ミルズ三傑
カルマは二階へと続く階段の兵を蹴散らしたあと、
火炎爆発で扉を打ち破る。
爆音とともに木片が吹き飛び、炎が廊下を焦がす。
「よし、囮役は十分果たした。俺も上を目指すぞ。」
カルマは向かってくる衛兵を魔剣で薙ぎ払いながら二階を進む。
二階に上がってから、衛兵の数は明らかに減っていた。
やはり一般兵は一階まで――。
だが安心はできない。
軍が動き出せば包囲は時間の問題だ。
「急がないとな……」
廊下の奥に、ひときわ巨大な扉が現れる。
「これは……何の部屋だ?」
カルマはゆっくりと扉に手をかけ、押し開いた。
――瞬間、空気が変わる。
そこに広がっていたのは、室内とは思えぬ光景だった。
草木が生い茂り、鳥が飛び、柔らかな陽光が差し込んでいる。
「……これが、宮内庭園」
天井は高く、陽光は本物の空のように降り注ぐ。
足元には土が敷かれ、風すら感じる錯覚を覚える。
「すごいな……」
「ようやく来たか。」
「!?」
声。
庭園の中央、木陰の先に一人の男が立っていた。
長身。背には三本の長剣。
ただ立っているだけなのに、空間そのものが張り詰めている。
――強い。
理屈ではない。本能が告げていた。
「誰だ!」
「私はミルズ三傑、筆頭剣士ガーディス。」
「……っ!?」
その名を聞いた瞬間、背筋が冷える。
あり得ない。
三傑は今、国外のはず――。
その一瞬で、すべてが繋がった。
嵌められた。
貴賓会の情報。三傑の不在。
すべて、こちらを誘い出すための餌。
(まずい……)
(だとしたら、ハウロスとカミルも――)
カルマは魔剣を握り直す。
ガーディスは静かに一歩踏み出した。
それだけで、庭園の空気が震える。
「侵入者。王に刃を向ける覚悟はできているのだろうな?」
その声に、余裕はない。ただ事実を問うだけの冷静さがあった。
⸻
その頃。
ハウロスとカミルは三階へ続く階段を見つけていた。
「よし、見つけた。」
「順調……すぎる気もするな。」
「ボスの囮が効いてるんだろ。」
だが、カミルの言葉にハウロスはわずかな違和感を覚える。
静かすぎる。
「ふふ……見つけたわ。入り込んだ鼠が二匹と、小鼠が一匹。」
「!?」
背後から、女の声。
振り向いた先に立っていたのは、細長く歪に曲がった刀を持つ女だった。
艶やかな笑み。
だが、その目は獲物を前にした獣のそれ。
「何者だ!」
「それはこっちの台詞よ。」
「ハウロス、こいつ普通の兵じゃない。」
「ああ……」
二人は同時に身構える。
女は肩をすくめる。
「普通の兵士と一緒にしてもらうのは心外ね。」
ゆらりと刀を構える。
「私はミルズ三傑――無限刀のラミ。」
「……!?」
嫌な予感が、確信に変わる。
「なんでこんなところにいる。」
「さあ? なんでかしらね。」
ラミは笑う。
だがその足は、すでに間合いの内。
空気が切り裂かれる音が、先に聞こえた。




