カミルと火の魔獣
……。
カミルは顎を触りながら考え込んでいたが、どうやら決めたらしい。
「わかった。私はこれにする。」
「え!?」
カミルが拾い上げたのは召喚術の魔導書だった。
「なんで……」
「私は戦闘中に魔術を扱うなど、器用なことはできないからな。召喚獣なら召喚さえすれば意思を持って動いてくれるだろう?」
「それはそうかもだけど…」
「それで、契約とはどうするんだ?」
「……。契約の方法は簡単。契約の意思を示した魔獣に対して、この魔法陣を書いた魔導符を貼って、魔力を込めるだけ。」
「これを魔獣の体に貼り付けて魔力を込めればいいんだな。」
カルマはカミルに魔法陣の書かれた魔導符を渡す。
「魔獣は見つけてくればいいのか?」
「まあ、その方法が一つ。俺も召喚術士のことは詳しくないけど、目当ての魔獣に会いに行くことも多いらしいね。あと、もう一つの方法が契約召喚。」
「契約召喚?」
「契約の為に未契約の魔獣を召喚するらしいんだけど、特定の魔獣を呼び出すことはできないから、何が出てくるかわからないリスクがある。」
「それならわざわざ探す必要はないな。今できるか?」
「え!?いまやるの?何が出るかわからないんだよ?」
「いつやったって当たるか外れるかはわからんだろう。」
「まぁ、そうだけど…」
カルマは渋々、地面に大きな紙を広げ、魔導書を見ながら魔法陣を書いていく。
「これで…いいかな。」
「どうやるんだ?」
「カミルはこの魔法陣に両手をつけるだけでいいよ。」
「こうか?」
カミルが魔法陣に手をつけると、カミルの体の魔力が吸われていき、魔法陣が光はじめる。
「勝手に発動するのか。これはいいな。」
魔法陣の光が大きくなり、光の柱が立つ。
……!
魔法陣から煙が上がり、煙の中で何かが動いている。
「キューッ!」
そこには鼠にしては大きく、猫にしては小さい、そんな魔獣が一匹動いていた。
その魔獣は背中に炎を纏っている。
「これは…?」
「魔獣には詳しくないけど、火属性の小獣かな?」
「そうか……」
カミルはそういうと、契約の魔導符を持ち、その小さな魔獣に近づける。
「ちょっ!カミル?契約する気?」
「ああ、そうだ。」
「もう少し戦闘とかに役立ちそうな魔獣がいるかもよ?」
「だが、この魔獣は敵意がないし、契約にはうってつけだろう?」
「まあ、契約はできそうだけど…」
「いいさ。とりあえずは魔力を消費することが目的だからな。また、必要になったら他も契約すればいいさ。」
「カミルがいいんなら……」
「助かったよ。ありがとう。」
カミルはそういうと魔導符をその魔獣に貼り付け。手を添える。
すると、カミルの魔力が魔導符に吸われていき、魔獣に召喚の魔法陣が刻まれる。
「これで……いいみたいだな。」
「キュー!」
魔獣も心なしか喜んでいるように見える。
「よろしくな。」
カミルは魔獣を撫でながら、微笑みかける。
「ボス!」
カミルの召喚魔術の習得が終わった頃、ハウロスがカルマを探して戻ってくる。
「どうしたの?」
「ちょっと動きがありまして、少しいいですか?」
「うん、いいけど?」
カルマとカミルはハウロスに呼ばれるまま、宿に一度戻る。




