作戦会議
「それで、ミルズ兵の残っている勢力は?」
「残りの勢力については、私の方で説明します。」
アマンダは懐から折り畳まれた紙を取り出し、静かに広げた。そこにはミルズ王国全域の地図が描かれている。
「まず王宮ですが、王族を守るため多くの衛兵が配置されています。ただし、その大半は一階のみ。二階以上は王族と許可された者しか入れない区画です。ですから、一階を突破できれば内部の戦力は大きく減ります。」
「なんだ、意外と簡単そうじゃん。」
カミルが肩をすくめる。
「ええ。ですが問題は“帰り”です。」
「帰り?」
「王宮内の衛兵は最低限。主力は兵舎や街の外に待機している王国軍です。彼らが到着すれば、包囲されるでしょう。」
「時間との勝負か……」
「王国軍はどこに待機しているんだ?」
アマンダは地図の数か所を指し示す。
「大きく三か所です。一つ目は王宮近くの兵舎。距離は近いですが、通常は休息中で武装は解除されています。動員には多少時間がかかるはずです。」
「二つ目は南側の正門付近。ここには常時武装した兵が駐屯しています。ただ、王宮は北端にありますので、到達までには距離があります。」
そしてアマンダは、地図の端――ラダの森との国境付近に付けられた印に触れた。
「三つ目がここ。理由は不明ですが、常に国軍兵が配置されています。王宮からは最も遠い位置にあるため、直接的な脅威は低いと考えられますが……」
「……。」
カルマはその印をしばらく見つめ続ける。
森。
理由不明の駐屯。
(何かを守っているのか……それとも、隠している?)
「どうしたの、カルマ?」
「いや……少し気になっただけ。」
その後も会議は続いた。侵入経路、王宮内部の構造、撤退ルート。
そして五日後――決行することが決まった。
その日はそこで解散となる。
⸻
部屋へ戻ると、カルマたちはバランに作戦の概要を伝えた。
バランは一瞬言葉を失い、それからゆっくりと頷く。
「バラン、大丈夫だ。俺たちに任せろ。」
「ボス、俺たちの初任務ですね。」
「任務?」
「一国家への反乱なんて……俺たちが戦士だからやるんですよね?」
その言葉に、カルマははっとする。
一国家への反乱。
前の人生では、そんな大それたことを考えたこともなかった。
ただ流されて、生きて、迷惑ばかりかけて――。
だからこそ。
今度は違う。
見返りがなくてもいい。
誰かのために、自分の意志で動く。
それが戦士なら。
「……ここからだな。」
「え?」
「ここから始める。俺の人生。」
小さく息を吐く。
「人生、リスタートだ。」
「リスタ……ってどういう意味ですか?」
「あー……再始動とか、もう一回始めるってこと。」
「いいですね、それ!」
「え?」
「戦士団の名前ですよ!」
「それがどうしたの……?」
「カルマリスタ、なんてどうですか?」
「えぇぇ……俺まだ戦士にも慣れてないんだけど。」
「非公認でいいじゃないですか。それに、団長の名前を入れるのはよくある話です。」
「カルマリスタ。悪くないと思うぞ、カルマ。」
「んー……まあ、名前で何かが変わるわけじゃないけど……」
「じゃあ決まりですね!カルマリスタの初任務、必ず成功させましょう!」
ハウロスは拳を握りしめる。
小さな戦士団。
けれど、確かに動き始めた。
⸻
それから数日間、各自は準備に時間を使った。
カルマとハウロスは王宮周辺の偵察と魔術の調整。
侵入経路の再確認、魔力消費の試算。
カミルは街を歩き回り、時折火の魔獣を召喚して散歩させていた。
その魔獣には「メラ」という名が付けられた。
どうやらすっかり気に入ったらしい。
少なくとも、しばらくは魔力暴走の心配はなさそうだった。




