66.侵入
ハウロスとカミルはバランを連れて王宮を囲う塀に沿ってコソコソと歩く。
すると、どこかで爆発音が聞こえる。
「始まったか。」
それはカルマが魔術で正門を打ち破った音だ。
ハウロス達は人気の少ない王宮の裏側に来ていたが、それでも王宮内が混乱状態であることは微かに聞こえる叫び声や衛兵の声でわかった。
「よし、ここらへんかな。」
高さのある塀をハウロスは魔鋼を鉤爪のように使いよじ登る。
「カミル、行けるか?」
「ああ、問題ない。」
カミルはひょいと身軽に塀の上に手をかけると、バランに手を差し出す。
「掴まれ。」
「こんな高さ登れないよ。」
「大丈夫だ。私に任せろ。」
カミルはバランを引き寄せると抱え込み、飛び越えるように塀の反対側へ降りる。
「ここだな。」
塀の裏側には勝手口のような小さな扉がある。
「鍵がかかっているな。」
カミルがドアノブを回すが扉は開かない。
「蹴破るか?」
「いやまて。」
ハウロスは魔鋼を細長く変形させると鍵穴に差し込む。
そして変形させながら形を合わせ鍵を開ける。
「よし、開いたぞ。」
「便利なもんだな。」
中に入ると、そこは炊事場だった。
炊事場には誰もいない。カルマが暴動を起こしたことで既に逃げたのであろう。
炊事場を抜けるとすぐに2階へ続く階段がある。
ハウロス達は階段を登り、2階へ到着する。
ボルドーの話では2階からは王族の居住スペースとなっており、王族と一部の警備兵しかいないらしい。
ハウロス達は細い廊下を進む。一階の炊事場と繋がっているこの場所はおそらく、王族の従者や召使が通る通路のようなものだとハウロスは考えた。
「しっ、隠れろ。」
カミルは人の足音に反応し隠れさせる。この通路の先で兵士の声がする。
「侵入者が2階まできたそうだ!」「急げ!」
足音は遠くなっていく。囮役のカルマもおそらく強引に2階へと上がってきたのだろう。
「ボス、ちょっと早いな…」
ハウロス達は急いで先へと進む。




