黒ローブの魔術士
カルマは腕で顔を覆い、地に伏せる。
痛みより、胸の奥が焼けるようだった。
腕の隙間から見えた。
人々の後ろで、あの少年たちが笑っている。
その瞬間、カルマは初めて思った。
——どうして、こんな目に生まれたんだ。
⸻
音が、消えた。
石の落ちる音も、罵声も。
世界そのものが息を止めたようだった。
カルマが顔を上げる。
いつの間にか、目の前に一人の女が立っていた。
黒いローブ。細い杖。
だが、その姿より先に理解してしまう。
——この人は、違う。
「少し眠れ」
小さな声。
それだけで、空気が従った。
杖が地面に触れた瞬間。
波紋。
見えない何かが広がり、世界が沈む。
人々が糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
⸻
「な……にを……」
「安心せよ。命までは奪っておらん」
女は振り返らない。
20代半ば〜30歳くらいに見える見た目の女は、その見た目に似合わず老人言葉を話す。
カルマはようやく立ち上がる。
「どうして……」
女の足が止まる。
わずかな沈黙。
「……泣いておったからじゃ」
その一言に、言葉が止まる。
⸻
女は倒れた少年たちに近づく。
杖が淡く光る。
だがそれは光というより、現実の綻びのようだった。
何かが“書き換わる”。
そうとしか言えない感覚だけがあった。
「…これでええじゃろう。」
「何をしたの?」
「なに。大したことはしていない。ただ、おぬしの目のこと、彼らが目覚めた時には覚えておらんじゃろうな。」
「なっ...」
女はそれ以上は語ることはなかった。
⸻
「お主が、カルマ・ミラ・ファーランじゃな?」
「なんで僕の名を...」
女が近づく。
視線が、すべてを見透かすようだった。
「わしはアリディア」
名だけが落ちる。
「コロラド連邦、ルードミリシオンを拠点にしておる。何か困ったことがあれば、訪ねよ」
女は歩き出す。
「強くなれ、運命の子よ」
意味は分からない。
だが、その言葉だけが胸に残った。
〈頭の中の整理用 メモ〉
アリディア= カルマを救ってくれた魔術士
普段は"ルードミリシオン"という街に住んでいるという。




