69.筆頭剣士ガーディス
「たしかに……君はとんでもない剣士だな。」
「……!?(まだ生きている?)」
カミルは傷だらけの体をゆっくりと起こす。
「なぜ、立ち上がれるのよ!」
「これまで…私は1人だった。唯一の家族もどこにいるのかわからない。
わけもわからず…暴れて、牢に入れられた。」
「何を…」
「私がここで倒れれば、君は、ようやくできた私の仲間の元へ行くだろう。それだけは……させないよ。」
カミルは双刃弓を構える。
(この子、あの数の攻撃を受けながら、致命傷は避けていた。異常なまでの体の柔らかさと、感覚…)
「でも、何度やろうと同じよ!」
ラミは再び刀を増殖させカミルに襲いかかる。
場面は変わり、カルマはミルズ三傑筆頭剣士ガーディスと向かい合い剣を構える。
ガーディスも背中に差した3本の剣のうち1本を構えている。
「広範囲凍結」
カルマはガーディスに向かって飛び出すのと同時に、中級魔術でガーディスの足元を太ももの辺りまで凍漬けにし、動きを止める。
「魔術剣士か……」
下半身が固定され身動きが取れないガーディスに向けて、カルマが魔剣フレイアを振り上げ迫る。
「悪く思うなよ。早めに終わらせないとあんたが相当にヤバい相手ということくらいわかってるからね。」
カルマは炎の連撃をガーディスに浴びせる。ガーディスは剣でその攻撃を防いでいくが、
カルマが大きく剣を振り抜くと、ガーディスの剣はガーディスの手から離れ、近くの地面に突き刺さる。
「もらった!」
無防備なガーディスに向けてカルマが剣を振りおろす。
「……??」
が、なぜかそこにいたはずのガーディスの姿が消え、カルマの剣は空を切る。
次の瞬間、カルマの背後から地面に突き刺さった剣を持ち、カルマに向かって振りかぶるガーディスが現れる。
「なに!?」
ガーディスは剣を大ぶりに薙ぎ払う。
カルマは炎の剣で受け止めるが、その剣はとてつもない威力で、カルマは後方に吹き飛ばされ、木に激突する。
(今のはおかしい。不自然だ。)
ガーディスが消えたとき、ガーディスの足を覆っていた氷は割れることなく、形を保持したままその場に残っていた。まるで瞬間移動したかのように
カルマは立ち上がり剣を構える。
その瞬間、ガーディスは剣の1本をカルマに向かって勢いよく投げつける。
「!!」
カルマはその剣をはじく。はじかれたその剣はクルクルと回転しながら宙を舞う。
その瞬間だった。目の前にいたはずのガーディスの姿は消え、カルマのすぐ上ではじかれた剣を掴んでいる。
「なっ……」
ガーディスは掴んだ剣でカルマの肩を切り裂く。
「がはっ…」
カルマは肩から血を吹き出し、その場に膝をつく。
「ミルズ王宮の侵入した罪軽くはないぞ。」
「まさか……剣から剣への瞬間移動か?」
「ふっ、察しがいいな。そうだ。私の応徳剣術は"武具転移"。
3本の剣のある場所に移動できる。」
ガーディスは3本の剣を地面に刺し、移動してみせる。
「さすがに……とんでもないな。けど……」
カルマは肩を抑えながら立ち上がる。
「……?まだやるのか?」
「あたりまえだ…お前を倒してバランをお母さんの元へ連れていくんだ。」
「なぜそこまでする?」
「なぜ?それは……
俺が戦士だからだ!」




