ミルズ王国の真実
ダースはカルマの耳打ちを受けると、大地を操り、大量の鋭利な土の弾丸を生み出す。それらは一斉にガーディスへと放たれた。
「あくまで長距離戦に持ち込むか……
だが、そんなものはこの私には通用しない。」
ガーディスは迫り来る弾丸を斬り落としながら、一直線に前進してくる。
「これならどうだ!」
ダースはさらに大量の土を集め、濁流のように解き放つ。
ガーディスは地面を蹴ると、一点突破で濁流を貫き、一気にダースの目前まで距離を詰める。
「……!?」
だがその瞬間、ガーディスは気づく。自身の半身が凍りついていることに。
ダースの背後――腰に納めた剣を握るカルマが、強烈な冷気を放っていた。
「魔剣術 氷 構ノ型 霜天の構」
空気が凍り、地面が白く染まる。
ガーディスだけでなく、ダースの半身までもが氷に包まれていた。
「味方も巻き添えにか……」
足が凍りつき、動きが鈍る。
ガーディスは瞬間移動のため、自らの剣の位置を確認する。
「そうくるよなぁ」
振り返る。しかし――剣がない。
ダースが土を操り、残された二本の剣を地中へと埋めていた。
(ここにきて連携を……)
カルマが一気に距離を詰める。
「魔剣術 氷 抜ノ型 氷花一閃」
抜刀と同時に、氷の花がガーディスの身体に咲き誇る。
動きが止まり、氷が四肢を拘束する。
「……!?」
次の瞬間、カルマの刃がガーディスの腹部を捉えた。
衝撃とともに、ガーディスは後方へと倒れ込む。
「よし!いいぞ!」
「いや、待って……」
「……?」
「手応えが……浅い。」
嫌な予感が胸をよぎる。
ガーディスはゆっくりと立ち上がった。
服は裂け、腹部に横一線の傷はある。しかし――浅い。
「直撃の瞬間に魔力を集中させたのか?」
「なるほど。確かにお前達は強い戦士になる資質はあるようだ。
私がここまで手こずるとはな……」
冷たい視線が二人を射抜く。
「だが、運が悪かったな。お前達はここで倒れる。」
「まずい!」
カルマはダースへ向かう。
ダースも冷気の影響で動きが鈍っている。
「遅い……」
氷を砕き、ガーディスが先にダースの前へ現れる。
「……っくそ!」
土を操ろうとした瞬間、太刀が振り抜かれる。
「ぐが……!」
ダースが膝をつく。
間髪入れず、ガーディスは剣をカルマへ投げつける。
刃は頬をかすめ、背後へと突き刺さる。
「……!!」
その一瞬の隙。
ガーディスはカルマの背後へ瞬間移動していた。
背中に鋭い衝撃。
「がはっ……!」
カルマも地に崩れ落ちる。
「二人とも致命傷は与えていない。
だが、もう立てまい。このまま拘束させてもらう。」
沈黙が落ちる。
……
「ふざけんなよ……」
「……!?」
剣を地面に突き立て、カルマが立ち上がる。
「なぜまだ立つ……」
「お前みたいな剣士が……なんであんな王についてんだよ。」
ガーディスの目が細まる。
「私は先王ゴードン様の忠実なる剣士。
そして、我が王がドルドス様を次の王へと選ばれた。
ならば、私はその御方に忠誠を尽くすのみ……」
「それは違う。」
「なに!?」
「先王ゴードンは、ドルドスを選んでなんかいない!」
「何を言う。ゴードン様が遺された魔導符を、私もこの目で見た。」
「ガーディス。ユバルバという闇商人の男を知っているか?」
「ユバルバ……?(どこかで聞いた名だ……)」
「元は先王時代の王宮魔術士。ドルドス付きだった老魔術師だ。」
「あの老魔術師か……」
「そうだ。そして奴は“応徳魔術”を持っていた。」
「応徳魔術だと? このミルズは魔術教育に力を入れていない。
そんな魔術を持つ者など聞いたことがない。」
「それも当然だ。戦闘では何の役にも立たない魔術だったからな。」
「何だ。その魔術とは。」
カルマは息を整えながら言う。
「――“魔力模倣”。」
「……!!」
「他人の魔力の特徴を模倣し、同形質の魔力に変えることができる。」
「そんなものに何の意味がある。」
「普通はな。
だが……ドルドスは違った。」
カルマの視線が鋭くなる。
「ユバルバは、ドルドスの指示で“魔導符”を作らされた。」
「まさか……」
ガーディスの眉間に深い皺が刻まれる。




