侵入開始
ハウロスとカミルはバランを連れて、王宮を囲う塀に沿って身を低くしながら進む。
そのとき、正門の方角から爆発音が轟いた。
「始まったか。」
カルマが正面から魔術で扉を打ち破った音だ。
王宮の裏側は人影が少ないとはいえ、内部の混乱ははっきりと伝わってくる。叫び声と衛兵たちの怒号が風に乗って響いていた。
「よし……この辺だな。」
ハウロスは魔鋼を鉤爪のように変形させ、塀に引っかけると素早くよじ登る。
「カミル、行けるか?」
「ああ、問題ない。」
カミルは軽々と塀に手をかけると、上からバランへ手を伸ばした。
「掴まれ。」
「こんな高さ、登れないよ……」
「大丈夫だ。任せろ。」
カミルはバランを引き寄せ、そのまま抱え込むと塀を飛び越えるように反対側へ降り立つ。
「ほらな。問題ないだろう?」
「……うん。」
「こっちだ。」
塀の裏側には、小さな勝手口があった。
「鍵がかかってるな。」
カミルがノブを回すが、びくともしない。
「蹴破るか?」
「いや、待て。」
ハウロスは魔鋼を細長く変形させると、鍵穴へ差し込む。内部で形を変えながら構造を探り――小さな音と共に鍵が外れた。
「開いたぞ。」
「便利なもんだな、それ。」
中へ入ると、そこは炊事場だった。既に人の気配はない。カルマの派手な侵入により、使用人たちは逃げ出したのだろう。
炊事場の奥には二階へ続く階段がある。
三人は素早く階段を上る。
二階は王族の居住区。ボルドーの話が正しければ、ここにいるのは王族と一部の警備兵だけのはずだ。
細い廊下を進む。ここはおそらく従者や召使いが使う裏通路だ。
「……隠れろ。」
カミルが足音を察知し、三人は壁際へ身を寄せる。
「侵入者が二階まで来たぞ!」
「急げ!」
兵士たちの足音が廊下の向こうへ駆けていく。
――カルマが強引に突破したか。
「ボス、ちょっと早いな……」
「予定より引きつけ過ぎかもしれない。」
ハウロスは奥を一瞬だけ見やる。
――どうかご無事で。
「急ぐぞ。」
「ああ。」
三人は再び走り出した。




