75.弓と杖
カミルはミルズ三傑のラミと向かい合う。
既にカミルの体は傷だらけで満身創痍である。
(この子…人並外れた反応速度で一向に捕まえられない。)
だが、カミルもラミを相手に攻撃を与えられずにいた。
「くそ……うつ手がないな。」
その時だった。ラミに向かって大きな炎の球が向かう。
「火炎爆発」
ラミは増殖した刀で炎の玉を打ち消す。
クレディアが空に浮き、ラミに向かって杖を構えている。
「何者……?」
「あなたがあのカルマって子の仲間ね。加勢するわ。」
「君は確か…カルマにやられて伸びていた…」
「うるさいわね!あの時はちょっと油断しただけよ。」
「だが、どういうことだ?話を聞く限り、君達は王国側のはずだが…」
「団長の命令だから仕方ないでしょう?」
「お互い困ったボスを持ったと言う事だな。」
カミルはクレディアと共にラミに向かって構える。
「何人集まろうと、私には勝てないわよ。」
ラミは刀を増殖させながらカミルとクレディアに襲いかかる。
「なんなのよ、これ!
氷の大壁」
クレディアは大きな氷の盾を出し、ラミの攻撃を防ぐ。
カミルはその隙をついて、ラミの近くまで刀を掻い潜り近づいていた。
「手数が分散したおかげで楽になったな。」
「くっ……」
カミルは至近距離で2本の矢を放つ。
カミルの弓を引く、素早い動作よりも早く、ラミは自身の刀の刀身を伸ばし、自分の体をぐるぐると巻いていきラミを完全に覆う。
カミルの矢はすっぽりと覆われた刀身にはじかれる。
「そんなこともできるのか……」
「離れな!」
クレディアは上空から防御体制のラミに向かって杖を構えている。
「熱風」
クレディアはラミに向かって灼熱の熱風を放つ。
「くそっ!」
ラミは刀を元の形に戻し、熱風の中から堪らず飛び出す。
そこを予想していたカミルが双刃弓を回転させながら攻撃する。
ラミとカミルの接近戦での剣の撃ち合いが繰り広げられる。
「大地の突棘」
ラミがバックステップで一歩距離を置いたところを狙い、クレディアの土魔術が地面から突き出し、ラミの体を傷つける。
「ぐ……」
(相性の悪い魔術士の方から倒さなければ……)
ラミは度々クレディアを狙い、攻撃を行おうとするが、カミルの素早い近接攻撃が、それを阻んだ。
徐々にクレディアの魔術とカミルの攻撃がラミを追い詰める。
「あなた達侵略者に私は屈しない!」
「私たちは侵略者などではない!君は感じないのかこの国の"違和感"に、私たちはそれを正しに来たのだ!」
「……!」
ラミはカミルの言葉にハッとした。
この国の違和感…ラミは過去にガーディスと話した内容を思い出した。




