カルマリスタ始動
作戦決行の前日――
カルマはフードを深く被り、顔を隠して街へ出た。
人通りの少ない路地を抜け、人気のない空き地へ出ると、すでにアマンダが立っていた。
「カルマ殿、どうしたのです?」
呼び出された理由を察しているのか、その表情は硬い。
「明日の作戦なんだけど……」
カルマは周囲を確認してから、声を落とす。
「ひとつ、追加で頼みたいことがある。」
そして――
アマンダに“ある作戦”を伝えた。
彼女の目が、わずかに見開かれる。
「……本気ですか?」
「うん。これが一番、確実だと思う。」
短い沈黙のあと、アマンダは静かに頷いた。
「……承知しました。」
⸻
― 作戦決行当日 ―
カルマは一人、王宮の階段前に立っていた。
空は晴れている。
やけに静かだ。
「よし……」
胸の奥で鼓動が強く打つ。
「派手にいくか。ここから始まる、俺たちの初任務だ。」
階段を駆け上がる。
「あ、こいつ何日か前の!」
「止まれ!」
衛兵が気づき、怒号が飛ぶ。
だがカルマは振り返らない。
(囮は目立ってなんぼだろ)
ハウロスもカミルもいない。
ここにいるのは、自分ひとり。
王宮の大扉が迫る。
待機していた二人の衛兵を一瞬で気絶させ、カルマは右手を扉へ向けた。
魔力を集中させる。
掌が熱を帯びる。
「中級魔術――火炎爆発」
炎の球が生まれる。
回転しながら膨れ上がり、一直線に扉へ。
接触の瞬間――爆発。
轟音とともに大扉が吹き飛び、破片が舞う。
「よし、うまくいった!」
ユバルバの商店で手に入れた魔導書。
あれは当たりだった。
崩れた扉を踏み越え、王宮内へ侵入する。
広いロビー。
豪奢な装飾。
そして――混乱。
「襲撃だー!」
「何者だ!!」
貴族たちが悲鳴をあげ、奥の扉へ逃げていく。
同時に、衛兵が一斉に取り囲む。
剣が抜かれる音。
「カルマリスタの初任務だ。」
カルマは剣を抜く。
刀身に炎を灯す。
「悪いけど、邪魔はさせないよ!」
地面を蹴る。
⸻
***
― 作戦会議(回想) ―
「王宮の入口は東と西の二つか?」
「基本はそうだ。だが実際にはもう一つある。」
「どこ?」
「北側、炊事場の裏だ。勝手口がある。」
「じゃあそこから――」
「普通に行けば見つかる。」
「普通に行けば?」
ハウロスがカルマを見る。
「ああ。だから一人が正面から堂々と侵入する。」
「囮か。」
「なるべくド派手に。」
「じゃあ俺がやるよ。」
「え!? いや、ボスはダメです!」
「なんで? 俺の魔術、派手だろ?」
「危険です!」
「危険なのはどこから入っても同じだよ。」
カルマは穏やかに笑う。
「だったら一番効果的な場所に、俺が行く。」
沈黙。
ハウロスは拳を握り、悔しそうに俯いた。
「……必ず、生きて戻ってきてください。」
「ああ、もちろん。」
⸻
***回想終了***
⸻
ロビーは戦場と化していた。
「止めろー!」
衛兵が一斉に襲いかかる。
カルマは剣を振るい、魔術を放つ。
炎が弧を描き、床を焦がし、衛兵を吹き飛ばす。
数が違う。
だが――
(集まれ、もっと集まれ)
これでいい。
これが役目だ。
カルマは二階へ続く階段を見上げる。
その先、扉の前には複数の衛兵。
「二階には絶対に行かせるな!」
叫び声が響く。
カルマは息を整え、剣を握り直す。
(ハウロス、カミル……今のうちだ)
炎が、さらに強く燃え上がった




