元兵士ボルドー
ハウロスは宿へ着くと、神妙な面持ちで口を開いた。
「以前この国に来た時、ボルドーという男と知り合いました。元ミルズ国軍兵です」
「元兵士?」
「はい。軍を辞めた理由が、現王ドルドスとの軋轢だったと聞きました。もしかすれば協力を得られるのではと思い、先ほど会いに行ったのです」
「それで?」
「……全面協力する、と。ただし仲間を連れて明日もう一度来い、と」
部屋に沈黙が落ちる。
「信用できるのか?」カミルが問う。
「正直、わからない。一度会ったきりだし。」
....
「すみませんボス。話を持ってきておいて……」
「いや、十分だよ」
カルマは即答する。
「情報があるだけでもありがたい。行こう、その男のところへ」
「大丈夫か?」
「うん。会って、話を聞いて、それから判断すればいい」
「……なるほどな」
「では、明日案内します」
⸻
次の日、カルマ達はハウロスの案内でボルドーの元へ向かった。
その中にはアマンダの姿もある。王宮内部の事情を知る者として、カルマが同席を求めたのだ
辿り着いたのは、札に“close”と掛けられた酒屋だった。
中へ入ると、無精髭を生やした大柄な中年男が一人、酒をあおっている。
「連れてきたぞ、ボルドー」
「あぁ……お前らか。よく来たな」
低く太い声。
「話は聞いている。知っていることを教えてくれ」
「まぁ座れ」
ボルドーは酒瓶を置き、腕を組む。
「お前達のような者が現れるとは思っていた。俺もドルドスとは馬が合わず、公職を辞した身だ」
「それなのに、二年も反乱が起きていない理由は?」
カルマの問いに、ボルドーは口端を上げた。
「わかるか?」
「三傑……ですか?」
アマンダが答える。
「ほう。あんた、王宮関係者か?」
「元第一王子グラリス様の秘書官です」
「はっ……そりゃあ厄介な立場だ」
ボルドーは続ける。
「ミルズは軍事大国じゃない。兵の数も多くはない。だが――戦争でも内乱でも、負けたことがない」
「理由は?」
「ミルズ三傑だ」
空気が変わる。
「筆頭剣士ガーディス。無限刀のラミ。矛使いグロウス。三名とも戦士ではないが、実力は戦士で言うところの天級相当」
「天級……」
「特にガーディスは実際に元天級の剣士。その中でも上位に並ぶと言われている」
天級の中でも上位。
それはこの世界でも頂点に近い存在だ。
名だたる強者たちの名が挙がる。
雷剣士ガルム、天才術士アリディア、剛剣士ダグラス、英雄レイン、氷結魔剣士ルドロス。
「その連中に迫る実力……ってことか」
「そうだ。だから正面からでは誰も動けなかった」
カルマは小さく息を吐く。
「じゃあ、無理なんじゃ……」
「そこでだ」
ボルドーの目が鋭く光る。
「五日後、隣国バルディッシュで年に一度の貴賓会が開かれる。東側諸国の大貴族が集う場だ」
「……」
「例年、三傑は護衛として派遣されるため、王都を離れる」
沈黙。
「五日後……」
「その情報は確実か?」
「信じるかはお前ら次第だ。だが事実だ。元秘書官殿、例年の派遣は?」
「……事実です。毎年、護衛のため三傑は国を出ます」
「そういうことだ」




