をし、
イリーナに教え、
ノーリエの元へ通う。
何も変わらない日常。
ただ——一つだけ、奇妙なことがあった。
最近、同じ夢を見る。
見知らぬ家の中。
女の人が、優しく笑っている。
自分は何か文句を言い、家を飛び出す。
そこで、いつも目が覚める。
内容は曖昧なのに、妙に現実味があった。
そして目覚めた後、胸の奥に残る感情。
悲しさ。
後悔。
まるで——取り返しのつかないことをしたような。
何度も続くその夢に、カルマは考え始める。
これは予知夢なのか。
それとも——
誰かの、記憶なのか。
そんな馬鹿げたことまで、思うようになっていた。
〈頭の中の整理用 メモ〉
バトロフ= カルマの父
ティリエ= カルマの母
イリーナ= カルマが救った少女
ノーリエ= カルマが懐いている魔術士




